国際環境保護団体グリーンピースは、本日、「Missing Link (失われる木材の行方)」、と題する報告書(英文)を発表し、その中でマレーシア木材認証協議会(MTCC:Malaysian Timber Certification Council) 注1 ) の設定する木材認証基準が木材生産過程の追跡管理に大きな欠陥をもつものであることを指摘した。

同報告書では、MTCC認証は木材生産過程の合法性を保証するものではなく、環境に配慮した森林管理の審査上でも信頼性が欠けていることなどを明らかにしており、日本を含む国際市場にこうした信頼性のない認証製品の購入を避けるよう警告している。

同報告書のMTCCへの批判点は以下の通り。

MTCC認証製品には合法性の裏付けがない。

木材製品の生産・加工・流通の各過程を追跡するMTCCの管理網には、生産過程の第一段階(伐採時から加工過程まで)を追跡するシステムが欠如している。このことは、MTCC管理網の追跡システム全体に信頼性がないことを示している。

MTCC認証製品が他国へ輸出される場合、その流通過程を独立機関が検証する基準が設けられていない。

認証を受けていない木製品の原産地を把握するシステムがないため、認証を受けていない製品が認証製品に混入することが可能となっている。これは、違法伐採された木材が認証された製品に混入する恐れがあり、MTCC認証製品として売買される可能性がある。

多くの国際協定で先住民族の土地に関する権利が認識されているにも関わらず、MTCC認証にはこうした権利を基準事項に設けていない。

MTCCは、昨年10月に、伐採企業サムリン社(マレーシア、サラワク州ミリ市)が行っているボルネオ島東部の熱帯雨林における森林経営を認証したが、同社の森林経営は多くの論議を呼んでいるものだ。ペナン族などの先住民族は、生活の場を奪う森林破壊をやめるよう、過去20年にわたってサムリン社に対し抗議活動を行っている。

MTCCプロセスは、2006年中に段階的に見直されることになっているが、伐採から生産工場までの管理網システムの確立や、認証を受けない木材の第三者機関による跡付けなどは検討項目に含まれていない。このことは、違法伐採された木材・木製品がMTCC認証製品として日本を含んだ国際市場へ輸出されることを意味している。

「MTCC認証製品が、合法性や環境に配慮した森林経営を何ら保証していないものであることがこの報告書で明らかになった。MTCC認証は、先住民族の土地から違法に伐採した木材を認証しているかもしれない。」と、グリーンピース・ジャパン森林問題担当尾崎由嘉は語っている。


(注1)マレーシア木材認証協議会(MTCC:Malaysia Timber Certification Council): 1998年、マレーシアで設立された国家木材認証協議会が、後に「マレーシア木材認証協議会:MTCC」となったもの。持続可能な森林経営に関する基準と指標を作成するプロセスが開始されたが、当初からNGOとの十分な協議が行われず、NGOの参加が求められた後も、その意見は十分に取り入れられていない。こうした中で、MTCCは2001年12月に木材認証制度を開始し、木材加工業者や伐採業者が認証を受け始めている。

報告書: 「Missing Link (失われる木材の行方)」(英文 PDFファイル:647KB)



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