たった半世紀で動物の個体数は平均70%近く減少

WWFとロンドン動物園協会(ZSL)が2年ごとに発表する「Living Planet Report」によると、1970年以降のたった50年間で、動物の個体数が平均70%近く減少していることが明らかになりました。*

野生生物の数が、平均して3分の1以下になったという衝撃的な数字です。

種の絶滅率は現在、人間の活動が一切ない状況における自然の絶滅率の1,000倍を上回っており、多くの科学者は、私たちは6回目の大量絶滅、つまり恐竜の時代以来、地球上で最も多くの動植物が失われている時代を生きていると訴えています。

特に、アマゾンを含むラテンアメリカとカリブ海地域は、野生動物の平均個体数が最も急激に減少しており、48年間で94%も減少していることが分かりました。アフリカは66%で2番目に減少し、次いでアジアと太平洋が55%、北米が20%の減少を記録しました。

報告書では原因として、気候変動、汚染、乱獲などに触れた上で、世界的に重要な懸念事項として土地の利用・管理方法の変化を挙げています。

WWF-UKの科学・保全担当エグゼクティブディレクターであるマイク・バレットは、「世界レベルで見ると、私たちが目にしている生物多様性の減少は、主に世界的な農業システムと農業の拡大による野生動物の生息地の損失と分断によってもたらされています」と、私たちの食料システムと生物多様性の損失の関連を強調しました。

食料システムと生物多様性の喪失

アルゼンチン、チャコ州における農業と農業のための森林伐採。この地域には、3,400 種の植物、500 種の鳥類、150 種の哺乳類、120 種の爬虫類、100 種の両生類、そして先住民が住んでいます。過去 30 年間に、アルゼンチンは集中的な畜産と農業によって 800 万ヘクタールの森林を失いました。

農業の中でも畜産は、土地システムの変化を引き起こす最大の原因であると指摘されています。

畜産に必要な土地の面積(耕地と放牧地)は、すべての農地のおよそ75~85%を占めると推定されており家畜の放牧に利用されている土地は、すべて合わせると地球の陸地面積の約26%に相当しています。

放牧と飼料を栽培するための耕作の拡大は、天然の森林や草地、サバンナを犠牲にして行われることが多く、1960〜2011年までの50年間に世界全体で生じた土地利用の変化と耕地の拡大の65%は、動物性食品の生産に起因していました。

天然の森林やサバンナが失われると、その土地の種の構成が変化するなど、生態系全体が不可逆的に変化し、地球上の炭素循環や水循環、各地の気象システムなど様々なプロセスに影響する可能性があります。

現在、絶滅の危機にある陸生の鳥類・哺乳類の全種のうち約80%は、農業による生息地の喪失の危機にさらされています。

参照:報告書『Less is more 少なくすることは、豊かになることーー肉・乳製品を減らして暮らしも地球も健康に』

生物多様性の喪失は既に限界点を超えている

プラネタリー・バウンダリーは、人間にとって居住可能な地球を維持するための重要な9つの要因を表している。

プラネタリー・バウンダリーは、人間が生きられる環境を維持するために超えてはいけない9つの要素の限界点を示したものです。

地球上の生命を支える9つの要素のうち、気候変動、生物多様性、土地利用の変化、そして主に農業による海洋への高レベルのリンと窒素の流入の4つは既に安全レベルを超えています。中でも、窒素とリンの肥料による汚染と生物多様性は著しく限界を超えており、地球上の生命の危険となる高リスクゾーンに既に到達しています。

また科学者は、肉・乳製品の生産が、これらの要素に与える影響は非常に大きく、9項目のうち6項目を脅かしていると指摘しています。

グローバル化は世界中の人とモノを結びつけ、他国で生産された食材を消費することも多くなりました。ある国で消費される肉・乳製品の生産のために必要な土地は、多くの場合、他国や地域にある野生の生息地を犠牲にして開発されています。

私たちの選ぶ食事が環境に及ぼす影響を抑えるために、未来を見据えて世界規模の取り組みを積極的に進めるべきです。

生物多様性条約COP15の注目点

生物多様性の喪失を解決するためには、保護だけではなく、生産と消費を変えることが必要です。それを立法化することができる唯一の方法は、12月のCOP15(生物多様性条約第15回締約国会議)で、生息地の回復、絶滅リスクの低減に向けた明確な測定可能目標を持つことです。

2021年10月に開催されたCOP15第1部では「遅くとも2030年までに生物多様性の損失を逆転させ回復させる」ことが宣言されました。

12月に開催されるCOP15の第2部では「ポスト2020生物多様性フレームワーク(Post-2020 Biodiversity Framework)」の合意を目指します。

論点となる世界目標は、2030年までに陸と海の30%以上を保全する取り組み(現在、陸域20.5%、海域13.3%)30by30サプライチェーン全体での生物多様性負荷低減企業の情報開示の国際的な枠組みなどに関してです。

残された生物多様性を守り、さらに回復させていくためには、企業のあり方や社会全体としての消費のあり方を改革する必要があります。

また私たち一人ひとりも生物多様性に大きな影響を与えるとされる農業や乱獲などの問題を真剣に考え、消費行動の責任を捉え直すことが大切です。

絶滅の危機にある陸生の鳥類・哺乳類の全種のうち約80%は、農業による生息地の喪失の危機にさらされていると言われています。 人間の食事が今より植物中心の食事に変われば、中型および大型種の鳥類・哺乳類について、上昇が予想される絶滅リスクを2060年までに20〜40%程度下げられる可能性があります。

また行政や企業に声を届けることも重要です。

グリーンピースは、プラスチック生産削減やガソリン車からEVへの移行、そして日本の気候変動対策の向上を求めて企業や政府、自治体への働きかけを行っています。

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