グリーンピース東アジアは4月20日、報告書『見えざる排出源ーー2030年までのテック企業サプライチェーンの排出量と電力消費量の予測』を発表しました。本報告書では、IT技術を活用してビジネスを展開するテック企業のサプライチェーンは世界的に急成長している一方、二酸化炭素の隠れた排出源となっていることを指摘しています。テック企業のサプライチェーンの重要な構成要素である半導体製造(注1)は、2030年までに世界で8600万トンCO2e(二酸化炭素換算)を排出すると予測され、これは2021年のポルトガルの総排出量を上回ります。

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<主な調査結果>
今回の調査では、東アジアの大手サプライヤー6社(TSMC、サムスン電子、SKハイニクス、サムスンディスプレイ、LGディスプレイ、ラックスシェアプレシジョン)の電力消費量、炭素排出量、気候変動に関する公約を分析し、その排出量を2030年まで予測しました。また、半導体産業全体の電力消費量と排出量も予測しました。

  • 半導体製造業は、2030年までに世界で286テラワット時(TWh)の電力を消費し、オーストラリアの2021年の電力消費量を上回ると予測される。 
  • 2030年までに、サムスン電子の半導体製造に伴う排出量だけで年間3200万トンCO2eを超え、2021年のデンマークの総排出量を上回ると予測される。(注2) また、2022年のサムスン電子の電力消費量のうち、75%近くが韓国で消費されているにもかかわらず、同社は韓国内の事業に関わる2030年の気候変動目標を発表していない。
  • TSMCの電力消費量は、2030年までに267%増加する見込みで、調査対象となった半導体メーカーの中で最大の増加率となっている。2030年には、台湾の人口の約4分の1に当たる580万人分の電力を消費する見込みとなっている。2021年のTSMCの総エネルギー使用量に占める再生可能エネルギーの割合はわずか9%で、競合他社の再生可能エネルギー使用率よりもはるかに低い
  • 主要な半導体メーカー、ディスプレイメーカー、最終組立メーカーで、2030年までに世界の気温を1.5度以内に抑えるという気候変動に関する公約を発表している企業はない。

グリーンピース東アジア グローバルテックプロジェクトリーダー、シュエイン・ウー

「エレクトロニクス製造による排出量は急増していますが、その責任のある企業が目立たないように隠れています。アップルのような大手テック企業は、携帯電話やノートパソコンの重要な部材を製造するために、TSMCやサムスンなどのサプライヤーに依存しています。TSMCとサムスンの両社は、数カ国に匹敵するほどの電力を消費し、石炭などの化石燃料に依存しているにもかかわらず、気候に関する議論ではその責任が問われることはほとんどありませんでした。TSMCとサムスンは、顧客のアップルやマイクロソフトが取り組んでいるように、2030年までに全世界で再生可能エネルギー100%を目指す必要があります」

以上


(注1)半導体は、スマートフォンから人工知能(AI)ハードウェア、自動車に至るまで、エレクトロニクスサプライチェーンの重要な構成要素。2021年の世界の半導体市場の規模は5900億米ドルで、2030年までに倍増すると予測されている。半導体の製造は、長く複雑な製造工程を経るため、特にエネルギー集約型となっている。

(注2) サムスン電子の既存の気候変動に関するコミットメントが達成された場合のスコープ1および2の排出量。