*このブログは、2013年8月に書かれたものです。

こんにちは、エネルギー担当の高田です。

家族や友人と海に行くのが楽しみな夏――。

ところが、7月22日、東京電力は、福島第一原発事故による放射能汚染水が、海に流れ続けている可能性が高いことを初めて認めました(注1)。

「やっぱり流れていたのか…」という気持ちと、「なぜこんなことに」という憤りを感じたのは、私だけではないと思います。

【放射能汚染水を海へ放出?】

発生からまもなく2年半、いまだ収束とは程遠い東京電力の福島第一原発事故。

事故現場では、溶けた核燃料に触れることで放射能に汚染された冷却水や地下水が増え続け、「放射能汚染水」として原発施設内の貯蔵タンクなどに約40万トン(注2)保管されており、東京電力は「法令で定められている濃度未満に処理し、関係者の合意を得ながら行う」(注3)と、海への放出(投棄)も検討しています。

【国際条約に違反?】

このように放射能汚染水で海を汚すことは、少なくとも2つの国際条約への違反が疑われます。

まずは、「海の憲法」とも呼ばれる国連海洋法条約(注4)。日本も批准しています。

この条約は、「いずれの国も、あらゆる発生源からの海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するため、利用することができる実行可能な最善の手段を用い(中略)全ての必要な措置をとる(後略)」(194条1)とし、国家が海洋環境を保護することを義務付けています。

はたして日本は、海洋環境の防止のために、最善の手段を用いて、すべての必要な措置をとってきたと胸を張って言えるでしょうか。

そして、同じく日本も批准している「ロンドン条約」(注5)。

ロンドン条約は、廃棄物その他の物の投棄による「海洋汚染の防止」に関する国際条約で日本も批准しています。1993年の改正であらゆる放射性廃棄物の海洋投棄が全面禁止され、その後、放射性排水も対象となりました(注6)。

東京電力福島第一原発事故によって海が放射能で汚染されていることについて、ロンドン条約の会議では、加盟国から懸念の声があがっています。

海は地球全体でひとつにつながっています。放射能汚染水で海を汚し続けることは、海の汚染を防ぐためにつくられた国際ルールの精神に反する行為です。


写真: ロシア海軍は30年近くにわたって放射性廃棄物を日本海に捨てていました(1993年撮影)。グリーンピースの告発によって国際世論の批判が高まったことで投棄中止となり、同年ロンドン条約会議においてあらゆる放射性廃棄物の海洋投棄が全面禁止されました。グリーンピースは、10年以上にわたり、会議に参加するなどしてロンドン条約に関する議論を注視しています。 © Hiroto Kiryu / Greenpeace

【すべての核種を取り除くことはできない】

放射能汚染水から、すべての放射性核種を取り除く技術は開発されていません。実験が進められている多核種除去装置(ALPS、東芝製)でも、トリチウムの除去に目途がたっておらず(注7)、一部ヨウ素が残留することが後から発覚するなど(注8)、信頼性に疑問があります。

【海は排水路ではない】

東京電力の福島第一原発事故は、失われてしまった自然環境や、自然とともにあった地域の人々の暮らしや経済を事故前のように戻すことが、どんなに難しいかを私たちに突き付けています。放射能汚染水の放出によって、地震・津波・原発事故の被害に苦しむ福島などの方々に、一層の困難をもたらすことがあってはなりません。(漁師さんたちの切実な声と、グリーンピースによる福島・茨城などの海産物の放射能調査結果はこちら)

【東京電力と政府が、まずすべきこと】

これ以上、私たちの海を放射能で汚さないために。

東京電力と政府は、まず以下を実施すべきです。

  • 海など、環境中に放射能汚染をこれ以上広げない
  • 徹底的に情報を公開する
  • 放射能汚染水に関する費用を、原子炉メーカーなど東京電力以外の当事者企業にも負担させる
    • 原発事故処理や汚染水対策は、原発メーカーにとって新たな収入源になっています。つくった原子炉が大事故をおこしたのに、まったく責任を問われず、しかも事故処理がビジネスチャンスとはあまりに不公平。汚染水処理に税金を使う前に、汚染を引き起こした関係者がまず費用負担をすべきでは。
  • 責任の所在をはっきりさせる
    • 放射能汚染水が海に流れてしまったとき、誰がどのように責任を負うのでしょうか。処理装置の不具合などで放射能が海にながれた場合についても、現状では責任がはっきりしていません。
  • すべての関係者から合意を得る

地球全体でひとつにつながっている海―。
東京電力さん、安倍首相、これ以上、わたしたちの海を放射能で汚さないで!

福島第一原発の放射能汚染水を海に流さないでください。

――――

グリーンピースは、東電福島原発事故の環境影響調査を続けています。

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注1:東京電力2013年7月26日 http://www.tepco.co.jp/cc/press/2013/1229246_5117.html

注2:東京電力 2013年6月19日 https://www.greenpeace.org/static/planet4-japan-stateless/2018/12/c4379101-c4379101-130619j0701.pdf

注3:共同通信 2013年1月24日 http://www.47news.jp/feature/kyodo/news05/2013/01/post-7234.html

注4:https://www.greenpeace.org/static/planet4-japan-stateless/2018/12/4fbf937b-4fbf937b-b-h8-1156_1.pdf

注5:https://www.greenpeace.org/static/planet4-japan-stateless/2018/12/783d4ec2-783d4ec2-mat_ex01.pdf

注6: http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/treaty166_5.html

注7:東京電力 2013年2月28日 https://www.greenpeace.org/static/planet4-japan-stateless/2018/12/bd9c2a3d-bd9c2a3d-handouts_130228_08-j.pdf

注8:福島民友 2013年5月29日 http://www.minyu-net.com/news/news/0529/news9.html

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