太陽光発電、屋根の上のソーラーパネル

2023年6月1日から、大手電力10社のうち、北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、中国電力、四国電力、沖縄電力の7社が大幅値上げに踏み切りました。

どんどん値上がりする電気料金は生活者にとって大きな問題です。
電気代のさらなる高騰に備え、太陽光発電について詳しく知り、環境とお財布に優しい電気の選択を検討しましょう。

太陽光発電にはどんなメリット、デメリットがあるの?
パネルの寿命、 気になる電気料金、 設置費用など、太陽光のあれこれを徹底解説します。

▼この記事を読むとわかること

>6月からさらなる値上げ 上がり続ける電気料金
>太陽光発電のメリット3つ
>太陽光の経済的メリット
>太陽光発電に切り替えた場合、費用はいくらかかるの?
>エコキュートでさらにお得に
>太陽光とEVは相性最高! 燃費7倍が現実に
>太陽光発電のデメリットは? 不安と疑問を解消
>東京都に続き、川崎市で太陽光パネル設置義務化!
>家計と環境に優しい太陽光発電

6月からさらなる値上げ 上がり続ける電気料金

ここ数年の間上昇傾向にあった電気料金。2023年も引き続き、電気代の値上がりが続いています。

値上がりの原因は石油や石炭、天然ガスなど化石燃料の価格上昇や、円安、ロシア軍によるウクライナ侵攻などですが、特に日本のエネルギー自給率はわずか11.8%で、エネルギー資源のほとんどを輸入に頼っているため*、国際的な社会情勢に大きく左右されてしまうのです。

東京電力「規制料金値上げ申請等について」折れ線グラフ
東京電力の場合 東京電力プレスリリース
規制料金値上げ申請等について」より

2023年6月からの大手7社の値上げ幅は、北海道電力が20.1%UP、東北電力が21.9%UP、
東京電力が15.3%UP、北陸電力が39.7%UP、中国電力が26.1%UP、四国電力が23%UP、沖縄電力が36.6%UPと非常に大きいものです*

食料品の値上げも続く中、電気料金の大幅値上げは生活者にとって大きな問題。
多くの市民が頭を悩ませる今、注目を浴びているのが、太陽光発電です。

太陽光発電のメリット3つ

⼾建て住宅における太陽光パネルを取り付けた場合の大きなメリットは主に以下の3つです。

1 災害時の防災
2 省エネと脱炭素化への貢献
3 家計がうるおう

1「災害時の防災」は、地震や台風などの災害時に、ライフラインがストップすることで、被災者は生活に大きなダメージを受けてしまいますが、その際に太陽光発電の電気が使えることで非常時の被害を少なくできるということ。

2「省エネ、脱炭素化への貢献」は、CO2を多く出す石炭火力や石油火力発電からの電気ではなく、太陽光発電の電気を使うことで、温室効果ガスの削減を家庭から実現できるということ。

どちらも太陽光の大きなメリットです。
ここからは、3「家計がうるおう」=太陽光の経済的なメリットについて詳しくみていきましょう。

太陽光の経済的メリット

(2023年2月15日 ゼロエミッションを実現する会ウェビナーより、⼀般社団法⼈ZEH推進協議会理事⼩⼭貴史さんのお話をまとめています。)

太陽光発電は、太陽の光を利用して電気を作る発電方法です。

一般の家庭では電気の消費量は朝方と夕方に多くなる場合が多いですが、、太陽光パネルを設置した家では、太陽が出ている日中に発電が行われます。

太陽光の利益グラフ
ゼロエミッションを実現する会ウェビナー ⼩⼭貴史さんの資料より
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※建築プラン、搭載容量、建築地域、家族構成、生活スタイルなどの諸条件により異なります。

上の図のように、太陽光で電気がつくられている間は、その電気を使うことができ、さらにあまった電力は売ることができます。

つまり、自家消費で浮いた電気代と、売電によって入る利益をあわせたものが太陽光のメリットということです。

太陽光の経済的メリット

例えば、都心部で標準的な大きさの太陽光発電の設備3キロワット分を設置した場合、10年間でおよそ90万円分、20年間でおよそ160万円、30年間でおよそ220万円分の経済的利益を得ることができます

そして、こうした経済的利益は電気代が高騰すれば、さらに大きくなるといえます。

※以下の「太陽光の経済的利益とかかる費用」図表を参照。

太陽光発電に切り替えた場合、費用はいくらかかるの?

太陽光発電への切り替えで、やはり気になるのは必要になる費用。経済的利益よりも費用が大きくなってしまうのではないかと不安に思う人も多いと思います。

具体的に太陽光にかかる費用はいくらくらいなのでしょうか。

<太陽光発電に切り替えた場合にかかる費用>

太陽光パネル購入費
約90~100万円

パワーコンディショナー(直流電力を交流電力に変換する機器)の交換費用(15~20年目)
約20万円

メンテナンス費用(4年毎の点検が推奨される) 
0~3万円/回

※都心部で太陽光発電の設備3キロワット分(=約30平方メートル、約18畳分のパネル)を設置した場合の試算。各地域によって価格帯は変わります。
※パワーコンディショナーの交換は、保証期間を15年前後に設定する施工会社が多く、その場合は15年未満に故障等で交換した場合は実質0円となります。
※太陽光パネル設置住宅の個人の9割は自己点検で対応していて、前年同月費の比較で発電量をチェックすることで、点検に置き換えることができます。2〜3割を超えて発電量が減少している場合は設置会社に相談が必要です。

太陽光に必要な支出がわかりました。
続いて、これらの費用と、前述の経済的利益を比べてみましょう。

太陽光の経済的利益とかかる費用 図表
太陽光の経済的利益とかかる費用

※自家消費率は30%と仮定
※11年目以降の売電単価は9.5円/kWhと試算
※2023年2月の東京電力における電気料金等に基づく試算であり、実費を保証するものではありません

最初の10年間は費用が利益を上回ります。しかし、10年後以降から30万円を超える実質利益が発生していることがわかります。

太陽光への切り替えのためにかかる費用は、約10年ほどで採算が取れるということです。

エコキュートでさらにお得に

これまで紹介してきた太陽光発電の経済的なメリット。これは電気の力とあわせて空気中の熱を利用した給湯機「エコキュート*」を使うことでさらに大きくすることができます。

東京電力の事例では、夜間に電気を買う場合価格は1キロワットアワーあたり、約34円。一方、昼間に余った電力を売った場合の価格は1キロワットアワーあたり、約16円です。

売電価格の低い昼の時間帯の電気を売電にまわさず、お湯を沸かすために使うことで、より経済利益を高めることができます。

また、放熱のロスが少なく、使用までの時間がより短い、太陽光発電と相性のいい仕組みになっている「おひさまエコキュート」に特化した電力プランは、家庭でお得に使え、エネルギーの無駄を少なくすることができます。
ぜひ各地のご契約電力会社の「おひさまエコキュート」特別プランをチェックしてみてください。

※1キロワットアワー=1キロワットの電力を1時間消費したときの電力量

太陽光とEVは相性最高! 燃費7倍が現実に

温室効果ガスの排出削減のため、世界的に自動車のEV化が加速しています。

太陽光の電気でEV自動車を充電することで、家計へのメリットをより大きくすることができ、温室効果ガスの排出削減にも大きく貢献することができます。
太陽光とEV車の組み合わせは非常に相性がよく、家計と環境面のメリットをどちらもぐっと引き上げてくれるのです。

具体的な試算をしてみると、太陽光で発電した昼間の余剰電力をEV車充電にまわした場合、ガソリン車を使った場合と比べ、走行にかかる費用を7分の1にまで抑えることができます。

太陽光を使っている場合のガソリン車とEV車の燃費の違い
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太陽光とあわせてEV車に切り替えることで、ガソリン車よりも燃費が7倍よくなるということです。

家計に優しいだけでなく、走行時にCO2を排出しないEV車を、発電時にCO2を排出しない電力で利用することで、より一層の脱炭素化を各家庭から実現することができます。

太陽光発電のデメリットは? 不安と疑問を解消

ここまで、太陽光に変えた場合にどれくらいお得になるかを紹介しました。

ここからは心配なデメリットについて、Q&Aで詳しく紹介していきます。
「お金と撤去」「設置時」「災害時」の項目に分けて、それぞれ気になる不安点への回答をまとめました。

Q&Aタイトルイラスト
⼀般社団法⼈ZEH推進協議会理事⼩⼭貴史さんのお話から

<太陽光 お金と撤去についてのギモン>

Q. 毎年売電単価が下がってきているみたいだけど、太陽光に切り替えて、この先本当に元が取れるの?

A. 売電単価の値下げは太陽光パネルの価格の値下げに準じて行われています。
太陽光の経済的メリットは法律で定められているため、電力の買取価格は利益が設備投資を下回ることがないように計算されています。
実は国による試算は最低基準ベースになされているため、利益率は過去と比べて現在の方が大きくなっています。

Q.将来的に使えなくなった太陽光パネルの撤去と処分が心配……。

A.発電しなくなってもすぐに撤去する必要はありません。当面屋根に残しておき、建物を解体するときに専門業者に廃棄を委託することができます。
パネルを載せ替える場合には、産業廃棄物として処分する必要があり費用は約25万円〜35万円、リサイクルする場合には約30万円〜40万円かかります。自身で管理型処分場にパネルを持ち込んだ場合は一枚あたりの処分にかかる費用は3000〜5000円です。

野立てのソーラーパネルの廃棄問題が心配されていますが、住宅用パネルの場合は廃棄におけるルールが決まっています。廃棄問題も今後はリサイクルの義務化等によって再資源化の仕組みができることで解消されていく見込みです。


<太陽光 設置時のギモン>

Q.家のまわりに高いビルや建物があったり、この先建設される可能性がある場合に、問題はありますか?

A.お住まいの場所が高層ビルの多い地域であるなど、太陽光パネルを設置する屋根が日陰になってしまう時間が長い場合、残念ながら設置に適さない場合があります。

ただし、建築基準法によって用途や地域によって異なるものの、地域ごとに建築される建物は高さや斜線制限、日影規制等の制約で、一定の日照が確保されることになっています。設計士さんに相談してみましょう。

Q.敷地が南向きではありません。影響は出るのでしょうか。

A.南東〜南西の範囲なら、発電の効率は約96%〜100%。
新築に設置する場合は、敷地に対する建物の配置や、屋根の形状で十分にカバーできますので、敷地の方位についてはあまり心配する必要はありません。

南面を100%とした場合の発電量比率
南面を100%とした場合の発電量比率
太陽光発電協会「よくあるご質問」より

※東京地区で太陽光パネルを水平に対して30度の傾斜で真南に向けて設置した場合での計算例

Q.太陽光パネルはどのくらいの面積に設置するといいの?

A.屋根の形状を工夫して、最大限の面積に設置することをおすすめします。新築の場合にはぜひ設計士さんに相談しましょう。

既築の住宅の場合は、南〜東西側の屋根が小さいなど、北側にしか設置できない場合は残念ながらあまりおすすめできません。

Q.太陽光パネルの設置時には、蓄電池も一緒に購入しなければならないの?

A.災害時の被害を小さくするために、蓄電池を導入する人が増えています。しかし、現時点で蓄電池は価格が高く、経済的な利益を出すことは難しいのが実情です。
太陽光パネルを設置してから10年後以降、売電価格が安くなるタイミングで導入を検討してもよいのではないでしょうか。


<太陽光 災害時のギモン>

Q.停電したらどうなるの?

A.災害時などに停電が起きても、昼間晴れていて発電することができれば、非常用のコンセントを一口、最大1,500ワット使うことができます。

この非常用コンセントに延長コードをつなぐなどの工夫で、災害時のライフラインとなるスマートフォンの充電や冷蔵庫の電源を確保することが可能です。

Q.雨漏りしませんか?

A.ほぼ心配ありません。
新築の場合は法律によって、全ての新築住宅の雨漏り被害は10年間補償されることになっています。
また、雨漏り補償をされている太陽光発電メーカーの調査によると、累計25万棟へのパネル設置のうち、施工ミスや自然災害による雨漏り被害は約20件。一万分の一という極めて稀なケースです。
パネル設置工事の実績の多い工務店を選ぶとより安心ですね。

Q.地震、台風、ひょう、落雷などの自然災害で、飛んだり、落ちたり、壊れたりしませんか?

A.心配はほとんどありません。
JIS規格で一定の地震、台風、ひょう等に耐えられる設計基準が定められています。
住宅の太陽光パネルが地震で落下したり、台風で飛んでしまったという事例はほとんどありません
強い風、ひょう、落雷等の自然災害による損害は一般に火災保険の特約等で保証されることになっています。
※野立てのメガソーラーのパネルが台風時に飛散した事例はあるものの、住宅での事例はほぼありません

Q.太陽光パネルがあると、火事になりやすくて、火事が起きた時には火が消せないんでしょ?

A.住宅太陽光発電が原因の火災は累計230万棟の実績に対して、約100件把握されていますが、その大部分が屋根一体型のパネルによるもの。
現在は、屋根一体型のパネルはほとんど販売されていません。

パネルを設置した建物で火災が発生した時の消火活動について、「感電の危険のために消火活動ができない」との風評がありますが、消防庁では絶縁手袋や放水距離の確保等の対策がされていて、消火に問題はないとされています

東京都に続き、川崎市で太陽光パネル設置義務化!

東京都では、2025年の4月以降に大手住宅建設会社が都内に建設するすべての新築住宅に置いて、太陽光発電パネルを設置する努力義務が生じます。

これは、日本の地方自治体として初めてとなる画期的な条例です。東京都は、温室効果ガスの排出量を2030年までに2000年度の半分にすることを目指しています。

福島県三春町のコミュニティショップ兼カフェ、「えすぺり」の屋上に、ソーラーパネルを設置するようす
福島県三春町のコミュニティショップ兼カフェ、「えすぺり」の屋上に、ソーラーパネルを設置するようす。(2016年1月)

そして、この度、神奈川県の川崎市が日本で2番目となる義務化に踏み切りました。
川崎市では条例改正案が3月17日の市議会で可決、成立しています。これで、川崎市は太陽光パネルの義務化を条例に採用した日本で2番目の都市となりました。
市は早ければ、2025年の4月には義務化を実施するとしています。

太陽光パネル義務化条例成立にはグリーンピースが事務局を務める市民グループゼロエミッションを実現する会が大きく貢献しました。

家計と環境に優しい太陽光発電

世界で5番目に多くの二酸化炭素を排出している日本(2022年時点)。

2050年までにカーボン ニュートラルを達成することを宣言したものの、これまで石炭火力に依存した発電網が大きな足枷となってきました。

世界の二酸化炭素排出量 円グラフ
JCCCAウェブサイトより
出典:EDMC/エネルギー・経済統計要覧2022年版

それを受けて日本政府が発表したのは原発回帰の方針でした。
しかし、それでは環境問題の解決にもならず、家計を圧迫する電気料金の高騰を緩和することもできません。

一方で、太陽光発電は今を生きる私たちにとって、そして同時に未来の世代にとってもメリットになるものです。

福島県で有機農業をしながら、コミュニティショップ兼カフェ「えすぺり」を営む大河原さん夫妻
福島県で有機農業をしながら、コミュニティショップ兼カフェ「えすぺり」を営む大河原さん夫妻。ソラライズ福島プロジェクトを立ち上げたお二人は太陽光の電力で、店内の電気をほぼまかなっています。(2015年10月)

心地よい暮らしを求める努力と、環境を守るための行動は多くの場合に繋がっていますが、太陽光発電は暮らしと環境をよくするための大きな柱となります。

https://www.greenpeace.org/japan/campaigns/story/2023/01/19/61192/
もう一本の柱、家庭の省エネとCO2削減の要となる家屋の断熱についてのお話はこちらから。

ぜひ、この機会に家庭の電気の見直しをしてみませんか?

(2023年3月22日の記事を再編集)

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