オーストラリア燃費基準

オーストラリア政府が3月に打ち出した同国での燃費基準導入案を受け、同国で大きなシェアを誇る日本の自動車メーカーは販売戦略の見直しを迫られそうです。2023年の同国の新車販売台数は1位のトヨタ、2位のマツダを含め、上位10社に日本メーカー5社が名を連ねています。同国にはこれまで燃費基準がなく、ハイブリッド車やガソリン車が主力の日本メーカーへの影響は少なくないとみられます。トヨタは燃費基準導入は受け入れる一方で、基準値の厳しさを指摘しており、今後の動きが注目されます。

同国はOECD諸国の中で燃費基準が存在しない数少ない国のひとつで、他国では販売されないような低燃費車が販売されています。気候評議会(Climate Council)による調査では、新車の平均で100キロを走行するのに必要なガソリン量は、欧州では3.5リットル、米国では4.2リットルであるのに対し、オーストラリアでは6.9リットルとされていました。

今回の燃費基準導入案では、2050年までに約3.2億トンの炭素排出が削減されると見込まれています。当初案と比べて政府が自動車業界からの反発を受けて当初の規制案を緩和した、と一部報道されましたが、実際には小型商用車の基準値が10%程度緩和されたものの、乗用車の基準値は当初案が保持された形になっています。

オーストラリアの新車販売台数上位10社のうち、日本の自動車企業はトップのトヨタ、2位のマツダを含め5社が占めています。2月の基準案発表の後、この2社は、燃費基準の導入自体には賛同しつつも、求められる基準値は厳し過ぎるとし、規制に反対する姿勢を見せていました。また、マツダが議長を務める連邦自動車産業会議所(FCAI)は、基準を満たさなかった際に発生する罰金の支払いによって自動車会社が経済的打撃に見舞われると警告していました。FCAIは最後まで燃費案に懐疑的な姿勢を崩さず、26日の修正案発表の場にも姿を見せませんでした。

3月26日の政府発表は、関連する交通とエネルギー大臣とともにトヨタ、テスラ、ヒョンデの3社の現地法人代表が会見にあらわれ、修正案への支持を表明しました。当初は規制案に反対する姿勢を見せていたトヨタですが、同社の現地代表は、「野心的な基準値を満たすためにはまだ大きな困難が伴う」としながら、燃費基準案を支持する姿勢を明らかにしました。トヨタが最終的に基準案を支持する方向へ舵を切ったことは歓迎されます。日本メーカーのエンジン燃費技術が世界一であることは周知の事実です。今後求められてくることは燃費基準を手段として炭素排出をゼロに近づけていくことです。今後、他の日本の自動車メーカーも野心的な脱炭素計画を打ち出し、オーストラリア政府の燃費基準への支持を表明することが強く期待されます。

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