東京電力福島第一原発敷地内に溜まり続ける汚染水。

この夏、東電が汚染水を入れてあるタンクの置き場がなくなる、と公表しましたが、2019年8月に開かれた前回の小委員会で、敷地内のさらなる利用や、敷地外利用も不可能ではないことが明らかになりました。(詳しくはこちら

そして今回、東電も自らの資料で、敷地の南北に、空き地ができる可能性があることを明らかにしました。(下図参照。向かって左が北)

「廃炉の大切な話2019」より

「空き地ができる可能性」

東電の資料「廃炉事業に必要と考えられる施設と敷地」で東電は以下のように述べています。

“ 貯留水タンクエリアの効率化(フランジタンク解体跡地の活用)、廃棄物処理作業の進捗等により、空き地ができる可能性がある ”

ただし、東電は、南北のスペースそれぞれについて、(今ある汚染水タンクにある分の長期保管用ではなく、といいたいのだと思いますが)、以下の用途に活用したいとしています(今後新しく発生する汚染水用、他の施設や廃棄部物用)。

敷地南側:
1~4号機に近いため、貯留水タンクエリアの効率化(フランジタンク解体跡地の活
用)による敷地の確保等により、必要なタンクの増設や使用済燃料及びデブリ関連施
設等、1~4号機の廃炉・汚染水対策のためのエリアとして活用していきたい。

敷地北側:
廃棄物置場が空き地となるのは早くても2020年代半ば以降であり、将来的にも廃炉作
業に伴い追加的に発生する廃棄物を処理・保管するエリアとして活用していきたい。

「空き地」がでる可能性があるなら、それを何に活用するかは優先順位の問題であり、海洋放出を避けるための貯蔵もできるはずです。

敷地内の廃棄物を中間貯蔵施設に移せないか?

委員会では、前回も今回も敷地内にタンクを置く場所をつくるアイデアとして、委員から、北側の廃棄物置き場にある土を、中間貯蔵施設に移せないかという質問がありました。

これに対して、崎田裕子委員が、「除染したものをどこかに保管しなければならない。ようやく中間貯蔵施設ができた。多くの協力で施設ができつつある」「第一(原発)の中でいろいろあるものに関して、大量にある処理した汚染水を保管し続けるのかどうかというのが課題。それ以外のものは敷地から出すという選択肢は議論の方向としては福島の方にとって納得できにくいのではないかと思う」と発言しました(聞き取りからの要約です)

つまり、敷地内の土壌廃棄物を隣接するの中間貯蔵施設に移動させることで敷地内で汚染水を管理するスペースをつくる、という案に対して、崎田裕子委員は、「福島の方にとって納得できにくいのでは」というのです。なので、この案をどう思うか、福島の方に聞いてみたいです。

敷地内の土壌廃棄物を隣接する中間貯蔵施設に移動させることで敷地内で汚染水を管理するスペースをつくる、という案をどう思うか、と。もし、それで海洋放出しなくてもよい、ということを説明すればどうでしょうか。

敷地についての議論は山本一良委員長が「検討の余地ある」として、「敷地外の利用は課題多い。敷地有効利用を進めるという方針で進めたい」とまとめました。

「風評被害」を避けるには「実害を起こさないこと」

敷地についての議論のあとは、「風評被害」についての議論がありました。「海洋放出」という選択になればそれは「実害」に他なりません。海洋放出に伴う「風評被害」を議論する前に、海洋放出を避ける方法を議論すべきです。

今回の資料
資料1  第13回議事録(案)
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf/014_02_01.pdf
資料2 貯蔵継続に係る事実関係の整理 について(多核種除去設備等処理水の取扱いに 関する小委員会 事務局)
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf/014_02_01.pdf
資料3 廃炉事業に必要と考えられる施設と敷地(東京電力ホールディングス株式会社)
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf/014_03_01.pdf
資料4 貯蔵継続/処分方法と 風評被害への対応について
多核種除去設備等処理水の取扱いに 関する小委員会 事務局
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf/014_04_01.pdf
資料5多核種除去設備等処理水の
処分方法と風評抑制(東京電力ホールディングス株式会社)
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf/014_05_01.pdf

敷地内保管のさらなる議論を

風評被害についての資料4、5ともに、海洋放出などの処分を前提としているような資料になっています。

しかし、今回の小委員会では、東電が自らも敷地内にタンクが増設できる可能性を明らかにしたのですから、では、どうしたらそれを確実にできるかを詰めていただきたいです。

ところで、この委員会開催直後に、以下の記事がアエラdot.(2019.9.30)
に掲載されました。

「経産担当官僚が汚染水問題の議論を『ピーチクパーチク』と表現 フェイスブック投稿後に削除」

ああ、官僚さんっていうのはこんなふうに思いながら、会議に参加しているんだな、ととても悲しくなりました。

地元漁師さんの声を聞いてください。

汚染水対策委員会委員に、以下を求めています。

・放射能汚染水の意図的な放出はおこなわないこと。

・放射能汚染水は長期保管とし、並行してトリチウム分離技術を開発適用すること。