国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2月28日に公表した、第6次評価報告書のうち気候変動の影響、適応及び脆弱性を評価する第2作業部会報告書(AR6/WG2)について、国際環境NGOグリーンピースは、以下のコメントを発表しました。

前回のIPCC第5次評価報告書(AR5)以来、気候リスクの発生と深刻化は加速しています。IPCCは今回、過去10年間に洪水、干ばつ、暴風雨による死亡率が、脆弱性の高い地域では、脆弱性が非常に低い地域に比べて15倍という驚異的な高さだったことを明らかにしています。一方で、相互に関連する気候と自然の危機に共に立ち向かうことの決定的な重要性を認めており、生態系を保護し、回復させることによってのみ、温暖化に対する生態系の回復力を高め、人間が依存するあらゆる生態系サービス(注)を保護することができます。


グリーンピース・北欧 シニア政策アドバイザー、カイサ・コソネン

「今回の報告書は、読むのが辛くなる内容です。しかし、これらの事実と正面から向き合っていくことでのみ、相互に関連する課題の規模に見合った解決策を見出すことができます。最も脆弱な状況にある人々の権利とニーズは、気候変動対策の中心に位置づけられなければなりません」

グリーンピース・ジャパン 気候変動・エネルギー担当、高橋マヤ

「日本は歴史的累積排出量で世界トップ10に入る、化石燃料の大量消費などで経済成長を遂げた先進国の一つです。日本は気候変動への歴史的責任の大きな国のひとつとして、『気候正義』の視点を政策に反映し、今年末の国別削減目標(NDC)の再提出に向け、パリ協定の1.5℃目標に整合するさらなる目標引き上げと政策強化を行うとともに、より重い責任を担っていることを忘れるべきではありません。温室効果ガスをほとんど排出してこなかったにも関わらず、その被害を最も被る途上国への損失と被害(ロス&ダメージ)を回避、最小化するための資金支援などで日本がリーダーシップを発揮することを求めます」

昨年の英国・グラスゴーで開催された国連気候会議(COP26)で、各国政府はパリ協定の1.5°C目標達成のために十分なことをしていないことを認め、2022年末までに各国の目標を見直すことに同意しました。今年後半にエジプトで開催されるCOP27では、各国は、適応、ロス&ダメージ、深刻な不公正の拡大に関するIPCCの最新知見にも対処する必要があります。今回公表された第2作業部会報告書(影響、適応及び脆弱性)に続き、4月には第3作業部会報告書(気候変動の緩和策)が公表される予定です。IPCC第6次評価報告書の全容は、その後、10月の統合報告書でまとめられ、今後の政策の基礎となる多くの重要な知見が示される見込みです。

以上


(注)生態系による大気や水の浄化、気候の調整、防災・減災機能など、人類が生態系から得ている利益