三鷹の市議会議員にインタビューしに行ったら激怒してた件

グリーンピース・ジャパンの江島です。普段はファンドレイジング(資金調達)を担っていますが、本日は、ひとりの「プラごみ問題なんとかしたいけど何から始めればいいのかわからない」いち三鷹市民としてお届けします。

僕は東京都の三鷹市というところに住んでいます。三鷹市は東京のほぼ中央に位置していながら、緑が多く自然豊かで、文化や芸術ともゆかりの深い町。かの文豪、太宰治がこの町で「走れメロス」などを世に送り出したことでも知られています。

三鷹の市議会議員にインタビューしに行ったら激怒してた件

三鷹市役所。(c)Greenpeace/岩崎撮影

7月某日、そんな三鷹市の市議会が、自治体としてはめずらしく、政府に対して使い捨てプラスチックごみ問題についての意見書を出すと決定したとの情報が入りました。三鷹市が政府に意見書?何気に三鷹市ってがんばってんだな~と感じていました。

そんな僕に同僚のスタッフからこんなお声が。

「江島君、三鷹に住んでたよね?」

「はあ、住んでますが・・・」

「じゃあ、三鷹の市議会議員にインタビューしてきてよ」

「えっ、僕がですか!?」

僕は普段オフィスの中で勤務していて、外に出て誰かにインタビューなんてしたことがありません。ましてやお相手は市議会議員。ただでさえ人見知りの僕にはとんでもないハードルです。どうしよう。それにかくいう僕もまだまだコンビニコーヒーの愛好者ですから、いま問題視されているプラスチックストローを使う事もあったりするし、そんな僕がインタビューなんてしていいのだろうか…

忙しいから断ろうかなと迷いつつ、でもこれほど光栄なことはありませんし折角の機会ですから、快く引き受けさせていただくことにしました。

しかしこの後、とんでもない光景を目にすることに…

シマザキさんは激怒した

三鷹の市議会議員にインタビューしに行ったら激怒してた件

三鷹市議会議員の嶋崎 英治さん。(c)Greenpeace/岩崎撮影

そう、怒っていたのです。

どんな風に怒っていたか目の当たりにしてみたい方は、ぜひこちらから。

嶋崎さんは、1970年頃より40年間三鷹市役所に勤められ、その後三鷹の現職の市議会議員として活躍されています。なぜ今回の意見書提出を考えたのか、そこにはどんな背景があったのか伺ってみたところ、こんな答えが返ってきました。※以下、括弧内は筆者補足。

「(使い捨て)プラスチックは生産者(企業)が製造し、それを自治体が税金を使って処理しなければいけない(ような構図になっている)。なぜ?と疑問を抱きました」

「ごみ処理費用は莫大です。ごみを回収して、輸送して、燃やして…。本来であればもっと市民の生活を豊かにするために税金を使えるのに、それをごみ処理にもっていかれるのは不本意なんです」

三鷹の市議会議員にインタビューしに行ったら激怒してた件

一人ひとりが出すごみの量は少しずつでも、集まるとこんな大変な事に。(c)Greenpeace/岩崎撮影

なるほど…ごみが増えるというのは自然や町の景観を汚すだけじゃなく、自治体の懐も圧迫してしまうんですね。まだまだ嶋崎さんの怒りは止まりません。

「それに、つくりっぱなし、売りっぱなしじゃ無責任じゃないですか。拡大生産者責任*1が必要なんです。実際のところ、政府もこの責任制度を早く強化したいというスタンスでいると思います。」

※「拡大生産者責任」とは、製品に対する生産者の物理的および(もしくは)経済的責任が製品ライフサイクルの使用後の段階にまで拡大される環境政策上の手法。平たく言うと「モノを作ったらごみになった後の事までちゃんと面倒見ようね」ということ。

これには納得。何かをつくる以上、「売ったらあとは知らんぷり」じゃなくて、その後自然環境とか僕たちの暮らしにどんな影響が広がるのかまで気を配ってもらえたら、ごみの問題はもっと良くなっていくよなあと思いました。

三鷹に住んでて、よかった!

今年の6月29日、三鷹市議会は「全ての命を守るためプラスチック海洋ごみの発生抑制・削減を求める意見書」*2を賛成多数で可決しました。この意見書は国会と政府に対して、①海洋プラスチックごみの発生抑制のための法改正と財政措置、②国際社会との連携、そして③海洋プラスチックごみの現状と健康影響の調査・研究・対策を強く要望する内容となっています。

三鷹の市議会議員にインタビューしに行ったら激怒してた件

冒頭部分にグリーンピースの名前が。有難いことです。(c)Greenpeace/岩崎撮影

意見書の中では、今年の6月にカナダで開催されたG7シャルルボワ・サミットにて提案された「海洋プラスチック憲章」に日本政府として署名しなかった事についても触れられています。

個人的な感想ですが、初めてこの意見書を読んだとき、いち自治体が、政府に対して、「プラスチックごみの問題、なんとかしましょうよ!」と物申すというのはなんて画期的なことなのだろう、と思いました。それと同時に僕自身、三鷹市民であることをとても誇らしく感じました。

国内初の「プラフリー都市宣言」を目指して

「プラごみの問題はイデオロギーを越えて賛同できると思う」

嶋崎さんはそう語ります。実際のところ、今回の意見書は市議会の与野党がいずれも賛成したことによって可決しました。見方によれば、党派を越えるほどに海洋プラスチックごみ問題の事態が深刻化しているとも言えるかもしれません。

三鷹の市議会議員にインタビューしに行ったら激怒してた件

なんと9割の海鳥がプラスチック片を摂取していると言われています。(c)Greenpeace

「ある日、自宅で可燃ごみよりも圧倒的にプラスチックごみの方が多いことに気づき、ゾッとしたんです。(私たちは)文明の中で豊かな暮らしを享受できてきたが、変わらなければならない」と語る嶋崎さんに、市民である私たちができることはなんですか?と尋ねてみました。

「市民がこの問題に気付くことが大切。気づけばそれがまわりまわって議員に伝わっていく。そうすれば市議会の意見書や議題として吸いあがってくる状態になっていくんです」

最後に嶋崎さんは「三鷹市は東京都内に数少ない平和条例都市のひとつ*3であり、非核宣言都市でもある」と教えてくださいました。そこで思い切って、そこに「プラフリー宣言都市」も加えてみませんか?と尋ねてみました。すると…

「やってみたいね。私も他の議員たちにささやきますよ。ぜひやりましょう。」

…なんて熱いご返答が!うれしい!

三鷹の市議会議員にインタビューしに行ったら激怒してた件

最後に穏やかな表情を見せる嶋崎さん。ほっと一安心。(c)Greenpeace/岩崎撮影

日本とプラごみ問題、僕たちにできること

日本近海のマイクロプラスチックは世界の平均の27倍もあると言われています。日本政府はG7海洋プラスチック憲章に署名していませんが、海外ではストローやレジ袋など使い捨てプラスチック製品が国や自治体によって続々と禁止されています。

国連のレポートでは、日本の一人あたりの使い捨てプラスチックごみの発生量は世界2位(!)とも報告されており、これから僕たちもいかにプラスチック製品を減らしていくかを考えていく必要があります。プラスチック問題の深刻さを理解した三鷹市のような自治体が増えてくことも大事です。

このブログを読んで「三鷹市やるじゃん!」って思ってくださった方。

そんな熱い気持ちを胸に秘めている方のために、グリーンピースは身近なカフェやスーパー、そして自治体をプラスチックフリーするためのアイデア集「プラスチックフリーガイド」を作成しました。あなたの住む町も、「プラスチックフリーガイド」を使って、三鷹に続きませんか?

「プラスチックフリーガイド」をまずは読んでみる

P.S. このインタビューを無事に終え、いてもたってもいられなくなった僕は後日、近所の〇ーソンにマイボトルをもっていき、コーヒーを入れてもらえるかどうか、おそるおそる聞いてみました。

「あのー、すみません。これにお願いできますか?(マイボトルを差し出す)」

すると…

「あ、いいですよ~」

意外とあっさりOK!しかも10円引き。

三鷹の市議会議員にインタビューしに行ったら激怒してた件

マイボトル持参だと10円割引になるんだそう。知らなかった… (c)Greenpeace/江島撮影

ということで無事、プラスチックごみを出さないかたちでコンビニコーヒーを買う事ができました!

三鷹の市議会議員にインタビューしに行ったら激怒してた件

うーん、なんだかいいことをした気分。(c)Greenpeace/江島撮影

このブログをお読みのみなさんも、ぜひこのプラフリーガイドで自分ができそうなことにチャレンジしてみてください!

プラフリーなコーヒーは格別の味。

*1 経済協力開発機構(OECD)が提唱した概念であり、「製品に対する生産者の物理的および(もしくは)経済的責任が製品ライフサイクルの使用後の段階にまで拡大される環境政策上の手法」と定義されている。

*2 意見書リンク:http://www.gikai.city.mitaka.tokyo.jp/activity/pdf/2018ikensyo11.pdf#search=’%E4%B8%89%E9%B7%B9%E5%B8%82+%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF+%E6%94%BF%E5%BA%9C

*3 嶋崎さんによると、他は新宿区、渋谷区、中野区などが平和に関する都市条例を掲げているそうです。

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