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10月末にブラジルで大統領選挙が行われ、ブラジル市民はまったく異なる2人のうち、より環境に優しく公正なブラジルを追求すると約束した候補者を選びました。アマゾンの森林伐採を肯定し、環境保護政策に消極的姿勢を続けたボルソナロ氏に代わって、 森林保護を支持するルラ氏が当選したことは、地球の自然環境にとっても大きな勝利です。
気候維持のために重要な役割を果たす熱帯雨林は、特にボルソナロ政権下の4年で大きく破壊されました。2023年に発足となるルラ新政権を迎えるにあたり、熱帯雨林を守るために今私たちにできることを改めて考えます。

環境問題の分岐点となる選挙の勝利

2022年10月30日、ブラジルで大統領選挙の決選投票が行われ、2003年から8年間、左派政権を率いたルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ元大統領が現職のジャイール・ボルソナロ大統領を有効投票数50.9%の僅差で破り、当選を果たしました。

ルラ氏とボルソナロ氏は政治、人権、貧困、銃規制など、あらゆる問題で正反対の立場をとっていますが、その中でも特に環境活動家や気候専門家を中心に注目されたのが環境政策です。

ルラ氏がアマゾン熱帯雨林の保護を訴える一方、ボルソナロ氏は経済のための熱帯雨林開発の必要性を主張し続けてきました。

そして実際に、ボルソナロ氏は森林破壊を急激に進めてきたのです。

ブエノスアイレスで行われたブラジル大使館前での抗議行動。プラカードには「ボルソナロは火を消し、
アマゾンを救え」と書かれている。2019年8月撮影

専門家や活動家は、もしボルソナロ氏が再選すれば、アマゾンは森林を維持できる臨界点を突破してしまうと警告していました。

そんな中、ルラ氏が勝利を収めたことは環境破壊を止めるために声を上げ続けてきた人々に希望を与えています(1)。

アマゾンの森と私たちの繋がり

ボルソナロ氏の環境を顧みない政治方針の下で、アマゾンの熱帯雨林は、にわかには信じ難い規模で破壊されてきました。

アマゾンの森林火災。ブラジル、ノボ・プログレッソ。2020年8月撮影。

ボルソナロ氏は2019年の就任当初から経済優先の政策を打ち出し、環境破壊を規制する政府機関を弱体化させ続けました。

その結果、森林開拓によって利益を得ようとする人々が、邪魔されることなく森を燃やし、木を切り、土地を採掘できるようになってしまい2)、アマゾンの火災は111%増加し、先住民族たちの居住地での違法な資源搾取などの被害は2.7倍に増加(3)、温室効果ガス排出量は10%増加しています(4)。

【ブラジルオフィスから最新報告】アマゾン森林破壊は過去最悪のスピードを記録

実は、遠く離れた熱帯雨林で起きることは、私たちの生活とも大きく関係しています。

食料自給率が低い日本は、多くの農畜産物をブラジルを含む海外から絶えず輸入していて、その品目の中には、アマゾンの開拓地で最も多く栽培されている大豆やとうもろこし、その加工品類が含まれています。

ブラジル国内の監視体制も十分ではない中、オランダを筆頭としたヨーロッパ諸国のように、輸入品のトレーサビリティを確保するための取り組みが行われていない日本では、私たちが日頃からスーパーや飲食店などで目にしている商品の中に、アマゾンの森を切り拓いて生産された農産物が含まれないとは言い切れません※56)。

また、大豆やとうもろこしは家畜の飼料に使われることが多く、食用肉となってしまえば、生産過程のクリーンさを担保することはさらに難しくなってしまいます。

そして、アマゾンの熱帯雨林が減少することによる気候影響は地球全体に及ぶものです。

密生した植物たちが膨大な炭素を蓄え、気候に重要な役割を果たしている森が失われることが、日本で起きる豪雨や台風などの自然災害や異常気象の規模拡大、増加にも繋がっています7)。

ルラ新政権は現状をどう変えられるか

「伐採ゼロ」を謳うルラ大統領のもとで、アマゾンの森林が守られることを世界中の人々が願っています。

ルラ氏は、勝利演説で違法な伐採や鉱業採掘、土地収奪を取り締まることを明言し(8)、「ブラジルと地球には、生きて呼吸するアマゾンが必要。立っている1本の木は、違法に伐採された1トンの木材以上の価値がある」と語りました(9)。

アマゾンの茂みの中を歩くジャガー。森林がなくなれば、動物たちも生きる場所を奪われてしまう。2003年3月撮影

11月6日に開幕したCOP27(国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議)にも、議長国となるエジプト政府から招待されて、アマゾン地帯の州知事一行とともに参加しています(10)。

イギリスの気候ウェブサイト、カーボンブリーフはルラ氏の当選によって、今後10年間でブラジルのアマゾン森林破壊は89%減少し、2030年までに75万960平方キロメートルもの森の減少を防ぐことができるとの試算を報告しています(11)。

アマゾンを守るためのグリーンピースの活動

しかし、大統領が変わっても、アマゾンの「森林破壊ゼロ」を達成するには経済や産業、政治と、あらゆる方面からの多岐にわたる困難が立ちはだかります。

ボルソナロ政権下で弱体化してしまった森林や環境のために活動する公的機関には再構築のための時間と支援が必要です(12)。

私たちは政権交代が決まったことに安心して、ただ傍観していることはできません。

国際環境NGOグリーンピースは世界40カ国で行ってきた森林保護の実績を活かして、アマゾンの森林破壊を止めるためにさまざまな活動を長きに渡り、継続的に続けてきました。

国連持続可能な開発会議に参加するために、リオデジャネイロに到着したグリーンピースの船の甲板で「アマゾンを救え」と書かれたバナーを掲げる乗組員。2012年6月撮影。

2019年に世界各地で緊急署名「アマゾンを先住民族の人々と一緒に守ろう」をスタートさせ、先住民族のコミュニティと連携して「森林破壊ゼロ」を求める140万筆を超える署名をブラジル連邦会議に届けています(5)。

ムンドゥルク族のリーダーたちと協力して、アマゾン中心部のタパジョス川で予定されていた巨大ダムの建設を中止させたことは、先住民族たちとの連携が大きく成功した事例となりました。

祝! アマゾンの森の巨大ダムが建設中止に

世界各地に展開する大手ファーストフードチェーンに向けて、製造過程でアマゾンの森林破壊に関与している肉製品の販売規制を求めた国際署名「アマゾンの森を一緒に守って」も、責任と影響力を持っている企業を動かす、大きな効果を持つ活動のひとつです。

また、独自の調査でアマゾンで起きる火災をモニタリングしたり、サプライチェーンが及ぼす影響の究明、企業の動きや銀行の投融資先などの監視も続けています。

これらの調査の結果はわかりやすくまとめられて世界中に発信され、多くの人たちのアクションへと繋がっていくのです。

私たちにできること

アマゾンの森林破壊を止めるために私たちにできることはたくさんあります。

肉や乳製品の消費を減らすこと、森林破壊をしない企業の商品を選択すること、自然エネルギーを導入している電力会社への切り替え、企業やメーカーに意思表示をすること、情報をSNSなどで周りの人たちとシェアすることも重要な環境運動です。

世界11都市の活動家が、ブラジルの先住民族に連帯し、アマゾンの保護を訴えて、ベルリンのブラジル大使館前でデモを行った。ドイツ。2019年4月撮影。

科学的根拠に基づいて世界各地で行われているグリーンピースの活動を支える寄付も、一つの大きなアクションのかたちになります。

署名運動、調査、呼びかけ、発信と、それぞれの活動を各国の拠点から専門的に行うことで、アマゾン森林破壊のような大きな問題にも力強く働きかけることができるのです。

世界各国から集まった意志の力は、現地の人々との連帯を生み、政治を動かすことに繋がります。

地球の危機を乗り越え、未来をよりよい方向へ動かすためのムーブメントに、あなたの力を貸してください。

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