10月21日は国際反戦デーです。
1966年10月21日、日本労働組合総評議会がアメリカ軍のベトナム戦争介入に反対する全国政治ストライキ「ベトナム反戦統一スト」が行われ、それを全世界の反戦運動団体に呼びかけたことに由来して記念日が制定されました。
アフリカ中部に位置するコンゴ民主共和国は、アフリカ第二の面積を有する広大な草原とジャングルに覆われた自然豊かな国です。この国は長きにわたりベルギーの植民地支配を受けてきました。豊富な鉱物資源の権益争いによる紛争に苦しむコンゴ民主共和国で今、何が起きているのでしょうか。
競売にかけられた石油・ガス鉱区に住む人々は、コンゴ民主共和国政府との合意形成も事前告知すらなかった
© Thomas Einberger / argum / Greenpeace

コンゴ民主共和国では、新しい油田の開発のために熱帯雨林と泥炭地の広大な地域がオークションにかけられました。*

同国のディディエ・ブディンブ石油相は、今年7月28日に、アマゾンに次ぐ世界第2の森林面積を誇る熱帯雨林で、生物多様性の宝庫ともなっている27の石油鉱区と3つのガス鉱区をオークションにかけると発表しました。

この決定は、COP26で中央アフリカ森林イニシアチブ(CAFI)とコンゴ民主共和国の森林保護を支援する5億ドル(約684億円)の取引に署名してからわずか5カ月後のことでした。*

競売にかけられているブロックのいくつかは、泥炭林と熱帯雨林にあり、生態学者によると、大量のCO2を保持しており、 泥炭は、植物、葉、枝で構成された湿地の一種で、完全には腐敗しておらず、大量の炭素が貯蔵されています。

しかし、それが乾いたり損傷したりすると、CO2の形で放出される可能性があると指摘しています。それが結果的に気候変動に与える影響も、少なからず懸念されます。

炭素を多く含む泥炭地、ヴィルンガ国立公園、その他の野生動物保護区を切り開く区画は、コンゴ共和国の政府が経済発展のための民族主義的行為として、最も高値で売却されました。

「私たちはゴリラよりも人間を大切にしている」と逓信大臣は主張しました。

環境相は、この環境破壊を擁護するために、「我々は国民に対する義務がありますが、NGOには義務がない」と述べました。

グリーンピースの責任者であるアイリーン・ワビワ・ベトコ氏は、「政府が森林破壊に影響を与える活動を避けなければならないとしています。これは本当に許されないことです」とコメントしました。

政府は、石油とガスの探査と生産によって人々が生活にどのような影響を受けるのか事前に情報提供や相談をすることさえしませんでした。

グリーンピース・アフリカのチームは、競売にかけられた区画に住む人々に話を聞きに行きました。

先祖代々の土地が競売にかけられ、生活が破壊されるという見通しにショックを受け、激怒している村やコミュニティの人も多くいます

欧州のエネルギー争奪戦へ貢献

コンゴ民主共和国ムバンダカ近郊の泥炭林にあるラックパクの村の空撮写真。
世界で最も炭素が豊富な熱帯地域は、世界の総化石燃料の3年分に相当する量を貯蔵していると推定される。

コンゴ民主共和国政府の見せかけのナショナリズムは、アフリカ大陸の多くの人々に苦難をもたらす一方で、先進国や大手の多国籍企業に利益をもたらそうとしています。

これは、何世代にもわたる植民地支配を抜け出し、民主国家としての自立を目指す人たちの努力を阻むものです。

世界で最も繊細な生態系の一部で石油とガスの採掘権を競売にかけるという決定は、ヨーロッパ諸国とその巨大石油・ガス会社がロシアの化石燃料への依存を減らす代替エネルギー源を見つけるために先進国が奔走している中で決められたものです。

先進国が気候変動に関する公約を忘れ、燃料の輸入を拡大しようとすることで、これまでの新植民地主義的な行動と同様に、資源獲得競争は地域住民の平穏な生活を抑圧してしまいます。

この大規模なオークションは、熱帯雨林に共に生活する特定の先住民を先祖代々暮らしてきた土地から追い出し、彼らの土地を荒廃させ、生活を破壊し、長期間にわたって空気や水を汚染することになるになるでしょう。

経済的苦境を別の方法を考え直さなければいけない

ブラッドウッドの丸太の上で休む20歳の青年

コンゴ民主共和国の国土、鉱物、生物多様性の豊かさに匹敵する国はほとんどありません。しかし、独立から60年以上たった今でも最貧国のひとつに数えられています。

熱帯雨林をはじめとする自然の宝庫を売り払うことで経済が豊かになるのであれば、今頃はG7の一角を占めていたかもしれません。

しかし、原材料の売却を急ぐあまり、国はより貧しくなり、政府はより腐敗し、鉱山での児童労働などの悲惨な人権侵害すら起きてしまっています。

アフリカの指導者たちは、経済的苦境から国民を立ち直らせる別の方法を真に考え直すことが必要です。

雇用を創出するための地場産業の育成、豊富な太陽エネルギーを利用した分散型エネルギーアクセスの提供、自然保護やエコツーリズムへの投資などは、アフリカが必要としている開発への道筋の一部です。

日本も決して他人事ではない

10分足らずで、樹齢数百年の木が切り倒される様子。自然環境の破壊により、
先住民は食料を得ることが難しくなり、木材産業で働かざるを得なくなりました

現代日本で暮らす私たちにとって、紛争鉱物問題は「遠い外国のできごと」のように思えるかもしれません。

しかし、決して他人事ではありません。

私たちが日頃から使っている携帯電話や電子機器製品にもコンゴ民主共和国で採れるレアメタルが使われています*

壊れたら買い替えるのは簡単ですが、その製品がどこからきていて、どのような過程を経ているのかを今一度考え、少しでも長くものを使えるように修理したりすることも大事です。

私たちと一緒に企業や政府に声をあげて見ませんか?

グリーンピースは、研究者と一緒に、環境問題の原因やその解決策を調査し、影響力のある企業や政府に、気候変動対策の加速を促しています。

気候変動を抑えようと個人で調べたり、日々頑張っているものの、なかなか解決策が見つからないと思う方も多いと思います。

そんな方はぜひ、私たちと一緒に活動しませんか?

グリーンピースに寄付する

グリーンピースは政府や企業からの援助をうけず、独立して環境保護にとりくむ国際NGOです。大切なあなたの寄付が、グリーンピースの明日の活動を支えます。