グリーンピースは、ウクライナ政府の承認を得て、ウクライナ立入禁止区域管理局の協力のもと、チョルノービリ(チェルノブイリ)原発から30キロ以内の立入禁止区域内にある、ロシア軍の占領地域跡の放射能汚染調査を開始しました。ロシア軍による侵攻が始まってから、独立した調査が行われるのは初めてです。

グリーンピースの調査によって、ロシア軍によるチョルノービリ原発占拠の影響やこれから起こりうることについて、信頼できるデータをウクライナと周辺地域の人々に提供したいと考えています。
事故発生から25年となる2011年に、チョルノービリ原発で放射能汚染調査をするグリーンピースの核問題スペシャリスト(2011年3月)

チョルノービリ原発:軍事占領の影響は

ロシア軍は今年2月、ウクライナへの武力攻撃を開始しました。同24日にロシア軍は、大量の放射性物質が充満しメルトダウンを起こした放射性核燃料が残されたままのチョルノービリ(チェルノブイリ)原発を掌握、続いて稼働中のザポリージャ原発と南ウクライナ原発も管理下に置きました。

武力攻撃によって原子力の脅威が浮き彫りになり、人類が今でも原子力の脅威に晒され続けているという現実に、ウクライナの人々だけでなく世界中が改めて直面しました。

独立した立場から、信頼できる情報を届ける

グリーンピースの原子力チームとウクライナ政府は、ロシア軍によるチョルノービリ原発とザポリージャ原発への攻撃と奪取がもたらすリスクについて、継続的にコミュニケーションをとってきました。

今回の調査ではロシア軍によるチョルノービリ原発の掌握と占領の影響を調査することを目的にしています。

ロシア軍によるチョルノービリ原発の占領は3月31日に終了しましたが、ロシア軍の占領がもたらした影響を一刻も早く把握し、適切な対策を行うことが必要で、そのためには国際社会がウクライナ国家立入禁止区域管理局をできる限り支援することが重要です。

チョルノービリ原発の敷地は2,600平方キロメートルと広大ですが、今回グリーンピースは、原発から30キロ以内の立入禁止区域内にある、ロシア軍が占領した特定の場所で、調査します。

グリーンピースの独立した調査によって、チョルノービリの放射線状況について、信頼できるデータをウクライナや周辺地域の人々に提供したいと考えています。

7月20日に、キーウ(キエフ)からの記者会見で、速報を報告する予定です。

チョルノービリと福島で放射能汚染調査の経験を積んだチーム

1986年4月26日にチョルノービリ原発事故が発生してから、グリーンピースは、36年にわたり、原発事故で深刻に汚染されたウクライナ、ロシア、ベラルーシで放射能汚染調査を実施し、人々の健康や環境への影響に関して報告書を発表してきました。

グリーンピースがキーウ(キエフ)に設置した臨床検査室で、血液検査を受けるウクライナの子ども(1991年2月)

グリーンピースはその後、2011年に東京電力福島第一原発事故が発生した際も、チョルノービリ原発事故での経験を活かして2週間後に現地入りし、放射能汚染調査を開始しました。

2011年3月26日、グリーンピースは東京電力福島第一原発事故による放射能汚染を独立した立場から調査するため、福島県内で調査を開始した。写真は浪江町での放射線モニタリング。

今回現地入りする14人のチームは、放射線・核問題の専門家、ロジスティック担当、通訳、フォト・ビデオグラファー、救急隊員などからなる国際チームです。東京電力福島原発事故の調査にも継続的に関わっているシニア核問題スペシャリストのショーン・バーニーと、放射線防護アドバイザーのヤン・ヴァンダ・プッタも参加しています。

2011年4月、グリーンピースによる福島県内での放射能汚染調査の結果を記者会見で発表する放射線防護アドバイザーのヤン・ヴァンダ・プッタ(2011年4月)

グリーンピースの強みは、こうした活動が全て、世界300万人を超える個人の寄付サポーターの力で成り立っていることです。いかなる政府や企業からも干渉されずに、独立の立場から調査を行い、結果を発表することができます。

グリーンピースの
調査活動を寄付でサポートする

調査実施に向けて、チョルノービリへの移動や調査活動の危険性について、安全保障や放射性防護の観点から、慎重な検討を重ねました。医療面でも十分なサポートが受けられる体制を整えています。現地では、状況を把握・評価できる当局の代表者が同行し、国外のグリーンピースのサポートチームからは、戦争や治安状況、放射線問題などに関する情報が24時間提供されます。

原発が存在する限りつきまとう放射能汚染

日本では、福島原発事故後の廃炉の目処がたたず、100万トン以上溜まり続ける放射能汚染水問題も解決できていないにもかかわらず、岸田文雄首相が7月14日に、9基の原発を再稼働させることを指示しました*

チョルノービリ原発事故が起きた時、当時の原子力産業は、事故の原因はソ連の設計技術であり、西洋諸国の原子炉では事故は起こりえないと主張しました。しかし、その25年後、東京電力福島第一原発の3基がメルトダウンを起こしました。

チョルノービリ原発事故と福島第一原発事故の2つの悲劇からの教訓は、原発を使い続ける限り、次の事故はいつ起きてもおかしくないということです。

日本政府は温暖化対策として、2030年までに原発によって電気の20%程度を発電するとしています。日本の原発の多くは稼働開始から40年以上経過している老朽原発。事故のリスクは高まります。

東京電力福島第一原発事故を経験した私たちができること。それは日本で原発をゼロにし、再生可能エネルギー100%で温暖化対策するという意志を世界に発信することではないでしょうか。

原発事故前、54基の原発が稼働していましたが、2022年7月現在、稼働しているのは5基です*。それは日本各地で、福島第一原発事故の責任を国や東京電力に問い続け、地元の原発の再稼働へ反対の声を上げ続けてきた人たちの成果です。

今日、あなたも一緒に声を上げてください。

【署名】原発のない世界を
日本から実現したい

※グリーンピースでは、外務省が一部地名の日本語呼称を現地語発音に変更したことに伴い、表記を変更しています

プレスリリース:グリーンピース チョルノービリで放射線調査実施、IAEAのデータ検証へ