日産自動車とホンダが3月15日、電気自動車(EV)部品や車載ソフト分野で提携することを発表しました。海外と比べEV市場の伸びが緩やかな日本市場にとって、国内自動車メーカーの2位と3位の提携は、課題となっている運輸交通部門の脱炭素において、少なからぬインパクトを与えると期待されます。

2023年の日本の乗用車新車販売数は約400万台で、このうちEVは全体の2.2%の8万8535台でした。EV販売割合が2%を超えたのは日本では初めてです

日本でのEV販売の特徴は、軽自動車のサクラが全体の約4割を占めていることです。つまり、日産によるサクラの開発と販売が日本でのEV普及に貢献していると言えます。ガソリン車がEVに置き換わることは、乗用車走行による二酸化炭素排出の削減に直接つながります。世界的には、EVは普及しても車両が大型化し、国によっては販売の半数以上がSUVであるなか、日本で小型のEVが普及しつつあることは炭素削減の観点から歓迎すべきことです。

ただ、軽自動車は、日本独自の規格であるため、海外へ輸出し、販売することは困難であるのが現状です。そのようななか、昨年11月末に欧州自動車工業会(ACEA)のルカ・デメオ会長(ルノーグループ会長)は、2023年11月のACEAの今後の方針を発表する記者会見で、現在、EVの大型化が進行していることに懸念を示し、価格の面からも人々の手に届きやすいようにするためには、「日本の軽自動車規格が参考になる」、という発言をしています。世界的企業がEV開発競争にしのぎを削り、採算性確保のために車両が大型化しているという指摘もある中で、車両小型化の必要性を訴えるデメオ氏の発言は、日本メーカーにとって追い風となりえます。

一方、ホンダは2021年、2040年までに世界で内燃機関車の販売を停止する目標を発表し、三部敏弘社長は「エンジンを捨てる」と発言しています。ただ、同社の2023年のEV販売台数は全世界で2万台を下回っています。今春には国内で軽商用EV車の発売が予定されており、今後の展開に期待がかかります。

税金、高速道路料金などコスパの面から根強い人気のある軽自動車。日産に加えて、ホンダからもEV軽自動車のラインナップが増えれば、日本の道路セクターの脱炭素につながっていくことが予想されます。さらに、製造と販売だけではなく、日本政府と企業が一体になって軽自動車を海外の市場でも販売できるように、世界各国や地域の規制やルールメーキングに乗り出すことも検討に値するのではないでしょうか。日本製品の質の高さは今も世界で信頼を得ています。環境面でより優れた小型EVの発展に寄与すれば、「日本勢はEVで出遅れている」というイメージを払拭することも可能です。

今回の日産とホンダの提携が日本と世界の交通・道路部門の脱炭素へつながっていくことを期待します。

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