いま以上の気候危機を回避するために、わたしたちは2030年までに温室効果ガスの排出量を半減させる必要があります。
燃料の燃焼による直接的な二酸化炭素排出量の24%を輸送機関が占めており、うち45%が乗用車。このままでは、運輸部門の温室効果ガス排出量は2020年比で90%増加することになります。
自動車は気候変動問題を解決に導く大きな鍵なのです。

自動車メーカーにできること

温室効果ガスの排出を減らして気候変動の悪化を防ぐには、2050年までにすべての自動車の完全な脱炭素化は避けては通れない課題です。

これを実現するため、グリーンピースは自動車業界最大手10社の動向を調査し、昨年11月、ランキング形式で発表しました。

今回の調査は、その第2弾です。

自動車業界はガソリン車(ICE:シリンダー内で燃料を燃焼させる一般的なエンジンで走行する自動車)の廃止を、主要な市場では2030年までに、ヨーロッパなどの市場では、さらに早い2028年までに廃止することが求められます
ガソリン車の販売を終わらせ、バッテリー式電気自動車(ZEV:走行時に排出ガスを出さない電気自動車などのゼロエミッション車)への移行を早急に進めることは、自動車業界にできる気候変動対策の大きな柱のひとつです。

必要な対策をじゅうぶん実施しているメーカーはゼロ

ところが、バッテリー式電気自動車の世界販売台数は205万2,750台(2020年)から459万8,061台(2021年)に増えましたが、世界の自動車販売台数に占める割合はたった5.72%。
2030年までにグローバルな有力自動車メーカーが主要市場(米国、中国、韓国、日本)においてガソリン車の販売を終了するには、あまりにも程遠いのが現状です。

しかも日本メーカーの販売台数はこのうちのわずか1%であり、主要自動車市場の中で最もバッテリー式電気自動車への移行が遅れているのです。

2030年までに温室効果ガスの排出量を半減させて、産業革命以降の地球の平均気温上昇を1.5℃以内に抑えるために、必要な対策をじゅうぶん実施しているメーカーは10社中、ただの1社もないのです。

ランキングの基準

今回グリーンピースは、2021年の販売台数に基づいて選出された世界上位10社、トヨタ、フォルクスワーゲン、ヒョンデ・キア、ステランティス、ゼネラルモーターズ、ホンダ、フォード・モーター、日産、ルノー、メルセデス・ベンツの業績を評価しました。

指標はこの3つ。

比率の理由は、こんな感じです。

  1. ガソリン車のライフサイクルで「タンクから車輪まで(TtW)」の温室効果ガス排出量の占める割合が70〜80%であることから
  2. メーカーの活動に関連する他社の温室効果ガスの排出量が、ガソリン車のライフサイクルにおける炭素排出量の約18%だから
  3. 残りが5%なので資源の節約と効率化の評価とする

<採点表>

100点満点中、1位ですら38.5点というスコアのランキングで、残念ながら、日産もホンダもトヨタも、日本のメーカーは3社とも最低ランクになってしまいました。

しかもバッテリー式電気自動車販売比率のCAGR(年平均成長率)と2021年のバッテリー式電気自動車販売比率がともに世界平均を下回っているのは日産とトヨタの2社だけ。

すなわち、バッテリー式電気自動車への移行速度が世界全体より遅いのは、10社中この2社だけということに…。

ホンダと日産が順位を下げる一方で、フォードはバッテリー式電気自動車販売台数を大幅に伸ばしたことと、ガソリン車の段階的廃止計画の刷新と目標強化、サプライチェーンの脱炭素化で4位を維持しました。

他ではゼネラルモーターズ、メルセデス・ベンツ、ステランティス、フォルクスワーゲンは、2020年から2021年にかけてバッテリー式電気自動車販売台数の割合を2倍以上に伸ばしました。

ヒョンデ・キアは5位に転落。主な要因の一つがSUV車です。ヒョンデ・キアのSUV車の販売台数は2018年の33%から2021年には49%に上昇し、ランクインした自動車メーカーの中で最も高くなりました。国際エネルギー機関(IEA)によると、SUVは中型車よりも平均で1/4以上のエネルギーを消費し、化石燃料の燃焼に依存する鉄鋼も多く使用するのです。これがヒョンデ・キアの二酸化炭素排出量を押し上げることになりました。

トヨタ自動車株主総会でのアクション。2022年6月。

バッテリー式電気自動車は解決策の第一歩

ゼロエミッション車(バッテリー式電気自動車)は走行時に排気ガスを出さないことから、自動車産業の脱炭素化達成には、化石燃料を燃焼するガソリン車からバッテリー式電気自動車への移行は、避けては通れません。ガソリン車よりバッテリー式電気自動車の方が、ライフサイクル全体を通して見ても、温室効果ガスの排出量は圧倒的に少ないのです。

とはいえ、いま走っている自動車を全部バッテリー式電気自動車にすればすべて問題解決、というわけではありません。

自動車産業そのものの温室効果ガスの排出量を無視することができないからです。

たとえば、自動車の原料である鉄鋼やレアアースやリチウムを産出し、運ぶ段階でも、温室効果ガスが排出されます。

自動車を販売する事業でも、温室効果ガスは排出されます。

バッテリー式電気自動車に供給されるエネルギーも、温室効果ガスの排出量などの環境負荷をできるだけ抑えなくてはなりません。
このため、グリーンピースでは、自動車産業に対して、販売台数主体に依存し資源を浪費するのではなく、メンテナンスやアップデート、運輸サービスや移動サービスを主体とした持続可能なビジネスモデルへのバージョンアップを提案しています。

オランダ・ユトレヒトのレンタサイクル。アプリで手軽に利用できる自転車やキックボードの貸し出しサービスが各地で徐々に普及している。

グリーンピースは行動しています

気候変動をくいとめ、より安全な再生可能エネルギーへの転換を実現するため、グリーンピースは実効的な対策を求めて世界中で活動しています。

  • 温室効果ガスを最も多く排出する石炭火力発電の廃止のため、世界中の石炭火力発電に出資している日本の3大メガバンクと話しあい、新規の石炭火力事業への投融資を中止させることができました。
  • 日本の基幹産業である大手自動車メーカーに対し、100%バッテリー式電気自動車に移行し、販売台数ではなく移動サービスの提供を主体とする持続可能な産業へのシフトを提案、対話を続けています。
  • 日本中の自治体に脱炭素政策を実行してもらうための草の根運動を立ち上げ、地元の人たちが自分の手で我が町のエネルギー政策を転換させるように後押ししています。

国際社会と世界中のあらゆる国と自治体と企業に対し、グリーンピースは実現できる気候変動対策を提示し、実現を求めて交渉を続けています。 

是非この活動に、あなたも参加してください。

あなたの「運転」で、
日本のゼロエミッションを
実現させよう