夏の猛暑、豪雨、巨大台風や、干ばつなど異常気象の原因となる気候危機。
2021年8月に、グリーンピースの活動を支えてくださっているサポーターの皆さんが、この危機をどう感じていらっしゃるのかうかがったお話を、ブログでご紹介させていただきました。

このときご紹介できなかった大事なお話がまだまだあります。
今回はその続きをご紹介します。

雪が減ってスキー業界全体が縮小した

現役時代の井上恵三さん。著書「パラレル・スキー」(永岡書店/1980年)より。

お一人目は元プロスキーヤーの井上恵三さん。
北海道出身で、スキースクールの校長先生も務めておられました。

「明治時代、オーストリア陸軍のレルヒ少佐(注:テオドール・エードラー・フォン・レルヒ。日本で初めて本格的なスキー指導をした人物)は、新潟県の日本海側の上越市や高田市に10メートルの雪が降ったと故郷への手紙に書いています。

でも昭和40年ごろから、新潟の海沿いの町には雪が降らなくなりました。長野県では以前は雪がないなんてことはなかったのですが、最近はオープンできないスキー場が増えています。

同時に日本の経済状況が悪化して、競技人口が減少しました。1990年代は年間2300万人がスキー場を訪れていたのに、3年も経たないうちに10分の1まで減りました。
すると必然的にスキー業界全体が縮小します。スキーが毎年数百万台も売れる時代が終わり、スキー専門店の多くが閉店しました」

長野県・白馬八方尾根スキー場(PHOTO AC)

雪が減ってスキー客が来なくなればスキー場は潰れます。
国内のスキーヤーが減る一方、海外からは毎年スキー客が来ていますが、彼らは八方(長野県)やニセコ(北海道)に集まります。どこへでも来てくれるわけではありません」

気候変動によって影響を受けるスポーツは、スキーなどのウィンタースポーツだけではありません。
年々暑くなる夏に開催されている中学・高校の部活動の全国大会では、出場選手の健康への影響が懸念されるようになりました。
政府が発表している熱中症警戒アラートで「運動は原則中止」とされるような環境下で子どもたちに競技をさせていいのか、疑問に思う人も多いのではないでしょうか。

ここから先は何が起こるかわからない

グリーンピースの活動に何度もご協力いただいている大河原多津子さん

福島県田村市でオーガニック農業を営みながらコミュニティショップを開いている大河原多津子さんは、
「福島は昔から夏は暑かったんです。それでもいまみたいな暑さじゃなかった。
お昼前には35度まで上がって、午後に大雨がどっと降る。熱帯みたいになりました」といいます。

毎日自然と向き合うお仕事に就いている大河原さんにとって、気候変動は否応なしに直面せざるを得ない問題です。

「夏なんて日中は外に出られない、人が働けるような環境じゃなくなってきています。もっと気温が上がったら栽培できなくなる作物も出てきます。
気温が高いと野菜は日焼けするんです。ピーマンは表面が弾力つやつやじゃなく黄色っぽくぐちゃぐちゃになってしまう。長雨でジャガイモが腐ってしまったりもしました」

大河原さんが育てているトマト。2013年撮影。

「農産物が台風や雨不足で収穫できなかったときの保証はありません。だから農業従事者も増えません。
(日本は食料を)他国から輸入してるけど、気候変動が厳しくなってその国の生産量にも影響があったら、輸入に頼ることもできなくなるかもしれない。
アメリカでは干ばつでトウモロコシが獲れなくなって、日本でも家畜の飼料が値上がりしてます。

いままでは、雨も適度に降って風も吹くし、作物を育てる上では悪い国ではなかったんです。
でもここから先は何が起こるかわからない。
その中でどう農業を続けていったらいいのか、という私たちだけの問題ではない。
みんなもっと本気で自分のこととして考える段階にきています」

戦争の爪痕に気候変動が追い討ちをかけている

グリーンピース・ジャパン・アンバサダーの武本匡弘さん

ヨットで太平洋をまわるプロダイバーで、グリーンピース・ジャパンのアンバサダーでもある武本匡弘さん。
神奈川県葉山町にお住まいです。

昨今、日本のビーチが縮小してきている要因について「気候変動による海面上昇だけじゃない」と語られました。
「(海辺の環境の変化は)複合的な要因が考えられる。
上流にダムがつくられて砂が供給されなくなるとか。防潮堤や漁港の建設等が原因で海流が変わってしまい高潮の原因になることもある。

この10年は台風の被害が大きくなった。
漁師の番屋や防波堤が破壊されるだけじゃなくて、海底に置かれてた10数トンものテトラポットが防波堤を越えてくる。
ぎょっとします

令和2年7月豪雨、熊本県人吉市の被害の様子。

「IPCC(注:気候変動に関する政府間パネル)の報告も含め、科学者の知見以上に、海にいると現場の危機感はそんなものでは済まない。

例えば近年ひんぱんに起きている九州地方での集中豪雨では多くの倒木が発生し海に流出する。
その流木が黒潮に乗って北上し遠州灘沖(注:静岡県から三重県にかけての沿岸沖)まで到達しているのに遭遇したことがあります。それに船が衝突するとヤバい。一般的にヨット等はFRP(注:繊維強化プラスチック)製だから、大木がぶつかると大破することもある。つまり海にいると、山や陸で起きていることも見えるのです」

災害報道では人が住んでいるところの被害が主に伝えられますが、流された木々や土砂が海で何を引き起こしているかを知る機会はなかなかありません。
でも、それもまた気候変動による災害の一部であることに変わりありません。

「防災の対症療法はもうやめるべき。
沖合につくった防波堤が海流を変え、水の流れが強くなり、それが海岸を浸食する。ウミガメも産卵にこなくなった。対症療法の代償は必ずあるんです。
『道路が波で破壊される被害は延々続くから沖合に防波堤は必要』、これではキリがありません。道路を内陸側に動かすといった根本的な対策を考えなければ。

昔の人が遺した『これより海側には家を建ててはいけない』と刻まれた石碑があったりします。
われわれはそれに従う方がいい。
護岸工事と、陸側から仕切り直して原点から考えるのと、どっちが持続可能ですか。

太平洋の島国の侵食も海面上昇だけの問題じゃありません。
戦時中にアメリカ軍や日本軍が滑走路を造ったり埋め立てたりしたところが海流の変化を引き起こし、浸水してるんです。
マーシャル諸島のマジュロ環礁なんて、7つの島を繋いでしまった。
ツバルはアメリカ軍が飛行場をつくったところの侵食がひどい。人為的な災害なんです。
戦争の爪痕に、気候変動が追い討ちをかけているんです

マジュロ環礁・リタ地区、高潮の被害で損壊した家屋

危機感を乗り越えるための一歩

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だからスタッフ全員、毎日、朝から晩まで気候変動問題に向き合っています。
そんなわたしたちの隣にいて、それぞれ別の観点から気候変動に向き合い、危機感を共有してくださっているのが、サポーターの皆さんです。

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