100万種の動植物が絶滅の危機に瀕し、世界では、生物多様性が凄まじい勢いで失われています。12月7日から18日まで、生物多様性条約の第15回締結国会議(COP15)が、カナダで開催されています。どうすれば生物多様性を守ることができるのでしょうか?COP15に期待される3つの成果を解説します。
生物多様性
アマゾンの森を流れるマニコレー川流域で観察された、小型のサルの一種・マニコレーマーモセット(2022年3月)

生物多様性は”インフラ”

生物多様性(Biodiversity)とは、地球上に存在する膨大な種類の生命が、相互に関連し合いながら生存していることを表す言葉です。

水、食糧の安全保障、気候変動への適応など、生物多様性は具体的な利益をもたらし、人間を含む地球上のあらゆる生命にとって、健全な生物多様性は不可欠なインフラです。

生物多様性
フランス領ギニアの海岸で孵化した、絶滅危惧種に指定されているオサガメの赤ちゃん(2019年6月)

生物多様性条約とは?

生物多様性条約(Convention on Biological Diversity) は、生物多様性を保護するための国連の国際条約です。

世界の生態系を維持することを目的に1992 年のリオ地球サミットで設立され、世界196カ国の政府が批准しました。後にパリ協定などが結ばれることになる国連気候変動条約と一緒に設立されましたが、気候変動条約ほど注目されていません。しかし、同様に重要な条約です。

2010年には愛知県名古屋市で第10回締約国会議(COP10)が開催され、日本が議長国を務めて、2011年から2020年までの戦略をまとめた「愛知目標」が合意されました。2020年以降の10年間の新しい枠組みを交渉する会議として、12月7日から18日まで、カナダ・モントリオールで第15回締約国会議(COP15)が開催されています。

十分に野心的な枠組みに合意できれば、生物多様性と私たち人間を含むすべての生命を守ることに繋がる、重要な会議です。

生物多様性は凄まじい勢いで失われている

アマゾンの森林火災が生物多様性を破壊する
多様な生命を育むアマゾンは、食肉や飼料の生産のために意図的に火を放たれ、燃やされている(2022年7月)

世界は、生物多様性の喪失という危機の真っ只中にあります。

現在、約100万種の動植物が絶滅の危機に瀕し、世界の森林のうち手付かずなのはわずか15%、人間の搾取から守られている海は世界の海のたった3%にすぎません。

研究者は、今起きている生物多様性の喪失は、恐竜を絶滅させた6550万年前の大量絶滅と同等の速度で進んでいると指摘します。しかし、今大量絶滅の原因となっているのは、私たち人間の活動です。

プラスチックごみとウミガメ
川や海へ流れ出す使い捨てプラスチックによる汚染は、海の生物多様性を破壊する大きな要因の一つ。インドネシア・バリでプラスチックごみと一緒に浜辺に打ち上げられたウミガメ(2020年12月)

生物多様性という生命維持構造の崩壊が進むと、大量絶滅が加速し、ますます多くの生命が危険にさらされることになります。

豊かな森や海は、炭素を土や海の中に蓄えて温暖化を抑えてくれているので、生物多様性を失うと気候変動への重要な防御を失うことになります。また、森林が破壊されると、人獣共通感染症に人間が触れる機会が増え、新型コロナウイルスのような伝染病もより流行しやすくなります。

カナダ・モントリオールで開催されているCOP15は、生物多様性の損失が私たちの手に負えなくなる前に、地球規模で食い止めるための重要な機会なのです。

COP15で期待される3つの成果とは?

COP15は当初、2020年に開催される予定でしたが、これまでのところ、新型コロナ感染症のパンデミックの影響、リーダーシップの欠如、効果のない交渉など、交渉を取り巻く困難な状況により遅れをとっています。その後、COP15第一部が2021年10月に中国・昆明でオンライン併用で開催され、COP15第二部が現在カナダ・モントリオールで開催されています。

生物多様性
グリーンピース・ドイツが、COP15の開催を前に、動物たちからのSOSを伝えるインスタレーションをおこなった(2022年12月)

COP15は、各国政府が自然環境との新しい関係を構築するチャンスです。グリーンピースは、COP15でこの3つが合意されるよう求めています。

1. 2030年までに陸と海洋の少なくとも30%を保護すること

これ以上の生態系の劣化を防ぐためには、世界的なセーフティーネットが不可欠です。現状、2030年までに世界の陸と海の少なくとも30%を保全するという「30×30」の目標に100カ国以上がすでに賛同しています。IPCCの報告書によると、世界の生物多様性と生態系サービスを維持するためには、世界の陸、淡水、海洋の最大50%を保全する必要があると指摘されており、これは最低限の目標だといえます*

2. 先住民族を生態系保護の意思決定者として、権利を認めること

先住民族は、自然を守り、持続可能な社会を実現する上で、重要な役割を担っています。地球に残る生物多様性の80%は先住民族の土地に集中*、これは世界の陸地と沿岸海域の5分の1にもなります。先住民族が生物多様性を守りながら暮らしていくことに最も長けていることは、各地で報告されています。

3. 生態系を守り、回復させる資金調達メカニズムを確立すること

COP15に参加するすべての締約国、特に自然環境の商品化によって利益を得てきた北半球の経済的に豊かな国々は、生物多様性の保護に必要な資金を提供する責任があります。生態系を保護し、回復させるために、グローバルサウスの国々を支援する資金調達メカニズムが必要です。

グリーンピースは、NGOメンバーとしてCOP15に参加し、交渉プロセスを注視しています。陸と海の少なくとも30%の保護、先住民族と地域コミュニティの権利の尊重、資金調達メカニズムの明確な計画、という3つを含んだ、野心的な枠組みを求めて働きかけています

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