極端にライフサイクルの短いファストファッションの流行から、石油産業に次ぐ汚染産業になったアパレル産業。近年、ファッションが引き起こす環境問題への関心が高まり、多くの企業が持続可能性における取り組みをアピールするようになりました。

しかし、企業が主張する持続可能な取り組みとは裏腹に、大手ブランドで作られた衣料品の廃棄物が、南半球の国々で環境と人を傷つけていることが最新のグリーンピースの調査で分かりました。

企業が主張する「廃棄物ゼロ」の実態

今日のファストファッションのシステムは、廃棄物問題を南半球の国々に押し付けることにより成り立っています。

グリーンピースの「デトックス・マイ・ファッション」キャンペーンは、この10年間、南半球の水路が有害化学物質で汚染されていることを告発し、サプライチェーンにおける汚染の影響がいかに不均衡に生じているのか示してきました。

今回、グリーンピースUKが運営する環境調査報道機関のUnearthedの調査では、大手ブランドのサプライチェーンにおける「廃棄物ゼロ」と「労働基準」に関する取り組みは、透明性が低く、グリーンウォッシュ以外の何ものでもないと結論づけています。

カンボジアのカンダル州にあるレンガ造りの窯の中にある衣料品廃棄物。

EU内で消費される衣類から生じる環境問題の84.7%がEUの外で起こっており、主にカンボジアを含むアジア・東南アジア地域は強く影響を受けています。

カンボジアでは、ナイキを含む世界的なファッションブランドが衣服や靴を生産する際に発生する衣料廃棄物が、レンガ製造の燃料として焼却されています。大手ブランドの衣類の多くはプラスチック繊維で作られており、燃やされる際に有毒ガスを排出し、労働者の健康に害を与えています。

また、カンボジアでは、新型コロナ感染症の拡大によりブランドが発注を突然取りやめたことにより、工場が閉鎖され、衣類製造の仕事が大きく減りました。この地域では、すでに気候変動による農業や漁業への影響のある労働者も多く、経済的な不安が拡大しています。

そのため、多くの労働者が生き残るために有毒ガスを吸い込む可能性の高い衣類を燃やす仕事に従事したり、借金をするケースが増えています。

洋服の寄付の40%が捨てられる

今年はじめ、グリーンピース・アフリカとグリーンピース・ドイツのチームは、ケニアとタンザニアに調査に向かい、ファストファッションブランドが生産する安価な衣服の多くが、その短い寿命を終えた後、どこに行き着くのかを調査しました。

その結果、東アフリカに輸出されたり、寄付された古着の少なくとも40%が、巨大なゴミ捨て場に捨てられ、燃やされたり、川底に捨てられたり、海に流されていることがわかりました。

グリーンピースは、繊維製品の生産地、流通地、市場、廃棄物処理場などを調査しました。写真は、ナイロビ川。

なぜサプライチェーンにおいて、ここまで廃棄物が多くなってしまうのでしょうか。

要因として、ブランドがサプライヤーに対し、最小限のコストや厳しい納期を設定し、圧力をかけていることが大きく影響していると考えられています。

2017年の調査では、購入した素材の少なくとも25%が廃棄され、一部の工場では持ち込まれた素材の半分近くが廃棄されていることがわかりました。これらの素材は、ほとんどの場合がまだ使用可能なものですが、厳しい納期と最小限のコストを優先するのために、サプライヤーもデザイナーもそれらを有効に活用せず、代わりに他の産業では許容されないレベルの廃棄物を生み出しているのです。

業界はファストファッションから脱却を

プノンペン郊外にある衣料品廃棄物処理場での収集の様子。一部はレンガ製造所に引き取られ、窯の燃料として使用されています。

ファッション業界はファストファッションから脱却し、より高品質で長持ちし、修繕や再利用が可能なデザインで、より少ない衣服を生産する必要があります。

ファッションブランドが、何としてでも新製品を販売することを最優先とする考え方を改め、服を修繕し、再販売し、共有するサービスの提供者になることができれば、貴重な資源と美しい地球を未来の世代のために保護することができます。

2011年3月、グリーンピースはファッションにおける有害化学物質の使用を止めるため、「デトックス・キャンペーン」をスタートしました。排水を調べ、汚染元となっている工場とブランドを特定。その結果をもとに有害化学物質の排出・使用を停止するよう、スポーツ・衣料品ブランドに働きかけてきました。

7年間のキャンペーンにより、アディダス、プーマ、ナイキやバーバリー、ヴァレンティノ、H&M、日本ではユニクロを展開するファースト・リテイリング社など、80の世界的なブランド・小売業者・生地や繊維を供給するサプライヤーが、2020年までに有害化学物質のデトックスを宣言しました。このキャンペーンは、各国の法整備にも影響を与えました。

中国ではより厳しい排水基準が法律で定められ、EUでは有害化学物質NPEsを含む繊維製品の輸入の禁止、繊維製品内の発ガン性物質に対する規制の提案につながっています。(デトックス・キャンペーン報告書『ファッションをデトックスーー有害化学物質ゼロを目指した7年間の歩み』

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