国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区)は、本日3月11日、東日本大震災及び東京電力福島第一原発事故が発生から11年となるのにあたり、以下の声明を発表しました。


グリーンピース・ジャパン事務局長、サム・アネスリー

「多くの被害を生んだ東日本大震災、そして東京電力福島第一原発事故から、今日で11年が経ちました。不幸にも亡くなられた方々に深い哀悼の意を捧げるとともに、深い悲しみの中、今日まで歩み続けてこられた方々に、心より敬意を表します。大地震、津波、そして原発事故という未曾有の危機に見舞われながら、11年かけて復興へ歩み続けた被災地の姿は、大きな希望となりました。ただ、災害、事故の記憶が薄れゆく中で、いま向き合うべき重大な問題が、私たちに突きつけられています。

事故から11年たった今、日本国内には廃炉中のものも含め59基の原子力発電所があり、2月末時点で10基が再稼働しています(注1)。2020年10月に当時の菅義偉首相が2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロ目標を掲げて以降、国内でも脱炭素の議論が活発となっていますが、政府や電力会社からは、温室効果ガスを排出しない原発こそ脱炭素の解決策となる、という意見が盛んに発信されています。

原発は脱炭素、気候変動問題の解決策には決してなりえません。

原発は多大な電力を生み出す一方で、計り知れないリスクをはらんでいます。それは、福島のような自然災害に限りません。現在紛争が起こっているウクライナには15基の原発があり、現地時間の3月3日には、欧州最大級のザポリージャ原発(注2)が攻撃を受ける事態となりました。

日本で再稼働している10基の原発のうち、航空機衝突などテロ対策で義務付けられた設備が完成しているのは、半数にとどまっています。仮に設備があったとしても、将来の自然災害や紛争のリスクに対して、100%安全と言い切れないことは、福島原発事故で私たちが経験した通りです。

さらに、福島第一原発事故は今も収束していません。国内には事故で故郷を追われ、今も避難生活を続けている多くの人がいます。避難者が国と東京電力に損害賠償を求めて起こした集団訴訟の原告は全国で1万2千人以上にのぼります(注3)。また、日本政府は2021年、敷地内に保管された約129万トンの放射能汚染水の海洋放出を決定しましたが、一方で2021年には毎日150トンもの放射能汚染水が新たに発生し続けています(注4)。メルトダウンを起こした福島第一原発の廃炉という根本的な問題は、11年が経過した今も、廃炉の最終形もそこに至るための計画も不明瞭なまま棚上げされたままです(注5)。原子力事故のコストは、十数年であがなえるものではないのです。

いま私たちには、再び原子力の危うさが突きつけられています。原発事故を機に、日本政府は石炭火力発電を推進しましたが、それは気候危機の加速という別の問題を引き起こしました。そしていま、再び計り知れないリスクに目を背け、気候変動問題の解決のため原発を再稼働しようという、誤った選択肢を選ぼうとしています。脱炭素を口実に原発を維持することは、自らの首をしめる行為にほかなりません。原子力のリスクを知っている日本であるからこそ、私たちは日本がこれ以上の原子力利用の推進をやめ、持続可能な自然エネルギーの未来への転換を牽引するよう、グローバルな指導力を発揮することを求めます。」

以上


(注1)資源エネルギー庁:日本の原子力発電所の状況

(注2)グリーンピースプレスリリース『ロシア軍によるザポリージャ攻撃に関する予備的評価』(2002年3月4日)

(注3)NHK(2002年3月4日) https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220304/k10013513781000.html

(注4)福島民友(2002年1月28日)

(注5)グリーンピース報告書『福島第一原子力発電所の廃炉計画に対する検証と提案』(2021年3月)