昨年の4月、東電福島第一原発の敷地内に貯留している放射能汚染水を、海洋放出で処分すると決めた日本政府。膨大な量の放射性物質を海にばら撒くことになるこの決定に、国内だけでなく世界中から批判が集まっています。いま、政府はこの計画に対する皆さんの声を募集中。ブログを読んで、提出してみましょう。

「このままでは県民が『加害者』になってしまう」

4月25日、地元自治体も政府さえも何も承認しないまま、東京電力は放射能汚染水の海洋放出施設の準備を始めました。
グリーンピースは福島県の方々を中心として、放射能汚染水の海洋放出に反対する市民グループの皆さんとともに、5月13日に東京電力本社と原子力規制委員会に、5月25日に東京電力復興本社福島分室と福島県庁に、海洋放出を止めること、施設の設置計画を承認しないことを求めて、要望書を提出しました。

東電に要望書を渡す「これ以上海を汚すな!市民会議」共同代表の織田さん。

筆者は25日に福島での行動に参加させていただきました。
福島県庁では行動に参加した多くの方々の真摯なお声をお聞きし、これはどうしても、海をまもりたいと願う皆さまにお知らせしないとと思いました。

昨年の決定まで、政府も東電も他の解決方法を検討することもなく、「海洋放出」という結論ありきで強引に進めてきたことに対する地域の皆さんの憤りは当然のことですが、決めてしまった後も、汚染水を減らすために具体的にどのようなとりくみを行っているのか、「処理水」は安全だというならその根拠は、市民が求める情報が公に共有されていません。

また、この決定について「理解を求めていく」と言葉ではいっておきながら、誰もが参加できる形での説明会は行われていません(観光業など一部の人を招いた非公開の説明会は実施されているそうです)。

福島県庁前。2022年5月25日。

たとえば漁業者の方々には、風評被害をなくすよう努めます、被害があったら補償をしますといっていますが、そういう問題じゃないんです、という声もありました。

「風評被害だけ心配してるみたいにいわれるのはおかしい。補償ってお金を積めばいいって問題じゃない」
「『生業』がたちいかなくなるということが、いったいどういうことなのか、東電と政府は問題を履き違えているのではないですか」

「汚染水が海に放出されたら、子どもたち未来の世代にも、世界中の海にも、被害が拡散されてしまう。
そうなれば、福島県民が『加害者』になってしまうんです」

福島県内の7割の自治体議会が、海洋放出には反対、もしくは慎重な判断をと表明しています。
まず県には、このままなし崩し的に海洋放出施設の建設許可を安易に承認しない、県民の立場に立った判断が求められています。

グリーンピースはこんな意見を提出します

原子力規制委委員会は現在、東電の海洋放出設備の設置案に対するパブリックコメントを募集しています。

ここから提出できます。締め切りは6月17日(金)。

グリーンピースで出す意見をざっくりまとめましたので、よかったら参考にしてください。

  • 汚染水の量は現段階で 130 万トンに達し、日々増え続けている。グリーンピースの試算では今後30年間で、さらに130万トンの汚染水が発生する。海洋放出は福島第一原発の多くの深刻な問題を解決するものではない。
  • 福島だけでなく日本中の多くの人が、2011年のメルトダウンですでに深刻な影響を受けている。国会事故調査委員会は、この事故を「人災」と表現している。汚染水の海洋放出も人災。でも今回は防ぐことができる。
  • 国連の人権特別報告者は、日本政府に対し、汚染水の海洋放出は福島および日本国内の子どもや大人の人権を侵害するものであると繰り返し述べている。
  • 太平洋の島々や市民社会、政府が汚染水の海洋放出に反対している。
    20世紀後半、太平洋とそこに住む人々と環境は、アメリカ、フランス、イギリスによる何千回もの核実験や、日本との間の船舶や核輸送による核廃棄物の投棄など、核汚染と核の脅威にさらされてきた。
  • 汚染水の海洋放出について包括的な環境影響評価は実施されておらず、またその予定もない。これは国連海洋法条約(UNCLOS)の下での日本の法的義務である。日本政府も国際原子力機関(IAEA)も、なぜこれが行われていないのか説明していない。
    炭素14、ストロンチウム90、プルトニウムなど、汚染水に含まれる多くの放射性物質の拡散についての評価はなされていない。また、トリチウムが海洋生物や人間のDNAにどのような影響を与えるか、放射性物質によって異なる濃度や生物学的蓄積の速度も無視されている。
  • 放射能汚染水を長期的に陸上保管するために必要なスペースは確保できる。
    廃炉計画は今後数十年で達成できないので、地下水汚染問題には終わりがない。
  • 汚染水の海洋放出で福島第一原発事故の問題を解決しているという誤った印象を与えることは、日本国民に原子力のリスクと結果を忘れさせようとするものではないか。

よかったら過去のブログも参考にしてください。

誰も知らない「廃炉」のゴール
「海洋放出をやめてください」ー太平洋の人々の声
4月に決まった海洋放出。放射能汚染水のその後

変化は起こせる

5月31日、札幌地裁は北海道電力・泊原子力発電所の安全性が争われた裁判で、札幌地方裁判所は「津波に対する安全性の基準を満たしていない」として、運転を認めない判決を言い渡しました。*

11年前の事故当時、日本には54基の原発がありました。
いまは、34基まで減っています。
うち、2022年6月1日現在、稼働しているのはたった4基。

原発は危険だ、やめなくては、と声を上げ、行動してきた人々の力は、着実に日本を脱原発に導いています。

でも、自ら声を届けなければ、「子どもたち未来の世代に負の遺産をこれ以上残したくない」「もう2度と放射能汚染を引き起こしてはならない」と思うあなたの気持ちは、どこにいくでしょうか。
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NHK 2022年5月31日 北海道電力 泊原発運転認めない判決 廃炉は命じず 札幌地裁