私たちが車にガソリンを満たして移動するとき、または飛行機に乗っているときや、冬に灯油ストーブを使うとき、共通していることは、炭素を大気中に放すことです。

炭素税とは、炭素を多く排出する活動や商品にかけられる税のことで、排出する量が多ければ多いほど、高い税がつきます。

炭素税は、排出権取引と並んで「カーボンプライシング(文字通り、排出される炭素に値段をつけること)」の代表例です。気候変動を進める化石燃料の使用を削減する方法の一つとして、世界各地で導入されています。

排出される炭素に価格をつけて、上乗せすることで、そうした活動や商品に対する需要と消費が減って、炭素の放出が減ることにつながるというものです。

しかし、炭素税には、2つの大きな疑問がつきまといます。

一つ目は、ただでさえ高所得層と低所得層には大きな経済的格差があるのに、炭素税の導入によって、低所得層がより大きな影響を受けるのではないか?ということ。そして、炭素税によって本当に二酸化炭素の排出量を削減することができるのか?ということです。

疑問1: 炭素税で低所得家庭が大きな影響を受けるのでは?

「炭素税には、低所得者層が大きな影響を受けるんじゃないか?」という疑問を持つ方もいると思います。低所得の家庭のほうが炭素を多く放出しているというわけではないのに、高所得の家庭と比べて、収入に占める割合として、そうした活動や商品にかかる金額が高くなるからです。

しかし、これは政策デザインによって回避できることです。

ロンドン経済大学によれば、時間をかけて炭素税を導入すること、炭素税の税収を、低所得者層の負担軽減のために再分配することによって、不平等が生まれるのを避けることができるといいます。

また、炭素税の税収を二酸化炭素排出削減のための自然エネルギーへの切り替えや、仕組みの導入に活用することによっても、低所得層の負担を軽減することができます。CO2が少ない商品は、安く買えるようになるため、太陽光などのCO2がでない自然エネルギーの導入や、自然エネルギーで作られた商品が増えれば増えるほど、市民はより持続可能な商品や電気を、手ごろな価格で入手できるようになるからです。

疑問2: 炭素税で二酸化炭素の排出量を削減することができるの?

国際通貨基金は、2030年までに1トンあたり75ドルの税を課せば、地球の平均温度の上昇を2度までに抑えることができるという予測を発表しました。*2

2014年に1トンあたり7ユーロの炭素税を導入したフランスでは、2020年までには1トンあたり56ユーロまで、2030年には100ユーロまで引き上げる計画です(世界銀行2016年)。

1990年代初頭から炭素税を導入しているスウェーデンでは、輸送の分野に焦点を当て、ガソリンとディーゼルなどの輸送燃料に税が課されました。現在、世界で最も高い税の一つです。最近の研究では、運輸・交通セクターによる二酸化炭素排出量が、11%も下がったことがわかりました。

炭素税のようなカーボンプライシングの1つである排出量取引では、ヨーロッパでは、2005年から2020年までの間に、21%のCO2を削減することができています。これは、新型コロナ危機によるCO2排出減を含まない数字です*3

日本では?

日本は2012年から石油、ガス、石炭の輸入品に対しての炭素税を導入しています。この価格は非常に低く、1トンの二酸化炭素あたり3ドル未満(289円)です。

国際通貨基金が提示する、気温上昇を2度に抑えるための目安である、1トンあたり75ドルには遠く及びません。輸送燃料に対するスウェーデンの炭素税は現在、1トンの二酸化炭素あたり120ドルを超えています。

炭素税は、温室効果ガスを削減するための解決策の1つです。経済格差などの問題を解消できるように、炭素税の税収を公共交通機関を拡充したり、省エネ型住宅を補助したり、低収入層に再分配されるようにするなどの、政策デザインによって、環境問題だけでなく、交通の仕組みや住環境を改善し、貧困問題なども改善できる可能性もあります。

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