2021年秋、某日。SIRUPさんとShin Sakiuraさんが国際環境NGOグリーンピース・ジャパンとの共同プロジェクト「Nature Sound Project」の楽曲制作のために降り立ったのは、長野県大町市。

西は富山県、北はウィンタースポーツで有名な白馬村と隣接する地域です。東京からは特急で新宿から約2時間半、標高3,000m級の山々が連なる北アルプスのふもとに位置し、周辺には川や、「仁科三湖」とよばれる3つの湖もあります。山も川も湖もあって、自然を満喫するにはまさにもってこいの場所。豊かな水資源に恵まれ、古くから農業や稲作が盛んな地域でもあり、りんごといえばお馴染みの「ふじ」もこの地域の名産品です。

SIRUPさんとShin Sakiuraさんには2日間、大町市周辺のさまざまなスポットを巡ってもらい、フィールドレコーディングを通じて多種多様な自然の音を採集してもらいました。ドキュメンタリー映像にはのせきれなかった、制作の裏側を本記事ではじっくりレポートします!

Photo:haruta(@harutaaaaaaa

風にそよぐ草木、鳥、水の音。生きものの音にマイクを傾ける

お二人がまず向かったのは、大町市内にある「唐花見湿原」。カラマツやスギなどの針葉樹やコナラなどの雑木林と畑地で囲まれた低層湿原で、水にすむ生きものやトンボが多く見られ、特に秋は美しい光景が広がるスポットです。

風になびいてこすれる草木音や、遠くに聞こえる鳥の声にSIRUPさんとShin Sakiuraさんはマイクを傾けていました。

100年以上続くりんご農園を散策。木からもいで食べるりんごは格別だった!

唐花見湿原を後にして向かったのは大町市内にある果樹園「小澤果樹園」。現在代表を務める小澤浩太さんが4代目で、100年以上続く歴史ある樹園です。

楽曲制作のヒントを得るために、ここでは長年自然を相手に活動してきた小澤さんに、りんご農業や気候変動によって起きている変化についてお話を伺いながら、農園全体をめぐりました。

お二人は特別に、木になっているりんごをその場でもいで味見。ほどよい酸味の残るりんごに「うまい!」と声を上げていました。

気温9℃!山々の壮大な風景をバックに、流れる川の音を採集

大町市の中心部から少し離れて、やってきたのは一級河川の松川がある白馬大橋。川下の方角には大きな山々が広がり、水が勢いよく流れる音も合わさって自然を体感できるスポットになっています。川辺に立った二人の姿も、この圧倒的な光景の中ではちっぽけに感じられるほど。

川辺ということもあって、この時の気温は10月ながら9℃!寒さがこたえる現場でしたが、SIRUPさんとShin Sakiuraさんは水の音や石の音を楽しみながら採集していました。

ふかふかの腐葉土にときめく。ふか〜い森の中で、未来に想いを馳せる。

最後に訪れたのは、国営アルプスあづみの公園。長野県北西部の安曇野エリアにあり、総面積は300ヘクタールを超える広大な国営公園です。春夏は草花の鑑賞や川遊び、秋冬は紅葉や雪遊びを楽しむこともでき、1年を通してさまざまな自然にふれられるスポットとなっています。

今回は特別に許可をいただき、普段は入ることのできないエリアでレコーディングや撮影を行いました。ほとんど人の手で管理をしていないエリアでは、地面が腐葉土になっていてふっかふか。小さい頃にカブトムシを飼っていたときを思い出させるような、なんともいえないいい匂いに包まれていて、アーティストの二人も「めっちゃいいにおい…!」と深呼吸する場面もありました。

森からの帰り道、滞在を通して自らが圧倒的な自然環境の中にいることに気付かされたと話すSIRUPさんとShin Sakiuraさん。

SIRUPさんは「自分がこれからどうなるかだけではなくて、全体がどうなって、その中で自分がどうあるべきか。そういう大きな考え方ができた気がする」、Shin Sakiuraさんも「コロナ禍になって、東京に住む意味とか音楽の仕事をする意味をたくさん考えるようになったけど、その答えになるような出会いがたくさんあった」と語りました。

スペシャルレポート後編でお送りするのは、SIRUPさんとShin Sakiuraさん、小澤果樹園代表の小澤さんのスペシャルインタビューの模様。ドキュメンタリーにはおさまりきらなかった、3人のトークの模様をぎゅっと詰め込んでお届けします。キーワードは「次世代にバトンをつなぐ」。どんなアツいトークが繰り広げられたのか、続きはこちらから!