いよいよ花粉症の季節。今年は、東海、北陸、関東甲信、北海道で花粉の飛散量が前シーズンより非常に多くなる見込みです。* 

去年は症状が弱かった方も、よりしっかりとした花粉症対策が必要かもしれません。

実は花粉症は気候変動で深刻化すると指摘されています。どうして気候変動で花粉症が悪化するのでしょうか?気候変動が健康に与える影響も合わせて見ていきましょう。

花粉の飛散量、飛散期間が延びる

2021年にアメリカの学術誌「PNAS」に発表された論文では、米ユタ大学の生物学准教授ウィリアム・アンデレッグ氏が、花粉飛散の時期が気候変動によって長期化し、花粉の数や濃度も増えている結果を指摘しています*

北米で行われた調査では、花粉シーズンが始まる時期は20日ほど早くなり飛散日数は8日間も長くなっていました

また花粉の個数や濃度は、年間を通して20.9%も増加。花粉の飛散量が気候変動と共に増えることで、花粉症は悪化する可能性があります。*

花粉濃度は気温と相関していることは数多くの実験で確かめられています。今後、温暖化で気温が上昇し、冬は短く、暖かい時期が長くなることで花粉症シーズンは深刻化してしまうかもしれません。

気候変動は他にも健康への影響をもたらす

スマトラ島ドゥマイ市で大規模な森林火災による大気汚染から身を守るためにマスクを着用すしている女性(2013年6月)

気候変動の影響は花粉症に止まりません。気候変動による気温上昇は熱中症リスクや暑熱による死亡リスク、その他の呼吸器系疾患などの様々な疾患リスクを増加させます。

2021年に国連から発表された「気候変動と健康に関するファクトシート」では健康に関して以下のように記しています。

1. 気候変動は、人類が直面する単一の健康に対する脅威としては最大のものです。毎年、環境要因によって約 1,300 万人の命が奪われています。気候変動の影響は、大気汚染、疫病、異常気象、強制移住、食料不安、精神的な圧迫など、すでに健康に害を及ぼしています。

2. パリ協定の目標を達成すれば、大気汚染の削減だけで、2050年までに世界で年間約 100 万人の命を救うことができます。 

3. CO2排出量の削減によって得られる健康上の恩恵は、削減対策コストの約 2 倍になります。 

4. 生物多様性はかつてないほどの速さで失われつつあり、世界中の人々の健康に影響を与え、新たな感染症のリスクを高めています。

引用:『気候変動と健康に関するファクトシート (国連) 』日本WHO協会

大気汚染

ドイツのダッテルンの石炭火力発電所(2020年2月)

PM2.5は喘息やアレルギーだけではなく、心血管疾患肺がんなどの呼吸器系疾患を引き起こし、生殖、発達にも影響を及ぼす可能性が指摘されています。* すでに世界で毎年700万人が大気汚染が原因で亡くなっています。*  

媒介性感染

気温の上昇によって、動物媒介性感染症(マラリア、デング熱など)が増加することが予測されています。コレラ、ジアルジア、サルモネラなどの下痢を伴う水媒介性感染症は南アジアの国々でより 一般的になり、マダニや蚊の活動地域はより広範囲に広がることが予想されます。

日本では、温暖化により直接影響を受けやすくなる感染症として日本脳炎、マラリア、デング熱、ウエストナイル熱、リフトバレー熱、ダニ媒介性脳炎、ハンタウイルス肺症候群などが挙げられます。*

異常気象と気候変動

カリフォルニアの山火事の際のサンフランシスコの風景(2020年9月)

気候変動による気温上昇は熱中症の原因となります。また森林火災の発生率が増加しており、2010年、米国では呼吸器系の受診者数は年間6,200人、PM2. 5関連の死亡者数は1,700人に上っています。*

異常気象の頻度が上がることにより、負傷者や死亡者の増加も考えられます。

また、地球が温暖化し、極端な暑さの日が頻繁になるにつれて、早産が増える可能性も指摘されています。大気汚染にさらされる女性も早産の可能性が高いことが分かっています。*

気候変動の影響を受けない人はいない

神奈川県の大磯ビーチでのごみ広いの様子(2019年9月)

気候変動は「世界のどこか遠いところで遥か先の未来に起こるもの」と感じてしまうかもしれませんが、実は気候変動の影響は花粉症や妊娠・出産など私たちの健康にも影響を与えはじめています

先日、発表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新の報告書では、世界有数の気候科学者たちがこの10年の取り組みの重要性を訴えました。

私たちが日々できることを一緒に考えましょう!

\合わせて読みたい/

地球温暖化を逆転させるために 2022年に挑戦したいこと