国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区)は5月25日、環境省、経済産業省、外務省それぞれに対し、世界のプラスチック汚染対策に関するプラスチック条約(注1)の実現に尽力することを求めるオンライン署名を立ち上げました(注2)。

“The Truth about our Recycling”. Behind the scenes of the Big Plastic Count Results film. The country’s largest ever survey of household plastic waste can reveal that nearly 100 billion pieces of plastic are binned in the UK every year, with just 12% likely to be recycled. Maja Darlington, Greenpeace UK Plastics Campaigner, uncovers the truth in this new video produced by purpose-driven creative agency, Enviral, which was all shot on a real landfill site in Swindon.
© Isabelle Povey / Greenpeace

グリーンピース・ジャパン 政策渉外担当、小池宏隆

「現在、日本も参加する政府間交渉委員会(INC)で策定が進められている国際プラスチック条約は、深刻化するプラスチック汚染を解決するための千載一遇のチャンスです。プラスチック汚染に脅かされない地球の未来のために、この機会を無駄にするわけにはいきません。グリーンピースは日本政府に対して、5月29日にフランス・パリで始まる第2回政府間交渉委員会(INC2)を前に、プラスチック生産を規制し、使い捨てからリユースを中心とする循環経済へ社会を移行させる条約の実現のために、以下の点を求めます」

  1. 環境と人間の健康を守るために、生産から廃棄に至るまで、プラスチック汚染を終わらせる

    プラスチックは、原料採掘、生産、輸送、焼却、廃棄に至るまで、ライフサイクル全体を通じて、環境を汚染し、生物多様性を破壊し、気候危機を悪化させています。無制限なプラスチック生産と使用がもたらすこの致命的なサイクルは、永久に止める必要があります。
  2. バージンプラスチックの生産量に上限を設け、その後の生産量を段階的に削減する

    プラスチック生産は、社会を化石燃料に依存させ、気候変動と生物多様性の損失を加速させ、生産地や埋立地の近くに住むコミュニティーや労働者に害を及ぼしています。対策を取らなければ、プラスチック生産量は今後10〜15年で倍増し、2050年には3倍になる可能性があります(注3)。条約は、プラスチック生産の上限を即時設定し、その後、プラスチックの生産と使用を段階的に削減し、またバージンプラスチック生産からの公正な移行を完全に実現する必要があります。
  1. プラスチックの原料採掘から生産、使用、廃棄、流出まですべてのライフサイクルにおける環境および社会的コストについて、生産者が責任を負う仕組みを整えること(拡大生産者責任)

    EPRの拡充に加え、環境配慮設計されていない製品に対して加重的な費用負担を導入することで、環境配慮設計に金銭的動機づけを行いながら、早期に新しいビジネスモデルへ移行する企業にインセンティブがあるよう制度設計が求められます。
  2. 低炭素、廃棄物ゼロ、再利用(リユース)ベースの経済への公正かつ包括的な移行を確保する

    条約は、プラスチックのサプライチェーン全体において、持続可能な生活への公正な移行を推進し、労働者に自己決定権を与え、同時にウェイストピッカーやその他の影響を受けるコミュニティーを優先させるものでなければなりません。また、先住民族の権利と利益を優先させ、伝統的知識を促進するような、再利用(リユース)とリフィルのビジネスモデルを支援する必要があります。
  3. 不平等を是正し、人間の健康を優先し、条約策定と実施において正義を中心とする、人権に基づくアプローチにしっかりと根ざしたものであること

    条約策定の交渉においては、プラスチック汚染の危機から偏った影響を受けている先住民族やコミュニティーから公正かつ衡平な代表が、条約の交渉および施行に参加できるようにしなければなりません。 また、世界が早期に汚染をおらわせられるよう、プラスチック汚染解決への課題に特化した資金制度を確立することや、資金や必要なインフラを持つ国々が、持っていない国々に対し、革新的なゼロウェイスト経済に移行するための直接的な財政支援を行うことなどが求められます。

(注1)グリーンピース・ジャパン 声明(2022年3月2日発表)

(注2)グリーンピース・ジャパン 署名(2023年5月23日発表)

(注3)世界経済フォーラム 報告書(2016年発表)