欧州委員会は2月2日、原子力と天然ガスを持続可能な投資対象であると正式に認定しました。数千億ユーロに上る民間投資を原子力や天然ガスに誘導し、気候危機を加速させる認定は本当に正しい判断といえるのでしょうか。

原発は「持続可能」?

2月3日、欧州委員会は脱炭素社会の実現を目的に、天然ガスと原子力発電を持続可能な投資対象と正式に認定したことが報道されました。
今回の認定で、2045年までに建設許可を取得した原子力事業は、放射性廃棄物の管理や廃炉に関する計画を用意できれば、民間投資の対象になります。

これによって、本来、自然エネルギーなどのクリーンエネルギーへの移行に役立てられるべき資金が天然ガスと原発に誘導され、気候危機を加速させる危険性があります。

原発は数万年も環境に悪影響を与える放射性廃棄物を排出し続けるだけでなく、燃料の採掘、加工、精製、運転、廃棄物処理というすべての段階で「被ばく労働」を要するエネルギー。
いったん事故になれば被害は甚大な上、通常運転中でさえ定期的な点検で数カ月停止し、その間の電力需要は他のエネルギーで補填しなくてはなりません。

東京電力福島第一原発。2018年撮影。

原発の建設期間は非常に長く、現在の温室効果ガスを2030年までに半減させて気候危機を回避する対策には何の役にも立ちません。
天然ガスは近年価格が高騰し、世界各国でエネルギー危機を引き起こしています。

史上最大のグリーンウォッシング

この判断について、グリーンピースEUの持続可能な金融キャンペーンの担当者、アリアドナ・ロドリゴはこう語っています。

「強盗計画の話をしましょう。誰かが、自然エネルギーから数十億ユーロを奪い、原発や天然ガスのように積極的に気候変動を悪化させる技術に注ぎこもうとしています。
容疑者はEU委員会本部にいて、気候や自然環境の危機に、あたかも真剣にとりくんでいるかのように装っています。
この反科学的な決断は、史上最大のグリーンウォッシングを象徴しています。気候や環境に関するEUの世界的なリーダーシップをバカにしています」

グリーンピースEUのプログラムディレクターのマグダ・ストチェビッチは「(今回の認定は)グリーンウォッシュへのライセンスです。今後数十年にわたり、こうした有害で高価なエネルギー形態を推進することは、欧州のエネルギー転換に対する脅威になります」とコメント。

フランス・フラマンヴィルでの原発への抗議行動。2016年。

科学的根拠に基づいた判断を

50兆ユーロ以上の資産を有する機関投資家グループ「International Investors Group on Climate Change (気候変動に関する機関投資家グループ)*」は、「2050年までに気候変動を中立化するというEUの約束に適合しない事業に資本を流すことになる」と述べています。
他にも複数の政府や団体が、法的な異議を申し立てることを計画しているという報道もあります。

グリーンピースは欧州議会議員に対し、この提案を否決するよう呼びかけています。
否決には議会の過半数の353名の欧州議会議員が必要です。

また、EU内のすべての金融機関に対し、エネルギーや気候に関する投資判断について透明性を保ち、科学的根拠に基づいた判断をするよう求めています。

日本でも、岸田首相が「クリーンエネルギー戦略」のなかに原発の活用を位置付けようとしていると報道されるなか*、今回のEUの認定は、世界への間違ったメッセージとなりかねません。

温暖化対策にならないばかりか、人々の犠牲の上に成り立つ原発を使わずに、自然エネルギーで二酸化炭素排出ゼロをめざすよう、グリーンピースといっしょに声を上げてください。