国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)は7月18日、2027年から適用される米国の自動車の環境規制について、大手自動車メーカーの自動車販売計画と排出量をもとに分析を行った報告書『Top Automakers on Track to Overshoot US EPA Guidelines』を発表しました。米環境保護局(EPA)は2024年3月、自動車会社に対して2032年の温室効果ガス排出量を1マイルあたり85グラムまでに抑えることを義務化すると発表しました。(注1)報告書では、トヨタ・日産・ホンダの日本メーカー3社を含む自動車大手7社について、現在の自動車販売計画と排出量を基に2032年時点の温室効果ガス(GHG)排出量を試算し、その結果、いずれの会社もEPAの新たな排出規制に適合することが困難であることが明らかとなりました。(注2)

<主なポイント>
米国市場で販売台数上位7社の、トヨタ、ホンダ、日産、フォード、GM、ステランティス、ヒョンデ・起亜が2032年の規制値を達成できるかどうかについて分析したところ、以下の結果が得られました。

  • 対象にした7つの自動車会社について、近年の販売実績にもとづいて2032年の販売台数、パワートレインミックスを計算すると、今回EPAが発表した規制に適合できる会社は皆無であった。現在のパワートレインミックスを維持した場合、2032年規制を少なくとも130%上回ると算出された。
  • トヨタと日産が公表している販売計画に基づいて計算すると、2032年の規制に対し、トヨタは154%、日産は76%、平均排出量が規制値を超過することになる。対照的に、ホンダ、GM、フォードについては現行の販売計画を実施できた場合、2032年の規制の超過は、8%から12%にとどまる見込みである。(注3)
  • トヨタの販売計画は、分析した会社の中で最も排出基準の超過率が突出して高いという結果となった。
  • 燃費技術の向上のみで排出基準に適合することは不可能であり、ハイブリッドを含めて化石燃料車から脱却することが必要である。
自動車大手7社の2032年基準値に対する車両平均GHG排出量(現行販売計画と過去5年分の販売実績に基づき算出)

グリーンピース・ジャパン 気候変動・エネルギー担当、塩畑真里子

「これまで日本の自動車会社はエンジン技術の向上で世界をリードしてきましたが、今回のEPAの規制はゲームのルールそのものが変わりつつあることを端的に示しています。今回の分析では、たとえトヨタや日産が米国で野心的な現行の販売計画を実現できたとしても、排出ガス規制の上限を大幅に超過することが明らかになりました。中でもトヨタの超過割合は大きく、排出を規制内に抑えるためには、ハイブリッド車を含め化石燃料を使用する車両の生産・販売から脱却すること必要があります。

各社の現行計画や排出量は、単に新基準に適合しないだけでなく、記録的な熱波、高温、干ばつ、洪水が多発する気候危機の現実からも逸脱するものです。気候対策を進めるためにも、自動車会社は気温上昇を1.5度以下に抑えるために2030年までに化石燃料車両を段階的に廃止すべきです」

以上


(注1)米環境保護局『Final Rule: Multi-Pollutant Emissions Standards for Model Years 2027 and Later Light-Duty and Medium-Duty Vehicles

(注2)2032年の各自動車会社の販売見込みは、各社が発表している販売計画および過去5年間の販売実績の2つを使って計算した。2032年の各社平均二酸化炭素排出量は、各社の燃費データをもとに算出した。年ごとの燃費改善率も勘案した。

(注3)ステランティスとヒョンデ・起亜は、米国市場での販売計画におけるハイブリッド車の比率を公表していないため、これら2社については販売計画にもとづく算出はできなかった。