国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区)は本日、札幌で開催されていたG7気候・エネルギー・環境大臣会合の共同声明に、日本政府が進める東電福島第一原発の放射能汚染水排出プロセスへの支持が盛り込まれたことを受け、以下の声明を発表しました。

グリーンピース東アジア、核問題スペシャリスト、ショーン・バーニー

「G7各国は、共同声明の中で、日本政府による福島第一原発の放射能汚染水の放出計画を支持しましたが、これはG7が科学や海洋環境の保護よりも政治を選択したことを意味します。

現在、福島第一原発敷地内のタンクに保管されている130万トン以上の汚染水の太平洋への放出をめぐっては、周辺の住民や漁業者、また太平洋諸島フォーラムを中心とするアジア太平洋地域の国々が、強く反対しています。(注1)また、世界有数の海洋研究機関や海洋科学者からは、東京電力が主張する科学的正当性の弱さや、太平洋を放射能汚染水の廃棄場所とすることを指摘し、海洋放出に代わる代替案を求める声が上がっています。(注2)

日本政府は、放射能汚染水の海洋放出計画について、国際的な賛同を得ようと躍起になっていますが、その一方で、福島の漁村を含む自国民、アジア太平洋地域の国々の保護は顧みられていません。福島第一原発事故の余波はいまだに強いにも関わらず、日本政府は複数の放射性核種を放出することによる海洋生物への影響を十分に調査していません。日本政府は、国際法上の越境海洋汚染の影響を含む包括的な環境影響評価の実施義務を怠っており、計画は国連海洋法条約に違反するものです。

海洋環境は、気候変動、乱獲、資源採掘によって極度の圧力にさらされています。しかし、G7は、核廃棄物を意図的に海洋に投棄する計画を容認しているのです。

グリーンピースの分析(注3)では、福島第一原発における液体廃棄物処理技術の失敗と、放出された液体廃棄物がもたらす環境への脅威について詳述しています。現在の廃炉計画は実現不可能であり、同原発の危機が収束する見込みは今も立っていないのが現実です。さらに別の報告書(注4)では、原子炉内の核燃料デブリを完全に除去することはできず、何十年にもわたって地下水を汚染し続けることが指摘されています。海洋放出に30年かかるという見通しは不正確で、現状のままでは、放出は次の世紀まで続くことになります。海洋放出に代わる有効な選択肢、特に長期間の貯蔵と処理技術の改善について、政府は一貫して取り上げてきませんでした。

福島第一原発事故収束に向けた試みは、原子炉の再稼働を増やすという日本政府のエネルギー政策全体の目的と直接結びついています。稼働中の原発は、2011年の54基から、2022年には10基に減少。国内電力に占める原子力発電の割合も、2010年の29%から、2021の7.9%をへと大きく落ち込んでいます。(注5)一方、フランス、アメリカ、イギリスを中心とするG7の他の6カ国政府のうち5カ国も、原子力開発を積極的に推進しています。

原子力産業が安全で持続可能なエネルギーの未来を実現するという考えは幻想であり、100%再生可能エネルギーという、危機的な気候変動に対する唯一の解決策から目をそらす危険なものです。しかし、2030年までに炭素排出量を削減するためには、より速く、より大きな規模で、再生可能エネルギーを導入する必要があり、核廃棄物の投棄や原発の拡大を議論している段階ではありません。私たちは、今まさに21世紀の気候を守るための競争にさらされており、それを実現できるのは自然エネルギーだけだということを、G7各国は認識すべきです」

以上


(注1) 太平洋諸島フォーラム(2023年1月) Japan must work with the Pacific to find a solution to the Fukushima water release issue – otherwise we face disaster”

(注2) 全米海洋研究所協会(National Association of Marine Laboratories, NAML)ポジションペーパー 「蓄積された冷却水に含まれる放射性核種の多くは、数十年から数百年の半減期を持ち、その有害な影響は、DNA損傷や細胞ストレスから、アサリ、カキ、カニ、ロブスター、エビ、魚などの影響を受けた海洋生物を食べる人々の発がんリスクの上昇まで多岐にわたる。我々は、日本政府に対し、前例となる放射能汚染水の太平洋への放出計画を中止し、より広範な科学界と協力して、海洋生物、人間の健康、および生態学的、経済的、文化的に貴重な海洋資源に依存する地域社会を守るための他のアプローチを追求するよう求める」

(注3) グリーンピース報告書『東電福島原発汚染水の危機2020』(2020年10月)

(注4)佐藤暁『福島第一原子力発電所の廃炉計画に対する検証と提案 ~プランAからプランB、そしてプランCへ~』(2021年3月)(注5) World Nuclear Industry Status Report – 2022