「今回閣議決定された『GX実現に向けた基本方針』は、原発の活用と化石燃料利用の延命の延命をはかるもので許されるものではありません。現在のエネルギー価格高騰に鑑みれば、エネルギー安定供給の確保は大前提であることに同意するものの、そのために本来必要な再生可能エネルギーの供給目標を引き上げる代わりに、化石燃料産業のゾンビ化と原子力の新設と再稼働を進めるためのものとなっています。

原子力発電の安全性、経済性については、現在も東京電力福島第一原発の廃炉の道筋すら立っていない状況を見ても明らかです。巨額の公的資金注入なしでは成り立たない原発は、通常時でさえ経済的ではありません。放射性廃棄物という有害で処理が困難な物質が生まれ、最終的な処分場が決まっていないのが現実です。当面の電力不足は、原発の増設では解決にならず、原発の再稼働は、将来世代に負担を先送りし、立地地域やその周辺地域への事故リスクの押し付けとなり、どちらも望ましい解決策ではありません。

アンモニア混焼を始めとした化石燃料利用の延命方針は、日本を含む世界が合意した気温上昇を1.5℃に抑えることを目指すことに、真っ向から逆行するものです。1.5℃とそれ以上の気温上昇では国民生活、社会・経済活動の根幹への影響が大きく異なるため、決定的に重要な次の10年における脱炭素の進め方が鍵となります。2030年までに大幅な温室効果ガス削減が必要であるにも関わらず、1.5℃目標が明記されておらず、さらに一番の排出源である化石燃料産業をゾンビ化させ、座礁資産へ無駄な投資を誘引してしまう、環境的にも経済的にも問題ある政策です。

大規模な資金が投入され、国の将来のあり方に関わる重要政策にも関わらず、意見収集は、期間の短いパブコメや、意見として反映させる予定のない各地の意見交換会を開催させるのみと、決して国民の間で十分な議論ができたとは言えません。政府は丁寧な国民議論の場を設けるとともに、誤った解決策への投資ではなく、省エネと再エネの普及に注力するべきです」

以上