グリーンピースも参加する国際的な脱プラスチックネットワークBreak Free from Plastic主導の「プラスチック汚染企業調査」では、2018年以来、世界各地のボランティアが海や川でごみを拾い、どのブランドが最も世界をプラスチックごみで汚染しているかを、一年に一度、市民の力で明らかにしてきました。

2022年は、5年分のごみ収集データを分析しました。その結果、現在の企業の自主的な取り組みでは環境破壊を止めることができないことが明らかになりました。

「世界をプラスチックで汚染している企業」トップ5

大磯海岸のビーチクリーンで見つかったプラスチックごみ。
2019年度の「プラスチック汚染企業調査」でグリーンピース・ジャパンと約40人のボランティアが大磯海岸を清掃し、見つかったプラスチックごみ。

5年連続1位となったコカ・コーラを筆頭に、2022年の「プラスチック汚染企業」トップ5には、以下の企業が選ばれました。

  1. コカ・コーラ
  2. ペプシコ
  3. ネスレ
  4. ユニリーバ
  5. モンデリーズ

2021年時点での各社のプラスチック生産量は、

コカ・コーラ年間プラスチック生産量:2,981,421トン CO2換算:1,500万トン

ペプシコ年間プラスチック生産量:2,300,000トン CO2換算:1,150万トン

ネスレ年間プラスチック生産量:1,524,000トンCO2換算:760万トン

3社のプラスチック容器包装の量を合計すると約700万トンになり、これは日本のすべての(使い捨て容器包装以外も含めた)廃プラスチックの年間総量(850万トン)に匹敵します。

インドネシアのビーチでプラスチックごみが清掃される様子。
2022年10月に、グリーンピース・インドネシアが「プラスチック汚染企業調査」でボク島のビーチを清掃した際の様子。

コカ・コーラ – COP27のスポンサーが5年連続で1位に

今年の「プラスチック汚染企業調査」では、31,000点以上のコカ・コーラ社のごみが見つかり、2018年に見つかったコカ・コーラ社製品の割合の2倍となりました。

コカコーラのプラスチックごみ

2018年以降、87の国と地域で20万人以上のボランティアによってプラスチック汚染企業の調査が実施され、過去5年間のすべての期間において、コカ・コーラ社の商品が最も多くの場所を、最も多くのプラスチック廃棄物で汚染していました

コカ・コーラ社は、世界をプラスチックで汚染し、気候変動を加速させていながら、COP27とスポンサー契約を結んでおり、このスポンサー契約には世界中から批判が集まっています

世界中の活動家は、企業が生産するプラスチックと使用するプラスチックの両方を効果的に削減するための、法的拘束力のある政策へとつながる世界プラスチック条約の制定を呼びかけています。 

ペプシコ – 5年連続で3位以内にランクイン

メキシコのミラマールビーチで清掃活動が行われた際に見つかったペプシコのプラスチックごみ。
メキシコのミラマールビーチで清掃活動が行われた際に見つかったペプシコのプラスチックごみ。

ペプシコも、2018年以降、5位以内にランクインし続けています。ペプシコは、2030年までにバージンプラスチック(新たなプラスチック)の使用量を半減させるという新たな自主公約を発表しましたが、再使用可能なリユース容器へ切り替えない限り、”プラスチック汚染のトップランナー”としての地位は変わりそうもありません。

気候変動を加速させ、環境を汚染するプラスチック

もしプラスチックが”国”だと仮定すると、原料採掘から廃棄までのCO2排出量は、中国、アメリカ、インド、ロシアに次いで世界第5位となります。

1950年代以降、プラスチックの生産は大幅に増えました。2020年には3億6700万トンと言われており、2018年と比較しても800万トンも増加しています。

このままプラスチックの増産が続けば、今後10年ちょっとでプラスチックの生産は今の倍になり、2050年までには3倍にまで増えるとも予測されています。

プラスチックは石油やガスの原料採掘、精製、生産、販売、廃棄など全ての過程(ライフサイクル)で温室効果ガスを排出しているので、もしこのままプラスチック生産の世界的な増加を見逃せば、同時に温室効果ガスの排出も増え、気候変動への影響もますます大きくなります。

コカコーラ社のプラスチックごみに対し、グリーンピースが抗議する様子。

気候変動への影響だけではなく、プラスチックは深刻な汚染問題も引き起こしています。海には毎分約トラック1台分のプラスチックごみが流れ込んでいます。

プラスチックはほとんどが分解されることなくただ細かくなっていき、海洋環境に残留します。そのうち94%は海底に堆積し、1%が海面を漂い、5%が海辺に流れついています。海には、現在5兆個ものプラスチック片が存在すると言われています。

ゼロから分かるプラスチック問題と海洋汚染

使い捨てプラスチックの半分が容器・包装

プラスチックごみ

プラスチックごみの約半分が、ペットボトルやお菓子の個包装パッケージなど使い捨て用途のものです。消費材メーカーは、自社の使い捨てプラスチックによる気候変動への影響を見て見ぬふりをすることはできません。

プラスチックの99%は化石燃料でできており、プラスチックの原料となる石油化学製品は、石油使用量の14%を占めています

11月末より国際プラスチック条約の交渉がスタート

国際プラスチック条約を支持して、バナーを掲げる活動家。
グリーンピース・アフリカの活動家たちが、国際プラスチック条約を支持するバナーを掲げる様子。

今月28日より、各国政府はウルグアイで会合を開き、世界プラスチック条約の交渉を開始します。十分に野心的であれば、この条約はプラスチックの生産と使用を制限することになります

再生可能エネルギーへの転換が急がれる今、化石燃料企業にとってプラスチック生産は残された重要なビジネスです。そのため、一部の政府や企業は、この条約を弱めようとすることが予想されます。

各国は、プラスチックの生産を続けさせないため、企業の利益ではなく、人と地球を優先する強力な世界プラスチック条約を支持する必要があります。

また、グリーンピースは、世界55の国と地域で活動するグローバルなネットワークを生かして、コカ・コーラ、ペプシコ、ネスレ、ユニリーバへ働きかけを続けています。

世界700万人がすでにこのキャンペーンに賛同して署名していますが、日本での働きかけは始まったばかりです。日本からも大手メーカーに期待の声を届けるため、ぜひ力を貸してください。