ナイジェリアでの洪水被害やアフリカ各地での深刻な干ばつなど、10月も世界各地で気候変動の影響と指摘される豪雨や干ばつのニュースが続きました。大規模な山火事が発生したアフリカ最高峰のキリマンジャロでは、すでに山頂の氷河は90%喪失しています。

しかし、政府や企業の気候変動対策や生物多様性保護に対するアクションは、依然として十分でなく、グリーンピースは豊かな地球の未来のために活動を続けています。

2022年10月の世界各地での環境保護に関する動きやグリーンピースのアドボカシー活動をご紹介します。

ドイツ:交通機関の炭素排出を削減するため「気候チケット」の策定を求める署名が50万人を超える

2022年10月、グリーンピース・ドイツは50万人以上が署名した嘆願書を提出した。© Florian Manz / Greenpeace

2022年10月、グリーンピース・ドイツは、ドイツ政府に対し、エネルギー、お金の節約、二酸化炭素排出量の削減を目標に、より多くの人々が手頃な価格で公共交通機関を利用できる国家的「気候チケット」の策定を求めて、50万人以上の署名による嘆願書を提出しました。

現在、EUの温室効果ガス排出量の30%を交通機関が占めており、エネルギー不足も深刻化する中、ドイツ政府は6月から8月の夏季に、国や地域の公共交通機関が1カ月9ユーロで乗り放題になるマンスリーパスを導入しました。

この「一時的な月9ユーロパス」を低炭素交通のための恒久的かつ全国的な取り組みにするよう政府に求めるグリーンピースの署名には、50万人以上が署名しました。 

米国:「リサイクルではプラスチック汚染の危機を解決できない」とする報告書を発表

グリーンピースUSAは、米国におけるプラスチック廃棄物の危機が過去2年間で悪化していることなどを示す新しい報告書を発表しました。©グリーンピース

グリーンピースUSAの新しいレポート「Circular Claims Fall Flat Again」によると、プラスチック廃棄物の危機は過去2年間で悪化しており、2021年には米国の家庭で5,100万トンのプラスチック廃棄物が発生し、そのうち240万トンしかリサイクルされていないことが判明しました。

また、エレン・マッカーサー財団の「ニュー・プラスチック・エコノミー(EMF NPE)」構想に基づき、米国でリサイクル可能なプラスチックパッケージの定義に合致するものはないことも判明しました。

コカ・コーラ、ペプシコ、ネスレ、ユニリーバなどの企業は、何十年にもわたってプラスチック廃棄物の解決策として『リサイクル』を推進してきましたが、ほとんどのプラスチックはリサイクルできていないことが統計で証明されています本当の解決策は再利用(リユース)や詰め替えシステムの開発です。

ブラジル:アマゾンの森林伐採が過去最高を記録。生態系は崩壊寸前に。

© Marizilda Cruppe / Greenpeace

2022年9月、グリーンピースの活動家たちは、アマゾンの熱帯雨林だけでなく、近隣のセラード草原やパンタナル湿原など工業型農業のために危機にさらされている現場を視察しました。

2022年10月、ブラジル宇宙研究所(INPE)の最新の統計では、アマゾンの9月の伐採面積は1,455km2で、9月の伐採面積としては過去最大となりました。 ブラジル・アマゾン森林減少衛星監視システム(PRODES)によると、アマゾンの森林減少は過去3年間でベルギーの面積を超え、2022年1月から9月だけでニューヨーク市の面積の11倍に相当する8590km2の森林が伐採されています。

現在、アマゾン流域全体の17%以上が伐採されており、科学者のカルロス・ノブレとトーマス・ラブジョイの研究では、森林破壊が20%〜25%に達すると、アマゾンの生態系は自己回復能力を失い崩壊するとしています。

インドネシア:裁判所「大気汚染は政府の責任」と再び判断

© Jurnasyanto Sukarno / Greenpeace

ジャカルタ大気汚染訴訟の判決から1年が経過していますが、ジャカルタの大気環境は改善されておらず、グリーンピースや地元の環境団体、市民が早急な対応を訴えています。

2019年、グリーンピースの活動家を含む32人のジャカルタ市民が、インドネシア大統領、各省庁長、知事などに対して、自治体や周辺地域の大気汚染の厳格な管理を求める訴えを起こし、2021年9月に中央ジャカルタ地方裁判所は、政府の怠慢が市内の大気汚染を悪化させたとの判決を下しました。この際、裁判所は首都の大気環境を改善するため、モニタリングステーションの設置などを命じました。

今年9月、グリーンピースや地元の環境保護団体、市民は再度ジャカルタの大気汚染が改善されていないことを訴え、10月には高等裁判所が「被告はジャカルタの公衆衛生に害を及ぼす職務怠慢である」として2度目の判決が出されました。

この判決は、大気汚染公害訴訟で2度目の勝利を収めただけでなく、人々が清潔な大気を呼吸する権利を守るための政府の責任を再確認させるものでした。

*国連人権理事会は2021年に、清潔で健康的で持続可能な環境は人権であることを認めています。

台湾:国際Eサプライチェーン脱炭素化レポートを発表

グリーンピースは、半導体のリーディングカンパニーとしてtsmc社にグリーン電力の使用率を拡大することを訴えました。©Greenpeace

グリーンピース・東アジアと環境擁護団体スタンドアースは、「国際Eサプライチェーン脱炭素化レポート:家電ブランドとサプライヤーの気候パフォーマンス比較」を共同で発表し、大手家電企業10社と主要サプライヤー14社の二酸化炭素削減および再生可能エネルギー関連政策を、企業コミットメント、企業行動、政策の透明性、擁護という4項目に基づき比較しました。 

その結果、半導体大手のTSMC社(台湾)、最終組立・電子部品メーカーの鴻海(台湾)、ペガトロン(台湾)など14社のサプライヤーのほとんどが化石燃料に依存し、再生可能エネルギーの使用量は中央値でわずか5%で、業界全体のパフォーマンスは低いことが明らかになりました。

その中でも台湾の最大手企業であるTSMCは、再生可能エネルギーのシェアが9.2%にとどまり、競合のインテル(82%)やサムソン(20.5%)との差が目立つ結果でした。

世界中の政府や企業は、気候や環境の悪化を食い止めるために、今すぐ行動を起こさなければなりません。 

グリーンピースは、11月6日からエジプトで開催される第27回国連気候会議(COP27)の公式オブザーバーとして、気候変動に脆弱な国の人々の要求と声を会議指導者に伝え、1.5℃目標に沿った排出削減約束、気候変動適応策の強化、気候被害を補償する仕組みの構築を求める闘いを行っていく予定です。

グリーンピース・ジャパンは、プラスチック生産削減やガソリン車からEVへの移行、そして日本の気候変動対策の向上を求めて企業や政府、自治体への働きかけを行っています。皆さんも署名や寄付を通じて、私たちの活動に参加しませんか?

来月もまた、世界中の環境保護活動の成果をお伝えできることを楽しみにしています。

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