今年、広島、長崎は、第二次世界大戦での原爆投下から75年を迎えました。長い年月が経過し、被爆の記憶がゆるやかに、しかし確実に薄れつつある今、平和を希求し続けてきた両市は大きな転換点を迎えています。改めて、被爆の痕跡を写真で紹介します。


長崎

長崎市の爆心地周辺は、戦後、平和公園として整備され、多くの慰霊碑や被爆の痕跡が残されています。平和祈念像は1955年、平和への願いを込めて建立されました。天を指す右手は「原爆の脅威」を、水平にのばした左手は「平和」を示し、軽く閉じたまぶたは戦争犠牲者の冥福を祈っています。©︎ Greenpeace

爆心地直下に立つ原子爆弾落下中心地碑。1945年8月9日午前11時2分、この碑の上空約500メートルで原爆が炸裂しました。すさまじい熱線と爆風、放射線が人々を襲い、長崎市の推計によると、7万3884人もの人が亡くなったとされます(注1)。犠牲者には、日本人だけでなく、多くの外国人もいました。©︎ Greenpeace

被爆当時の地層。爆心地直下の地表面は約3千度にも達したと言われます。高温によって土が溶け、一部は変色しています。©︎ Greenpeace

原爆で被爆した人の多くが、激しいのどの渇きを訴えました。平和公園にある平和の泉は、水を求めながら亡くなった原爆犠牲者の冥福を祈り、建てられました。石碑には、水を求めた少女の手記が記されています。©︎ Greenpeace

平和公園内を流れる川沿いに、いくつもの大きな絵が展示されていました。キッズゲルニカと呼ばれる国際プロジェクトで、スペインの画家ピカソの「ゲルニカ」と同じ、縦3.5メートル、横7.8メートルのキャンバスに、国内外の子どもたちが平和への願いを込めて絵を描きました。©︎ Greenpeace

爆心地付近には、当時東洋随一と言われた教会、浦上天主堂が建っていました。その壮麗な建物も、原爆によって聖堂の壁の一部を残して破壊されました。現在、移築された壁が、保存・展示されています。©︎ Greenpeace


広島

1996年12月、ユネスコの世界文化遺産に登録された原爆ドーム。原爆投下時は、広島県産業奨励会館と呼ばれ、県産の物品の展示などが行われていました。爆心地のほぼ直下にあり、建物内にいた職員らは即死したとみられます。奇跡的に建物はその多くが残り、原爆の威力を多くの人に伝えています。©︎ Greenpeace

広島平和記念公園の北側にかかる相生橋。T字型をした珍しい形状から、原爆投下の目標とされました。投下された爆弾は約300メートル東に逸れ、島病院の上空600メートルで炸裂。あたりは一瞬で焦土と化しました。©︎ Greenpeace

平和公園にある原爆死没者慰霊碑。中央の石室には、被爆し、亡くなった方の氏名を記した名簿が納められています。2019年8月6日時点で、31万4118人が117冊の名簿に記載されています(注2)。©︎ Greenpeace

広島平和記念公園内には多くの慰霊碑やモニュメントがあります。1958年に建てられた原爆の子の像は、2歳で被爆し、10年後に白血病で短い生涯を終えた佐々木禎子さんをモデルとしています。病気からの回復を願って、病床で折り鶴を折り続けた禎子さんを偲んで、今もたくさんの折り鶴が捧げられています。©︎ Greenpeace

長崎も広島も、爆心地周辺は戦後、公園として整備されました。原爆投下の生々しい記憶が薄らぐ一方で、被爆者にとってあの日の忌まわしい体験、心と体に受けた傷は、いまだに鮮明に残り続けています。そして、自らの体験を語る被爆者の数は、年を追うごとに少なくなっています。

原爆投下から75年もの月日がたち、被爆者や両市が担ってきた平和運動は、被爆体験のない世代に託されようとしています。「二度とあの日が繰り返されてはならない」。私たちは、被爆者のこの言葉に答えなければなりません。

人類史上、初めて戦争で核兵器が投下された広島。対して、長崎は未来永劫、最後の被爆地であり続けなければなりません。グリーンピースは緑豊かで平和な世界実現のため、今後も活動を続けていきます。


(注1)長崎市 https://nagasakipeace.jp/japanese/atomic/record/scene/1103.html

(注2)広島市 https://www.city.hiroshima.lg.jp/site/atomicbomb-peace/15513.html



<ヒバクシャ国際署名のご案内>

「後世の人びとが生き地獄を体験しないように、生きているうちに何としても核兵器のない世界を実現したい」
そのような想いから、被爆者たちが国際署名をはじめています。
2020年までに、世界中で数億の署名を集めることを目標としています。署名はこちらから https://hibakusha-appeal.net/