国際環境NGOグリーンピース・ドイツはウクライナ現地時間の20日、キーウ(キエフ)で記者会見を開き、チョルノービリ(チェルノブイリ)のロシアの軍事作戦が行われた地域で、核廃棄物の放射線レベルが、国際原子力機関(IAEA)による推定の少なくとも3倍に上ったと発表しました。2022年4月、IAEAは、放射線レベルは「正常」であり、環境や公共の安全の大きな問題ではないとして、非常に限定的なデータを提供していました。

グリーンピースは、IAEAが、ロシアの国営原子力企業ROSATOMとの関係によって、ウクライナの原子力の安全性に関する役割を十分に果たしていないことを懸念しています。

グリーンピースの調査チームは、Stantzaya Yanov付近のロシア軍キャンプ跡で、地上10センチの高さで0.18μSv/h(マイクロシーベルト/時)から最大2.5μSv/hまでの線量率を測定しました。最高値はIAEAの試算の3倍以上です。ロシア軍の道路封鎖地点から1.5キロの距離にある「赤い森」に隣接する交差点では、線量率が7.7μSv/hと、IAEAの測定値を大きく上回りました。

屋外用の移動式ラボで測定したサンプルでは、Cs-137の濃度が45000Bq/kgから500Bq/kg以下まで、激しいコントラストを示しました。ロシア軍によって土壌の層が攪拌されたことで、より深い層から低濃度の汚染土壌が表面に出てきたり、他の層から高濃度の汚染土壌が出てきたりすることがあります。これは、環境中の放射性核種の移行をより高いレベルに導く可能性があります。

さらに、専用のUAV(ドローン)を使って地上100メートルの高さで測定したところ、南側の広い範囲でさらに高い放射線レベルが確認されました。ロシア軍キャンプの上空では約200cps(カウント毎秒)が測定されましたが、600〜700メートル南側では約8000cpsと40倍も高い放射能が測定されました。

今回の調査に不可欠だったのは、英国に拠点を置くマッケンジー・インテリジェンス・サービス(MIS)に依頼した、2022年2月から3月のロシア軍の作戦場所を示す衛星分析報告書(注2)です。センチネル2衛星とNASAの可視赤外線画像放射計スイートからのマルチスペクトル画像の専門的な軍事分析により、立ち入り禁止区域での火災を確認し、マッケンジーはロシア軍によって意図的に放火されたと結論づけています。

グリーンピース・ベルギー 放射線防護スペシャリスト、ヤン・ヴァンダ・プッタ

「我々は放棄された塹壕の内部で、低レベルの核廃棄物と認められるレベルのガンマ線を測定しました。ロシア軍が高放射能環境で活動していたことは明らかですが、IAEAはそう伝えてはいません。IAEAは何らかの理由で、十分な調査の努力をしないと判断したとしか思えません。IAEAが世界に信じさせようとしているにもかかわらず、チョルノービリ原発の立入禁止区域内の放射線レベルが正常でないことは、我々の調査から明らかです」

グリーンピース・ドイツ 核問題スペシャリスト、ショーン・バーニー

「チョルノービリの複雑な放射線影響の解明は世界にとって不可欠であり、そのためには国際的な科学者と協力して研究を進める必要があります。放射線の危険性の監視に不可欠な科学者や作業員は、現在、未知の数の地雷や対人爆薬に脅かされています。これは戦争が残したさらなる非道な遺産であり、環境と世界の科学に対する犯罪です。しかし、IAEAは、チョルノービリの放射線被害の規模や、ロシアによる占領の影響について、説明することに消極的なようです」

最後に、グリーンピースは、チョルノービリのSSEエコセンターとウクライナ立入禁止区域管理局(SAUEZM)の支援と協力に深い感謝の意を表します。

以上


(注1)Director General Press Conference – returning from Ukraine, 28 April 2022

(注2)マッケンジーインテリジェンスサービスによるチョルノービリ報告書(グリーンピース・ドイツが依頼)