モビリティ

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)は6月3日、社会における人やモノの移動手段・方式(モビリティー)のあり方と提言をまとめた『持続可能なモビリティー推進における課題と提案:グリーンピースのビジョン(日本語版)』を公開しました。これは、グリーンピース・インターナショナル(本部)が世界各国の交通・モビリティーの専門家のアドバイスを受けて2024年3月に発行したビジョンに、日本に関するデータや情報を補足したものです。

>>『持続可能なモビリティー推進における課題と提案:グリーンピースのビジョン』全文はこちら(pdf)

<主なポイント>

  • このビジョンでは、誰もが必要に応じて、制限を受けることなく、環境負荷を減らした形でモビリティーを利用できるよう、利便性、適切な料金、安全性、気候への配慮、接続の良さ、社会的公正の6つの観点からあるべき姿を打ち出している。
  • 日本の公共交通機関の水準は高く、料金が比較的低く抑えられている。その一方で、過疎化や高齢化が進む地方部の電車やバスを持続させるための方策や財源の確保などの問題が生じている。
  • 米国の交通開発政策研究所(ITDP)の2015年の報告書によると、日本で移動の際の主要な交通手段に自転車が使われる割合(交通分担率)は16%で、オランダ、デンマークに次いで高いが、2020年の国勢調査の結果では2010年度比で自転車利用率は低下しており、反対に自動車利用率は上昇している。自転車を保護する走行空間ネットワークの形成、自転車ユーザー目線のインフラ整備の取り組みが求められる(注1)。
  • 2024年4月に政府発表された2022年度の日本の二酸化炭素総合総排出量は、10.36億トンで、このうち18.5%が運輸部門によるものだった。総排出量は2021年比で減少したが、運輸・交通部門では約4%増加している。この背景には政府のガソリン補助金の存在が指摘されている
  • ガソリン車は温室効果ガスの排出だけではなく、有害物質を排出し、我々の健康に影響を与える。市民一人ひとりの行動は重要だが、政府や自動車会社は、温室効果ガスの削減のために望ましいモビリティーのあり方について、より具体的な施策を打ち出し、実行していかなくてはならない。

グリーンピース・ジャパン 気候・エネルギー担当、塩畑真里子

「このビジョンは利便性、安全性、気候配慮などモビリティーを考えるうえで普遍的なコンセプトを打ち出したものです。日本には、都市部を中心にした充実した公共交通機関があり、また近所には自転車で出かけるといった環境に優しい施策や習慣があります。しかし、気候危機が深刻化するなか、個人の行動に委ねるのではなく、政治や行政には環境にやさしいモビリティーを実現すべく仕組みや制度を整えていくことが求められています。日本を代表する経済学者の宇沢弘文氏は、50年前に刊行した著書『自動車の社会的費用』の中で、自動車依存からの脱却の必要性を明らかにしていました。これからのモビリティーを考えていく上で、このビジョンが一助となることを願います」


以上

(注1)宮田浩介編著『世界に学ぶ自転車都市のつくりかたー人と暮らしが中心のまちとみちのデザイン』学芸出版社 2023年