2022年8月は世界中で自然災害が続き、気候変動の影響を多くの人が感じる月となりました。しかし、政府や企業の気候変動対策や生物多様性保護に対するアクションは、依然として足りないままです。

気候や環境を守るための時間がなくなりつつある今、世界の海の健康を守り、企業がプラスチックの使用や炭素排出を削減する大胆な措置をとるための協定が緊急に必要とされています。今月はどのような環境問題解決に向けた進歩があったのでしょうか。

2022年8月、世界各地での環境保護に関する動きやグリーンピースのアドボカシー活動をご紹介します。

グローバル:海洋条約、合意ならず。第6回協議が急がれる。

2022年8月21日、国連海洋に関する世界条約の第5回協議会開催中、グリーンピースは、国連ビル前で「遅滞=破壊(Delay = Destruction)」を訴え、2030年までに海洋の30%を守る世界条約の早期採択を求めるアクションを投じました。

国連海洋条約交渉は、最後の48時間の間に大きな進展があったにもかかわらず、2030年までに海洋保護区を海洋の30%に設置する条約について、合意に達することができず、8 月 26 日に交渉が中断されました。

現段階では次の交渉の予定はなく、海洋に関する世界条約の策定が遅れることで、海洋生態系を救うチャンスを失うことになりかねません。科学者たちの意見では、2030年までに海洋の30%を保護するためには、世界海洋条約を今年中に遅滞なく採択する必要があるそうです。

2022年8月、グリーンピースはソウル森林公園上空で、300機のドローンがクジラやカメ、ペンギンなどの海洋生物の映像になるように配置し、海洋保全の緊急性を訴える「刺繍の海」キャンペーンを実施しました。© Greenpeace / Sungwoo Lee

「海は地球上のすべての生命を支えています。この2週間『自然と人間のための国連』のメンバーたちは、海洋問題の解決に対する野心も緊急性への認識も十分ではありませんでした。他国からの執拗で意図的な妨害もあって、この会議は条約締結に至らず、世界中の何十億もの人々の生活と食糧の安全保障を危険にさらしています」と海洋保護プロジェクトのローラ・メラー氏はコメントしています。 

グリーンピースは、より健康で生産的な未来の地球をまもり、少なくとも30%の海を保護するという2030年の目標を達成するために、2022年までに交渉を完了させるよう国連に働きかけ続けます。

グローバル:オスカー女優エマ・トンプソン、気候変動のため行動を起こす。

2022年5月、オスカー女優のエマ・トンプソンは、ベネチアでの「虹の戦士」のグリーンピースキャンペーンに参加し、EUでの化石燃料の広告やスポンサーシップを禁止する欧州市民イニシアチブ(ECI)を支持して、グリーンウォッシュ反対の看板を掲げた。© Greenpeace / Lorenzo Mosci

グリーンピースEUオフィスは、2021年10月より、欧州市民イニシアチブ(ECI)に賛同する36の非営利団体とともに「#BanFossilAds」活動を開始し、EUにおける化石燃料の広告・スポンサー活動の禁止を呼びかけています。

オスカー女優のエマ・トンプソンは、グリーンピースの気候変動への取り組みを長年支持しています。

今年5月には虹の戦士号で再びベニスでのグリーンピースのアクションに参加し、8月にはメディアに対してECIへの対応を求める活動を行いました。

スウェーデン:海洋保護区での底引き網漁が禁止される。

2022年8月、グリーンピースはスウェーデンのフラデン海洋保護区を訪れ、13年前に投下された岩が、人間の干渉を受けずに多くの海洋生物の住処となっていることを見てきました。© Greenpeace / Oskar Khilborg

2009年、Greenpeace Sea Guardiansは、スウェーデンの2つの保護区(FladenとLilla Middelgrund)周辺の海底に200以上の岩を置き、底引き網漁から保護し、スウェーデンの自然保護区の保護の欠如について欧州委員会に苦情を申し入れる活動を行いました。

13年間のこのようなキャンペーンが実り、スウェーデンでは海洋保護区での底引き網漁の全面禁止が宣言されました。この時、底引き網漁にとどまらず、海洋保護区の半分では全漁業が禁止されることも決まりました。

私たちは、海洋保護区における底引き網漁の全面的な禁止に取り組み続けています。このスウェーデンでの活動は、隣国デンマークがデンマーク海域に海洋保護区を設定することにも影響を与えました。

ロシア: 泥炭地の消火活動に関する推奨事項を記載したハンドブックを発行

グリーンピースロシア事務所は、長年の森林消火活動の経験と専門家の知見を集約し、「泥炭地消火活動アドバイスハンドブック」を作成しました。©グリーンピース

気候変動による干ばつ、熱波、乱開発によって、世界中で森林火災の発生頻度が高まっています。 泥炭地での火災は、数ある森林火災の中でも、濃い有毒な煙と大量の二酸化炭素を発生させる可能性の高い火災です。

グリーンピースは2020年には、専門家や学識経験者とともに「泥炭地火災防止ガイド」を作成し、2022年8月には消化活動のアドバイスが更新される予定です。

台湾:世界初、野生動物のマイクロプラスチック汚染に関する調査報告書を発表

2021年10月19日、グリーンピースのプラスチック削減プロジェクトディレクター、アン・タンは、カワウソの生態学者の指導のもと、ゴム手袋を使ってユーラシアカワウソから遺物のサンプルを採取し、GPSでその場所を記録しました。©グリーンピース

2022年8月23日、グリーンピース台北事務所は、調査報告書「プラスチックからは逃れられない:台湾の保護野生動物および生息地におけるマイクロプラスチック汚染に関する調査」を発表しました。

この調査で、台湾の陸上保全動物の生息地がプラスチックで汚染されていることが確認されました。

玉山国家公園の管理局は、報告書の発表直後から、公園内での休憩ポイントでペットボトル飲料の販売禁止、使い捨て食器の使用禁止、廃棄物削減の推進を厳しく求めています。

8月6日、台北市は12月から使い捨てプラスチックカップの使用を禁止すると発表し、プラスチック削減の課題を報告した最初の自治体となりました。 グリーンピースは、プラスチックのない社会というビジョンを根底から実現するために、使い捨てプラスチック包装の削減の具体的なロードマップを設定するよう、政府に働きかけ続けていきます。

海洋に関する世界条約の交渉が再び決裂したことは悲しいことですが、サポーターの皆さまの揺るぎないご支援により、台湾やスウェーデンをはじめ世界中で複数の環境マイルストーンを達成しつつあります。

あなたも、寄付で活動に協力していただけませんか?

来月もまた、世界中の環境保護活動の成果をお伝えできることを楽しみにしています。

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