今年1月初め、欧州委員会が、原子力と天然ガスについて「脱炭素化に貢献する『グリーン』な投資対象」と提示したという報道がありました。

グリーンピースはただちにこの判断について調査を始めました。
その結果、ロシアのエネルギー企業であるガスプロム・ルコイル・ロスアトムが欧州委員会にはたらきかけ、原子力と天然ガスを持続可能な投資分類に含めるように仕向けたことが判明したのです。

ロシアの天然ガスや原発関連企業が大儲けするためのロビー活動

グリーンピース調査報告書:how Russian companies lobbied for the eu taxonomy to include fossil gas & nuclear energy

欧州委員会は、2018年3月に持続可能な金融に関する行動計画を発表しています。
今回の調査では、それ以来、ロシアのエネルギー企業が欧州委員会の委員や幹部に、直接、もしくは子会社やロビー団体を通じて、少なくとも18回も面会していることがわかりました。

報告書によれば、この欧州委員会の提示によって、ロシアは年間およそ5725億円、2030年までに合計4兆5800億円以上、ヨーロッパで今後20年間に見込まれる推定71兆円もの投資から、相当な割合の資金を得るものと思われます。

ロシアは現在、ヨーロッパの天然ガスの45%、濃縮ウランの20%を供給しています。そして中・東欧を中心とする欧州連合域内の原子力発電所18基の技術保守サービスを提供、フランス、ドイツ、ブルガリアなどで発生した廃棄物を含むEU域内の膨大な量の放射性廃棄物を貯蔵しています。

原発や天然ガスを「クリーン」にするロビー活動

報告書では、ロシア企業のロビー活動の具体例も紹介しています。

欧州委員会が催していたグリーンな投資先の分類法の議論に、ガスプロムが影響を与えるために行ったロビー活動は、主にドイツの子会社とさまざまな業界のロビー団体によって行われました。ガスプロムは、欧州委員会の重要人物と非公開で税制に関わる集まりを催している、ヨーロッパのエネルギー業界団体にも加盟しています。

ルコイルは2022年3月まで「ビジネスヨーロッパ」のメンバーでした。
ビジネスヨーロッパは欧州連合各国の産業界の協調を調整する団体です。ルコイルはその企業諮問・支援グループで影響力のあるポジションを占めていました。
ビジネスヨーロッパは、欧州委員会当局者と少なくとも11回のハイレベルな会合をしています。

ロスアトムは、ヨーロッパの原子力産業のあらゆるレベルで深いコネクションを築いています。そして、世界原子力協会の理事として、EUエネルギーコミッショナーのカドリ・シムソンが基調講演を行った2021年世界原子力展示会のスポンサーとして、持続可能な投資分類に大きな影響力を行使していました。

これからどうなる

Fridays For Future(*気候危機対策を求める世界の若者たちのグループ)の気候アクティビストは、2022年5月21日に天然ガスと原子力のグリーンウォッシングに抗議するよう呼びかけました。

Fridays For Futureのマーチ。2021年、イギリス・グラスゴー。

7月上旬、欧州議会の経済・通貨委員会と環境・公衆衛生・食品安全委員会の合同会議で、天然ガスと原子力を「脱炭素化に貢献する『グリーン』な投資対象」の分類に含めるかどうかが採決される予定です。
そこでは、欧州議会議員の絶対多数が、欧州委員会の計画を拒否することができます。

グリーンピースは、2019年以来、天然ガスと原子力のグリーンウォッシングに反対するキャンペーンを展開してきました。

ロシアの石油・天然ガス・石炭・ウランを、他の国の同じ資源で埋め合わせるのでは、温室効果ガス排出量削減政策を遅らせ、気候危機が加速するだけです。

真の「エネルギー改革」の達成には、再生可能エネルギーの導入・推進だけでなく、省エネルギー、蓄電、住宅断熱などによるエネルギーの高効率化への公正な投資と、運輸部門の完全な変革が必要不可欠なのです。

【署名】原発のない世界を
日本から実現したい

誰かの犠牲で成り立つ原発を気候変動対策にしないでください
あなたの「運転」で、日本をゼロエミッションに導こう!