熱が上がり続ける「ちきゅうさん」が、病院で処方された薬は、「原発薬」!? しかしこの薬は、10万年も保管が必要な核のごみを出し、事故のリスクが高く、維持と安全対策にお金がかかり、結果的にCO2削減にならない、というとても厄介な薬だったのです…。地球温暖化対策を調べたり考えたりすると難しいことがたくさん出てきますが、このアニメでわかりやすく学べます。

まずはアニメをご覧ください!

ちきゅうさんがお薬を探している理由とは?

地球は、すでに化石燃料が燃やされるようになった産業革命から、1.1℃も平均気温が上昇しています。主な要因は、石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料を燃やすこと。

人間の活動によって地球が温暖化していることは間違いないと、専門研究機関のIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)が科学的な根拠をもとに分析し、発表しています。

ちきゅうさんに処方された「原発薬」とは?

原子力発電(原発)は、日本では1960年代から使われる発電方法です。日本には2011年3月11日まで、54基の原発があり、電力の30%程度を原発で発電していました。2022年6月22日現在、日本で稼働している原発は4基です*

発電時にCO2の排出が少ないために、日本政府は原発を温暖化対策として、稼働を増やそうとしています。

2011年の原発事故まで54基あった原発は、現在では多くが廃止(または廃止措置中)。運転している原発も、稼働と停止を繰り返している。写真は福井県にある関西電力高浜原発(2016年3月)

「原発薬」を使い続けると危険なごみが出る

しかし、原発には「副作用」があったのです。

燃料のウランは、使い終わると使用済み核燃料になります。この高レベル放射性廃棄物が、人体に安全と言えるレベルになるには、10万年かかります。現代の人類がどうなっているかもわからない10万年後まで、どうやってこの核のごみを安全に保管しておくことができるでしょうか?

海上輸送される核のごみ。ウランは、採掘から最終処理までどの工程でもリスクが生じる(2015年12月)

「原発薬」の燃料は、事故リスクが高い

原発は、燃料のウランを核分裂させたエネルギーで水を沸かし、その蒸気の力でタービンを回転させて電気を起こします。核燃料はとても高いエネルギーを持っているので、常に水で冷やし続けなければいけません。稼働後も、数年間は水を循環させて冷さなければいけません。

2011年に東日本大震災の津波で電源を失い、燃料を冷却できなくなって爆発したのが、東京電力福島第一原発です。

地震や津波だけでなく、火山噴火や火災、気候変動で増えている豪雨災害も、複雑な構造の原発には脅威です。さらに、原発はテロや戦争の攻撃の標的になることもあります。

「原発薬」を使ってもCO2が出る理由とは?

原発はトラブルが多く、長期間使えなくなることがあります。そうなると、火力発電で補わなければなりません

また、新しい原発を作るのには何十年もかかり、その間も火力発電で補わなければなりません。

フランス企業が運営するニジェールのウラニウム採掘場(2009年11月)

「原発薬」はお金もかかる!

原発は、地震や津波、火山噴火などの自然災害や、火災に備えて安全対策をします。2022年1月現在、原発を所有する11社(東京電力や関西電力など)による安全対策の支払済・今後の見込み額の合計は、5.7兆円。さらに、現在は稼働していない原発も含めて、維持費に、年間1.6兆円もかかっています。

このお金は、これらの電力会社と契約している人の電気代で支払われています。

原発は停止中でも維持費がかかり、全国で年間1.6兆円かかる。写真は、現在停止中の東京電力柏崎刈羽原発(2007年7月)

ちきゅうさんの熱を治せる他の薬がある

地球温暖化対策は、燃料が必要なく、CO2を出さない再生可能エネルギーの方が適切です。

使用地から離れた場所で大量に発電して各地に送電する大規模集中型の原発と違い、再生可能エネルギーは、各地域で得られる風や太陽光を利用して電気を地産地消できる自立分散型です。大規模停電のリスクを回避し、送電中の電気のロスを防ぐことができ、災害にあっても被害は小さく、復旧も早くなります。

何より、風力や太陽光は無料で無限の国産資源なので、燃料を輸入したり、各国で奪い合って争うこともありません。

建物の断熱性能を上げたり、節電タイプの設備に変えたりして、エネルギー需要を減らせば、日本でも再生可能エネルギー100%で電気をまかなうことができます

畑の上にソーラーパネルを設置して、畑作と発電を両立させるソーラーシェアリングは日本発祥。日本でも、効果的な節電で需要を減らし、再生可能エネルギー100%で電気をまかなうことが可能(2018年3月)

原発のない世界を日本から

東京電力柏崎刈羽原発前の「ちきゅうさん」とグリーンピース(2022年3月)

「ちきゅうさん」のアニメで、原発が温暖化対策にはならない理由がお分かりいただけたでしょうか?

グリーンピースは、2011年から毎年、東京電力福島第一原発事故による放射能汚染の現状を、現地調査でモニタリングしてきました。いくら除染をしても、福島県の7割を占め、除染が不可能な森から放射性物質が台風や雨で流れ出し、再汚染が進んでいるということが、継続的な調査からわかっています。

こうした継続的な現地調査から明らかになった事実をもとに、事故のリスクがあまりにも大きい原発ではなく、再生可能エネルギー100%で気候変動対策することが必要だと、政府や自治体へ働きかけをおこなっています。

また、「ゼロエミッションを実現する会」では、全国で30以上の自治体で、自分たちが暮らす街でゼロエミッションを実現するために自治体へ働きかける市民をサポートし、草の根から再生可能エネルギー100%を築きあげる活動をしています。

再生可能エネルギーからの調達が増えれば増えるほど、原発の居場所がどこにもなくなるからです。

現地調査、報告書の発表、メディアへの情報発信、政府や自治体への働きかけ、市民による活動のサポートなどのこうした活動はすべて、一人ひとりの寄付サポーターの力で支えられています。原発を使わず、再生可能エネルギー100%の未来を実現するために、ぜひご寄付で活動を支えてください。

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