仕事の休憩時間やお買い物中、ひと息つくために手に取るカフェのドリンク。いつでもどこでも美味しいコーヒーを注文し、持ち運べる使い捨てカップの手軽さは、あっという間に私たちの生活に広がりました。

今や、1杯のコーヒーを飲むためだけにプラスチックや紙のカップを使うこと、そして飲み終わればそれをポイッと捨ててしまうことが、多くの人々にとって当たり前になっています。

しかし、こうした生活スタイルの変化は地球環境の変化にも繋がっているのではないでしょうか。グリーンピースの新しい調査レポートから、使い捨てコーヒーカップの現状や環境への影響について紐解いてみます。
1回使うだけで捨てられてしまう使い捨てコーヒーカップとふた、マドラー

ドリンクカップの使い捨て、続けていて問題ない?

外出時や会社の休憩など、空いた時間にカフェに足を運ぶ人はとても多く、昨今の日本では、そんな時にドリンクを飲むため、驚くほど多くの使い捨てカップが使われています。

使い捨てカップによる飲み物の持ち運びは私たちの生活にしっかりと根づき、今や文化と言えるほどになりました。

環境への配慮から、マイカップやマイタンブラー、マイボトルを積極的に使用しようとする個人の動きはありますが、日本ではカフェを経営する大企業における、リユースの取り組みは十分ではありません。そして、タンブラーを持ち歩く人が増えているとはいえ、その人数も限られています。

また、グリーンピースの調査で、一部の大手チェーンでは店内利用でも多くの使い捨てカップが消費されていることが分かりました。企業の姿勢が使い捨てカップの削減にブレーキをかけてしまっているのが現状です。

しかし一方で、海外に目を向けてみると、リユースのシステムを取り入れる方向へと舵を切る国や企業の数は確実に増えています

2021年には韓国、ヨーロッパ、中東、アフリカ地域のスターバックスコーヒーで、2025年を目途に、繰り返し使えるデポジット式リユースカップなどの導入により、使い捨てカップからリユースに切り替えることが発表されています*

2022年の4月には、台湾でマイカップ持参者への値引きや、返却式リユースカップでの飲料提供などを政策として義務化する方針が発表されました*

日本ではなかなか進まない「使い捨て」からリユースへの切り替えですが、海外でこのような決断がなされているのは、使い捨てコーヒーカップが環境に与える影響が大きいからに他なりません。

使い捨てコーヒーカップの実態と影響

それでは、使い捨てカップは実際にどれくらい使われ、どの程度環境に影響を及ぼしているのでしょうか

調査に基づいたデータ*から、使い捨てられたコーヒーカップの実態と地球環境への影響をみてみましょう。

膨大な量のごみ

各国からプラスチック廃棄物を受け入れるマレーシアの施設ではシステムが破綻し、健康被害に繋がる状況となっている。2018年の1月から7月の間だけで日本からも含む75万4000トンものプラスチックが輸入された(2018年10月)

日本では、カフェ業界だけで、現在1時間に約9万1,000個という驚くべきペースで使い捨てカップがごみにされています。

これは年間にすると8億個にも上り、うち4億4,000万個がプラスチックカップ、3億6,000万個が紙カップです。

貴重な資源の消費

シェル社が運営する石油プラットフォーム。グリーンピースのエスペランザ号が石油ガス産業の海洋汚染、気候変動への加担に抗議をしている(2020年8月)

使い捨てカップを製造するために、多くの資源が使われています。

プラスチックカップは化石燃料を原料とし、製造にはそれ以外にも大量の化学物質、エネルギー、水を消費します。

紙カップもまた、製造のために膨大な量の木と水を必要とします。さらに、紙カップは技術的にはリサイクル可能ですが、実際には非常に困難で、日本ではほとんどがリサイクルされずに焼却されています。

当然のことですが、一度燃やされてしまえばカップのために使われた貴重な資源は二度と戻りません。

CO2の排出

オーストリア、アルプスの氷河。この100年間で50%もの氷が失われた。雪が降る時期がかなり遅くなったために、氷として定着する前に溶けた雪解け水が氷河自体の融解を引き起こしている(2020年8月)

紙であってもプラスチックであっても、使い捨てコーヒーカップがごみとして焼却される際にはCO2が排出されます。また、紙やプラスチックカップは焼却の際だけでなく、原料採掘・伐採、生産、廃棄など、すべての段階でCO2を排出します。

膨大な量のカップが使い捨てられているため、排出されるCO2の量もそれに比例し、気候変動に影響を与えます。

海洋汚染とマイクロプラスチック

バリ島のチャングービーチ。使い捨てカップが多く流れ着いているのがわかる(2021年12月)

使い捨てのプラスチックカップとそのふたは、世界各地の海岸で見つかるごみのトップ10に含まれます。

そして、海に流れ込んだカップは、基本的に自然には還らず、海中で細かくなってマイクロプラスチックとなり、海洋生物を脅かします。

マイクロプラスチックは食物連鎖によって人間の身体にも取り込まれ、その健康への影響は、多くの研究者が警鐘を鳴らしています*

大手チェーンだけで1日100万個の使い捨てカップ

一杯のドリンクのためにカップを使い捨てることで、大量のごみを出し、貴重な資源を無駄にし、気候変動に影響を与え、綺麗な海を犠牲にしてしまっているのです。

使い捨てコーヒーカップは、持続可能でないどころか、地球の環境破壊を加速させる習慣なのです。

グリーンピースの最新調査の結果、このように大量のコーヒーカップが使い捨てされている現状に、大手カフェチェーンの営業スタイルが大きく加担していることが明らかとなりました。グリーンピースが調べた9社のカフェチェーンだけで、毎日100万個以上、年間3億6,950万個もの使い捨てカップが消費されていることがわかったのです。

これは重量にすると総数2,808.8トン、積み上げればスカイツリー6万本にもなる膨大な量。これほど多量のカップが一度使われたきり、ごみとして燃やされたということになります。

さらに注目したいのは、スターバックスコーヒーをはじめ、使い捨てカップの消費量トップ3となったチェーンでは、テイクアウトだけでなく、店内でのドリンク提供にも多くの使い捨てカップが使われていたこと。

もしも、今回調査した9チェーンで、店内で飲まれるドリンクだけでもマグやグラスで提供されるようになれば、1億5,860万個の使い捨てカップ、1,220トンものごみを削減できると考えられます。

店内で主にマグやグラスを使っているチェーンでは、使い捨てカップの全体使用量が抑えられていることもわかっています。例えば、ドトールコーヒーショップでは年間に、タリーズやプロントよりも多い9,850万個の飲み物を販売していますが、その77%がリユースできる容器で提供されたため、使い捨てカップの消費量はタリーズやプロントよりも少なく済んでいました

テイクアウトでも、すでにソリューションは存在します。

もちろんタンブラー持ち込み率を引き上げることも大事ですが、それでもタンブラーを普段持ち歩いていない大多数の人たちに向けて、お店側がリユースカップを貸し出すシェアリングの仕組みです。一部で実証実験が始まっていますが、特にテイクアウト率の高いスターバックスやタリーズなどではいち早く全国規模に展開することが求められます

コーヒーをもっと楽しむためにリユースへ

グリーンピースは「カフェのコーヒーが好きだから、環境に優しく変わってほしい」という消費者の声を集めて企業へ届けるために、使い捨てカップの消費量が多かった大手カフェチェーン、スターバックスコーヒージャパン、タリーズコーヒー、プロントの3社に向けて、使い捨てシステムからの脱却を求めた署名「1日100万個の使い捨てコーヒーカップをなくしたい」を始めています。

要望の内容はこの3つです。

  1. 「ごみの量を把握・公開して、野心的な削減目標を立てること」
  2. 「店内でマグやグラスを使うこと」
  3. 「テイクアウトでマイカップの持ち込み率を高め、同時に返却式リユースカップを導入すること」

現在、リユースへの切り替えにおいて遅れを取っている日本でも、消費者からの声でカフェ業界を牽引するチェーンを後押しし、「使い捨て」から持続可能なリユースへ、変化を起こしましょう

1日100万個の
使い捨てコーヒーカップ
をなくしたい


グリーンピースは、活動に賛同して寄せられる皆様からの寄付によって、政府や企業から財政的な支援を受けずに活動を続けることができています。署名「1日100万個の使い捨てコーヒーカップをなくしたいのように、企業に変化を求める取り組みにおいて、独立性は非常に大きな意味を持ちます。

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調査報告書「日本のカフェ業界における使い捨てカップの現状」