こんにちは。エネルギーチームの柏木です。 
6月と言えば、わたしたちエネルギーチームにとっては、電力会社の株主総会の季節です。
昨年、関西電力の株主総会に出席したときに、耳にタコができるほど聞いた説明がありました。

『安全確保』を大前提に、『エネルギーセキュリティの確保』、『経済性』および『地球環境問題への対応』の観点から、引き続き重要な電源として原発を活用する。そして原子力規制委員会において安全性の確認された原発は地元の理解を得ながら「早期に再稼働」し、「電気料金を低下」させる・・・

関西電力のこの説明、2014年に定められた「エネルギー基本計画」を後ろ盾にしています。というのも、このエネルギー基本計画のなかで、原発は

発電(運転)コストが、低廉で、安定的に発電することができ、昼夜を問わず継続的に稼働できる電源となる「ベースロード電源」

と位置付けられているからなのです。そして、今年、そのエネルギー基本計画の見直しが予定されています。

わたしたちとどう関係あるの?

「エネルギー基本計画」は、エネルギー需給について日本が抱えている課題をまとめ、その上でエネルギー政策の基本方針や、長期的・総合的な施策などがまとめられたものです。少なくとも3年に1度の頻度で内容について検討を行い、必要に応じて変更を行うことになっており、直近では2014年に策定されました。
一旦、エネルギー基本計画がまとまれば、冒頭でご説明した関西電力の説明のように、伝家の宝刀のように、各所でエネルギー基本計画を参照し、方針や施策が組まれていきます。
だからこそ、「そこに何が書かれるのか?」は、私たち市民にとっても、そして電力会社や一般の企業にとっても、密接に関わってきます。

エネルギー基本計画に原発新増設??


「原発新増設を明記、経産省が提案 エネ基本計画」(6月9日、日経新聞*1)という見出しに、私の目はテンになりました。その後すぐ、世耕経済産業大臣は、報道を否定しましたが、いずれにせよ、今後の展開は要注目です。
というのも、前回2013~2014年のエネルギー基本計画見直しの議論の際には、そのプロセスに数々の問題点がありました。たとえば、

  • 議論する審議会は、民意が反映されにくい委員構成となっていた
  • 2012年に実施された原発の依存度などの「国民的議論」の結果がまったく参照されなかった
  • 各地で意見交換会が開催されなかった
  • パブリックコメントでは「脱原発」の意見が多数であったが、全く反映されなかった

などなど。

計画見直しに民主的プロセスと市民参加を

写真:共謀罪に反対する集会にて (c) Masaya Noda / Greenpeace

前回のプロセスを振り返って、今日、グリーンピースを含む環境団体や消費者団体、全37団体(*2)が、ともに下記を要請しました。そして、記者会見を行いました。
1)公平・中立な審議会構築・運営
国民にとって重大な関心ごとであるエネルギー政策は、社会を構成するメンバーが公平・中立的に参加し、事務局主導ではなく委員会内で深い議論を行うことができる運営とすること。産業界・経済界に偏らず環境団体、消費者団体などのメンバーも一定割合含めること。
エネルギー政策基本法にもとづき、他省庁との調整や意見交換も、審議会議論と並行して行うこと。
(2)情報公開・透明性の確保
どのような経緯、理由づけで政策を見直し、検討し、新たに策定しているのかを市民が知ることができるよう、インターネット中継なども利用し、議論はすべてオープンとすること。また会合で用いられた資料、及び、検討過程で参考にしたデータや資料も全て公開すること。
(3)2012年の国民的議論の参照
2012年夏の国民的議論は、政権交代に関わらず広く市民の声を拾うことを目的として制度設計されていた。約8万9000件のパブリックコメントなども踏まえてまとめられた結果、および「エネルギー・環境戦略(2012)」を参考資料として議論の前提とすること。
(4)可能な限り多様な市民参加プロセスの構築
議論の最終段階で実施するパブリックコメントにとどまらず、審議会の中でも環境団体や消費者団体、若者団体などからのヒアリングや福島第一原発事故に関するヒアリングを行うなど、経済界・産業界中心ではない、社会のさまざまな層からの意見収集を行うこと。また、公開意見交換を、福島もふくめ全国各地で、できるだけ早い段階で行うこと。
(5)ここ数年で大きく変化する国内外の状況を踏まえること
議論の前提として、震災以降大きく変化する世界の現状(脱原発やダイベストメントなど)、再生可能エネルギーのコストの低下、省エネルギーの進展など、2014年エネルギー基本計画時からの国内外の変化について、十分な情報収集・ヒアリングを行うこと。

わたしたちの声には、力がある

写真:共謀罪に反対する集会にて (c) Masaya Noda / Greenpeace

デモに行ったり、パブコメを送ったとしても、原発は再稼働するし、共謀罪も強行採決されてしまうし・・と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
共謀罪が強行採決される前、ある議員事務所に「法案審議が拙速すぎるのではないか。不安の声にも耳を傾けてほしい」とお話したところ、「なんとか止めたいと思っているが、与党は今国会中の通過を目指している。ぜひ援護射撃をしてほしい」と返ってきました。国会の外の、私たちの声は、審議の行方に重要だと言うのです。
政策を議論し、策定する立場の人々に、「そう言えば、こういう声を聞いたな」と立ち止まってもらい、考えてもらうこと。私たちの声には、少なくとも、そんな力があります。まず、そのためには、エネルギー基本計画見直しが、民主的に開かれていることが重要です。
これからも、活動の内容をお知らせしていきます。


グリーンピースは、政府や企業からお金をもらっていません。独立した立場だからこそできる活動で、私たちの知らないところで進む環境破壊や生態系への影響を明らかにしています。寄付という形でも一緒にグリーンピースを応援していただけませんか?

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*1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS08H2K_Y7A600C1MM8000/
*2:要請書は、こちらからご覧いただけます。賛同37団体は下記の通りです。

<賛同団体> 2017年6月15日現在
FoE Japan、原子力資料情報室、気候ネットワーク、環境エネルギー政策研究所、A SEED JAPAN、グリーンピース・ジャパン、原水爆禁止日本国民会議(原水禁)、市民電力連絡会、高木仁三郎市民科学基金、環境文明21、環境市民、WWFジャパン、ふぇみん婦人民主クラブ、環境まちづくりNPO元気力発電所、一般社団法人大磯エネシフト、350.org Japan、NPO法人北海道グリーンファンド、NPO法人東アジア環境情報発伝所、福島原発事故緊急会議、原子力規制を監視する市民の会、東京・生活者ネットワーク、環境まちづくりNPOエコメッセ、足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ、足元から地球温暖化を考える市民ネットたてばやし、ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン、おがわ町自然エネルギーファーム、そらとも、R水素ネットワーク、緑の党東海本部、経産省前テントひろば、ソーラーエネルギー教育協会、くらし しぜん いのち 岐阜県民ネットワーク、平和・人権・環境を守る岐阜県市民の声、放射能のゴミはいらない!市民ネット・岐阜、No nukesとエコ東農、さよなら原発・ぎふ、東海民衆センター
*引き続き、こちらから賛同を募集しています。
<呼びかけ> eシフト、グリーン連合

【関連リンク】
1)Facebookグループ「YES!脱原発」
日本全国で申請されている再稼働をとめるために、脱原発を願うひとりひとりがつながって、情報交換や行動の呼びかけをし、脱原発を市民の具体的な行動により実現するためのFacebookグループ「YES!脱原発」はこちら。ぜひご参加ください!
2)エネルギー基本計画
2014年に策定されたものはこちらからご覧いただけます。

 

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