気候変動や環境、人権問題に取り組む国際NGOネットワーク「リード・ザ・チャージ(Lead the Charge)」(注)は2月28日、トヨタなど日本メーカー3社を含む世界の自動車メーカー大手18社を対象に、各社の(1)環境・気候変動対応 (2)人権保護の取り組みーーの取り組みをそれぞれ数値化し、ランキング形式にした報告書を発表しました

2回目となる今回の報告書では、1位フォード、2位メルセデスベンツ、3位テスラで、日本勢では、日産が最高の11位、ホンダ14位、トヨタ15位でした。全体を見ると、1〜9位を欧米のメーカー、10位〜15位を日本と韓国のメーカー、16〜18位を中国のメーカーが占める結果となりました。

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一方、グリーンピースでも過去3回、世界の大手自動車メーカーの脱炭素の取り組みをランキング形式でまとめた『自動車環境ガイド』を発表しており、今回のリード・ザ・チャージの報告書と比較検討することで、以下の興味深いポイントが見えてきます。

リード・ザ・チャージの分析では、環境に加えて人権保護に関するスコアも組み込まれています。これは電気自動車(EV)の生産が増加するにつれて、リチウム、ニッケルなどの移行鉱物の需要が増え、それに伴って鉱物資源開発における人権侵害の発生可能性が高まることを念頭に、各自動車会社が効果的な予防・対応措置を取る必要性を喚起するためと考えられます。

一方、日本メーカーについては、分析手法は異なるものの、グリーンピース、リード・ザ・チャージのいずれも「日本の自動車メーカーは、気候危機へ早急に対応するための十分な措置を取っていない」という点で一致しています。改めて、欧米と比較して、日本の自動車メーカーが、サプライチェーンの脱炭素について情報公開や削減目標設定について十分な対策を取っていないことが浮き彫りとなったといえます。

また、リード・ザ・チャージの分析は、各自動車メーカーのEV生産・販売割合や製造過程における炭素排出よりも、サプライチェーンにおける排出削減に重点を置いています。今回の報告書では、自動車製造で重要な鉄鋼・アルミニウム、電池の製造における炭素排出に関する情報公開、排出削減を目指す目標設定に加えて、実際の材料調達において具体的な方針を整備しているかどうかを検証しています。グリーンピースの報告書でも各社の鉄鋼の脱炭素に関する方針の有無を重視しており、リード・ザ・チャージによる分析はこれを補強する結果となりました。

グリーンピースは、深刻化する気候危機に直面し、二酸化炭素排出の割合が高い運輸交通分野、特に自動車の走行による排出を、早期にかつ効果的に削減する必要性を訴えています。今回のリード・ザ・チャージによる調査と報告書の発表は、世界の多くの市民による支持があって成立したものです。自動車メーカーには、この調査結果に真摯に向き合い、サプライチェーンの脱炭素化を含め気候変動対応策を早急に強化し、具体的な行動に移していくことを期待しています。

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(注)化石燃料を使わない持続可能な自動車産業のサプライチェーンの実現を目指す、国際的なNGO・市民社会のネットワーク。2023年3月に発足し、気候変動や人権、先住民族の権利、重工業、ESGなどについて、世界各地で課題解決に取り組んでいる。