8月23日に、「米どころの自治体、農家、消費者の声を聞いて、お米にムダにネオニコチノイド系農薬などの農薬を使わせる政策をやめてください」と求めた農林水産省の政策統括官あての署名1万9326筆を提出し、お米の等級の決定に関わる着色粒(斑点米)の規程など、農薬の過剰使用につながる現行の制度を見直すよう求めました。

署名提出に臨むグリーンピーススタッフと、コープ自然派事業連合副理事長の辰巳千嘉子氏(右)(2019年8月23日 農林水産省前)

一緒に署名活動をした生活協同組合の「コープ自然派事業連合」、お米の検査や等級制度の改善のために長年調査や提言を行ってきた「米の検査規格の見直しを求める会」、秋田の米農家さんの「生き物共生農業を進める会」とともに行きました。農林水産省側の担当窓口は政策統括官付穀物課米麦加工流通室の上原室長。

署名に参加してくださった方々のコメントには「子どもの健康が心配」「毎日食べる主食のお米は、唯一の自給できる農作物、安心安全なものでなければ」「人間と共存すべき生物に影響のある物質は避けて」など、今日の食の安全への強い願いを反映したコメントをはじめ、制度の見直しを求める消費者、農家双方の声が見受けられました。

署名をうけとった室長は、「多様な意見があるが、消費者の意見として参考にしたいと思います」といいました

コープ自然派さん署名提出

 

お米の規格と消費者ニーズに合ってない–アンケートであきらかに

 

今回、消費者が斑点米について実際どのように感じているかを調査したアンケートの結果も提出しました。これは、消費者のお米に対する見方について

・ 消費者がお米の等級についてどのように理解しているか 

・ 斑点米について、他とくらべて特に厳しい見方をしているか 

・ 斑点米対策として農薬(殺虫剤)を散布してでも斑点米除去に厳しい水準を求めているのか

を明らかにするために行ったものです。その結果をざっとご紹介します。

❐ 農薬(殺虫剤)等を使ってでも斑点米を除去してほしい人は、9.8%にとどまる

❐ お米の購入時に1番重視するのは「おいしさ」。外目で決まる現行の米の等級と消費者の理解やニーズは乖離している

❐ 消費者は斑点米よりも、虫や異物混入のほうが困ると答えた人が圧倒的に多く、異物より2倍も厳しい斑点米の基準は消費者ニーズと合っていない

❐ 斑点米除去のための農薬を使わない方向を望む農家に対して好意的な意見が多く、さらに、一等米も二等米も混ぜられて消費者に販売されていることを知ったあとでは、等級制度の廃止や緩和に賛成の人はあわせて65%にのぼった

❐ 米の等級は外見の検査で決まるのに、回答者の65%以上が米の等級は「食味(おいしさ)の目安」だと思うと答え大きくくい違っていた。外見と答えた人はわずか14% だった

今の農産物検査やお米の等級制度がいかに消費者のニーズとずれているかがはっきりあらわれていました。

詳しくは、調査結果『農薬による斑点米の除去希望は、わずか1割未満 ーー消費者、1200人に調査』[注1]をぜひご覧ください

「おいしさ」を目安にしたら無理なくネオニコフリーに

コープ自然派事業連合の副理事長、辰巳さんは、署名提出後の農水省との話し合いの場で、危険なネオニコチノイド系農薬をやめること(ネオニコフリー)にどのように成功してきたかを話してくれました。

「コープ自然派では、契約農家からお米を買い取るとき、『見た目』」ではなく『おいしさ』を基準とする『食味値』で評価をするようにしています。それによって、農家さんは無理なく1~2年でネオニコチノイド系農薬の空中散布をやめることができました。それによる斑点米の大発生などの問題も起きていません。おいしさで評価すれば、おいしいから消費も伸びます。」

斑点米を減らすために稲穂に殺虫剤が散布されている事実や、斑点米はが食べても問題がないことを説明されれば、消費者はわかります。消費者はネオニコを口にしたくないと思っています。コープ自然派では、カタログにネオニコ不使用・排除中のマークを表示すると、97%もの人がマーク付きの農産物を選んでいます」

これに対して室長は、

「『おいしさ』や』『食と健康』に関する数値は科学的に分析できて訴求効果を持てる時代になっていると思うし、そうした食品が伸びる時代でもあると思います」と応じました。

消費者と農家に向き合い、流通も担う立場でもある生協の実績は具体的で説得力がありました。

 

斑点米除去にはコストがかかる!?でもコストのデータは“ない”

秋田の米農家の今野さんは今回参加できなかったのですが、代わりに寄せてくれたコメントの中で次のように指摘しています。

着色粒基準の緩和が難しい理由について農水省は『色彩選別機での除去が相当なコストを伴う』ことを挙げていますが、”相当なコスト”とはどれくらいかを明らかにしていないことは不可解です」

これをうけて、米の検査規格の見直しを求める会の堀さんも、「斑点米のコストについてデータが示されていないことは、これまで長年問題であり、2009年6月16日に奥原食糧部長と話し合いをした際に、調査すると約束している」[2]「事実に基づいて透明性のある議論をすすめるために不可欠なコストデータをまず明らかにしてほしい」

と上原室長に求めました。しかし驚いたことに室長の答えは「そういうデータは農林水産省ももっていなくて、教えてほしいくらいです」と、根拠データがないことが明言されました。

斑点米を機械で除去するにはコストがかかるとする論法に根拠がなければ、なんのために斑点米の厳しい基準の根拠はますます薄弱になります。

署名の提出とこの日話し合ったことを決める権限がある政策統括官に伝えてくれるよう念押ししてきました。

 

今回の署名は政府の農産物検査の見直しについて議論する検討会に先立って提出しました。政府の検討会は、18年の大臣の会見によると今年の8月には始めるとされていて、いまは、まず技術的な検討(穀物の粒を判別する機器の性能検査)を行っているということで、制度の中身の検討は日程がまだ決まっていないそうです。

前述の農家の今野さんは、「現行の農産物検査法の目的を農産物の安全性の向上を図ることに変え、等級制や着色粒規定を廃止するなど、抜本的な見直しが必要と考えています。今回の見直しで着色粒の問題が解消されなければ、今後も長ければ数十年間、日本の水田で無駄な殺虫剤散布が続く可能性がある」と懸念しています。

この問題に注目を続け、関心を持つ人をもっと増やしていくために、署名を継続していきたいと思います。ぜひ、引き続き広めてください。また、農家も消費者も参画できる次のアクションもただいま準備中です!

 

[1] グリーンピース・ジャパン アンケート調査『農薬による斑点米の除去希望は、わずか1割未満 ーー消費者、1200人に調査』 2019.8.23  調査期間:2019年3月25日〜27日   回答者:1200人(国内在住の20代〜70代以上各年代の男女各100人)

[2]2009年6月22付 日本消費経済新聞 にも掲載

[3]「機械で斑点米を取り除くにはコストがかかるから、農家が売る時点で斑点米が少ないほうがいい」という意見がおもに米の流通に関わる業界からでている、と農水省は説明してきました。

[4]「(着色粒についても)農産物検査については、平成28年11月に決定された農業競争力強化プログラムにおきまして、農産物の規格についてそれぞれの流通ルートや消費者ニーズに即した合理的なものに見直すということになっています。」「農産物規格・検査についても、法律が施行された平成29年8月からおおむね2年以内に検討を行い、必要な措置を講ずるということになるということであります。」「29年8月から2年以内ということですね。だから31年8月が2年ということですね。」2018年7月6日齋藤農林水産大臣記者会見概要 より

 

 

 

Yearly Harvest at Ecological Rice Farm in Japan. © Viktor Cibulka / Greenpeace
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