グリーンピースは、ロシア政府による、一方的で国際法に反するウクライナへの武力攻撃、そして核兵器の使用をほのめかす行為を強く非難し、プーチン大統領に、直ちに軍を退去させ軍事攻撃を止めることを求めます。

世界中で、日本からも、そしてロシアからも平和を願い声を上げる方々、近隣諸国へ避難するウクライナの人々を支える市民団体やボランティアの方々に心から敬意と感謝を表します。

同時に、ロシア軍がチェルノブイリ原発を占拠したことにより、敷地内に残された放射性物質や放射性廃棄物から汚染が広がる可能性があること、それ以外のウクライナの原発や関連施設にも脅威が迫る可能性があることを、深く憂慮しています。

ロシア軍がチェルノブイリ原発を占拠

2月24日、ロシア軍がチェルノブイリ原発を占拠したとウクライナ政府が発表しました。立ち入り禁止区域に進入し、原発施設の警備隊との戦闘の末、施設を掌握したと報道されています*

セメントの石棺に覆われたチェルノブイリ原発4号機(2016年2月)

2月25日時点で、ウクライナ政府はチェルノブイリの施設への損傷は確認されていないと報告しています。

チェルノブイリ原発は1986年に「人類の歴史上、もっとも深刻な環境破壊」と言われる原発事故を起こした原発です。事故を起こした原子炉は、セメントの石棺で塞がれ、中は放射性物質が充満しており、メルトダウンを起こした核燃料はいまも中に残されたままです。

チェルノブイリ原発に残された大量の放射性廃棄物 

チェルノブイリ周辺には、稼働中の原子炉はありませんが、廃炉になった1号機~3号機から取り出された大量の高レベル放射性廃棄物、事故を起こした4号機に残された高濃度の放射性物質、そして除染による放射性廃棄物が大量に保管されています。

このうち、いくつかの保管施設はプリピャチ川の近くに位置し、この川は、首都キエフを流れウクライナの多くの人々の飲料水にもなるドニエプル川につながっています。放射性物質のプリピャチ川への漏出が憂慮されます。

ゴーストタウンとなったプリピャチの街。奥に見えるのがチェルノブイリ原発(2016年2月) 

ウクライナで稼働中の原発への影響は?

ウクライナでは、ロシア侵攻の時点で15基の原発が稼働しており、ウクライナの電気の51%は原発からできていましたが、3月1日時点でそのうち6基が送電を停止していると報道されています*

これらの原発は、ウクライナの作業員によって運転されており、原発の安全は作業員の安全にかかっています。戦闘地域に原発施設があることは、非常に憂慮すべきことです。

ロシア侵攻時にウクライナ国内で稼働していた15基の原発。緑の丸が原発の位置(画像出典:IAEA

2011年の東京電力福島第一原発事故で、原発が電源を失ったときにどれだけのリスクが及ぶかを、私たちは身をもって経験しました。原子炉や使用済み核燃料プールの冷却設備には電気が必要で、電気の供給が止まると、メルトダウンを避けるためには緊急用のディーゼルに頼らざるを得ません。福島第一原発は、津波によって冷却設備の電源を失い、3つの原子炉がメルトダウンを起こしました。

11年前の東日本大震災による津波で全電源を喪失し、メルトダウンを起こした東京電力福島第一原発

さらに、原子炉建屋と使用済み核燃料プールは、事故であれ故意であれ、ミサイルや大砲の衝撃に耐えられるように作られていません。最後の砦である原子炉格納容器が爆発物によって破壊されれば、放射性物質が放出される恐れがあります。

また、原発施設の運用には高度な技術を持った作業員が必要です。軍事攻撃により、人員が減ったり、作業に集中できなくなったりすると、ヒューマンエラーの増加につながる可能性があります。

ウクライナの原発施設は比較的古く、すべての原子炉は当初想定されていた寿命に近づいているか、超えています。原子炉が古くなるにつれて、技術的なエラーが増えることも知られています。

最も古い原子炉を持つリウネ原発の1号機、2号機には二次格納容器がないため、軍事攻撃にはさらに脆弱です。

クリミア半島に近いザポリージャ原発は、特に懸念されます。ヨーロッパで最も大きな原発で、6つの原子炉があります。この原子炉は最近、緊急用ディーゼル発電機の運転やスペアパーツの不足といった問題を抱えています。

戦争が浮き彫りにした原発のリスク

原発と放射性廃棄物は、常に危険を伴います。しかし、武力衝突の中にあっては、その危険は大幅に増します。これは、エネルギー危機と気候変動を言い訳に、原発に頼り続けるべきではない理由の一つです。

原発のリスクが浮き彫りになる今、2度の原爆投下と原発事故を経験した日本から、原発のリスクに怯える必要のない世界を実現するために、原発をやめる意志を国際社会に示すときではないでしょうか。

平和と安全へ願いを込めて、あなたも一緒に声を届けませんか?

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