グリーンピース・ジャパンのブログをご覧になられている皆さま、はじめまして。ライターのやなぎさわまどかです。

「地球温暖化」というキーワードが社会問題として出始めた1980年代、私は小学生でした。朝日の小学生新聞ではじめて地球温暖化について読んだ朝の、えもいわれぬ恐怖心は今も記憶に残っています。

それから30年近い年月が経ち、まさかグリーンピース・ジャパンのブログに寄稿できる機会にめぐり合えるとは思ってもいませんでした。ご関係者の皆さまに改めて感謝を申し上げるとともに、我が人生もなかなか素敵なことが起こるよ、と小さかった頃の自分を励ましたい気持ちでいます。

わたし自身は10代後半から20代前半にかけて海外で学び、都市部で暮らしていた会社員時代を経て、現在は神奈川県の山間部(最寄り駅まで車で20分)で暮らしています。ご近所や友人たちのおかげで家庭菜園から得た季節の恵みを主食にし、取材に出掛けては原稿を書きながら、長年の趣味でもある発酵食やハンドメイドを自分なりに楽しむ毎日。環境問題への意識は今、完全に暮らしに基づいた行動となりました。

今後このブログでは、環境問題に関する個人的ミクロな視点と、世界規模で取り組むべきマクロな観点をうまく混ぜ合わせ、皆さんと一緒に考える場にできるよう綴って参ります。どうぞよろしくお願いいたします。

映画「海 – 消えたプラスチックの謎」から

少し前のことになりますが、社会課題に関する映像作品を選出した「国際有機農業映画祭」にて、「海 – 消えたプラスチックの謎」(原題 Oceans: The Mystery of the Missing Plastic)を観て参りました。

2015年にフランスで制作された本作は、以前NHKのBSでも放送されたのでご覧になったかたも多いかもしれませんが、膨大なデータを背景に伝えられる現実の海洋汚染問題を見事に提起している作品でしたので、少しご紹介させてください。

(尚、本作はドキュメンタリー作品のため、解説がそのままネタバレに近くなりますことご容赦いただければ幸いです。)

映画「海 – 消えたプラスチックの謎」から

本作では、世界に先駆けて海洋汚染、特にプラスチック汚染に着目して調査を続ける各国の機関や海洋学者がたくさん登場します。すでに1980年代から北大西洋と北太平洋の海面を調査しているアメリカ・マサチューセッツの海洋教育協会では近年、海洋汚染を調査するカーラ・ラベンダー・ロー博士により「海面に浮かぶプラスチック汚染の量がある程度一定」ということを発見します。

海面に漂うプラスチックゴミは23万6千トン。彼女の調査では、この膨大な量でさえ海に流出したプラスチックのほんの1%ほどであることが判明したのです。では残りの99%は、いったいどこへ消えたのか。ロー博士は「見えないところに消えたならよかった、などと安心してはいけない」と強く言います。

プラスチックゴミがそのまま、誰も知らないうちに人の目に触れることのない海底の隙間から底地にたまり続けている可能性を示唆。たとえ海面からは姿を消しても、世界の海流をゆっくりと浮遊し続け、砂などが付着して重みが増すと海底に沈むのです。酸素がなく日光も当たりにくい海底ではさらに劣化しにくくなるプラスチック。砂地の海底でまるでワカメのようにゆらゆらしている映像も映し出されていました。

映画「海 – 消えたプラスチックの謎」から

世界で収穫されるムール貝の1/3には「マイクロプラスチック」が含まれていることも指摘します。マイクロプラスチックとは5ミリ以下の小さな破片に砕かれたプラスチックのことで、食物連鎖の始まりである小さなプランクトンの中に入り、そのまま巨大なクジラやもちろん私たち人間にまで影響をもたらします。

映画の後半では、フランスの海洋観測所で長年サンプルを集めているチームが紹介されました。彼らは7ヶ月に及ぶ海洋調査中に350回の投網をして調査し、すべての網からプラスチックが検出されます。場所によっては、プランクトンよりもプラスチックが2倍になることも…。

特に恐ろしく感じたのは、回遊するマイクロプラスチックに藻が付着することで、生命体を脅かすような生物移動が起こる可能性についてでした。肉眼で確認できない、あまりにも小さい世界で起きていることが、いつしか私たちの新たな健康問題になるともいえるでしょう。

調査チームの一員であるガビー・ゴルスビー博士は、学生たちにこう語るそうです。「プラスチック容器は捨てることないよ、うまく味付けして食べたらいいさ。あとで結局自分の口に戻ってくるんだからね」と。

まだ知らされてないことも多いだけに、長年調査を続けてくれる方々に感謝の気持ちを持って映画を観終わりました。

映画「海 – 消えたプラスチックの謎 本作が気になる方は国際有機農業映画祭へお問い合わせください。

私はこの映画を観て以来、これまで以上にプラスチック汚染のことが頭から離れません。現代の暮らしではプラスチックを目にしないことなど不可能に近く、いきなりゼロにするのは全くもって現実的ではなく、映画を観る前と後では、目にするものが違う世界のものに感じるような気持ちになったのでした。

といっても暗く鬱々としているわけではなく、むしろこの映画によってひとつ、とても勇気付けられたこともあります。それは、世界的な専門家たちが口を揃えて「消費者の行動によって変えられる」と言っていたこと。おそらく誰よりも深刻な現状を目の当たりにしている彼らのこの言葉には強い説得力がありました。

広い広い世界の海からプラスチック汚染を取り出すのはまだまだ時間がかかりますが、なによりも最も早く変えることができるのは、自分たちの行動と選択です。あれもこれもと無理する必要はなく、自分にできることを、何かひとつ。ひとつだけだって、日本の有権者数(約1億100万人 *)の全おとなが行動すれば1億以上ものアクションになるんですから。

何も思いつかないときは、身近な誰かと話すのも大切な行動ですね。このブログや映画をネタに出してもいいでしょうし、もっといろんなアイディアを知りたい場合はグリーンピースジャパンでもたくさん紹介されています。

https://act.gp/2RuP8d1

今度どこかでお会いできたら、是非あなたの「脱プラスチック」について教えてもらえたら嬉しいです。

やなぎさわ まどか

食・農・暮らしに関するライター/ 編集/ 翻訳。藤沢出身。土と社会の多様性をテーマに、人と人がまぁるく繋がる世界を目指して文章を綴る。秘かな趣味は、名前の由来を聞くこと。