国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区、以下グリーンピース)は本日、東京電力福島第一原発の敷地内に保管されている放射性物質を含む123万トン超の汚染水(処理水、注1)について、日本政府が海洋放出を閣議決定したことに対し、以下の声明を発表しました。今回の決定は、福島をはじめとした日本の住民、そしてアジア太平洋地域の人々の人権と利益を完全に無視するものであり、強く非難します。

グリーンピースが2019年に行った意識調査(注2)によると、福島県民をはじめ日本全国の住民の大多数は、放射性物質を含む汚染水の海洋放出に反対していました。また、全国漁業協同組合連合会は、海洋投棄に全面的に反対する姿勢を示しています。2020年6月には、国連の専門家らが、新型コロナウイルス感染症の危機が過ぎ去り、適切な国際協議が開催されるようになるまで、汚染水の海洋放出についてのあらゆる決定を遅らせることを日本政府に求めています(注3)。

2012年以降、グリーンピースは、国連機関への技術的分析の提出、他のNGOとともに福島の地元住民とのセミナーの開催、汚染水の放出に反対する署名活動、日本の関連政府機関への申し入れなど、汚染水の放出計画に反対する取り組みを積極的に展開してきました。グリーンピースの最新の報告書では、現在の欠陥のある東電福島第一原発の廃炉計画に代わる、汚染水の継続的な増加を阻止するための選択肢について詳しく述べています(注4)。 グリーンピースは、今後も放射性廃棄物の太平洋への放出をさせないよう取り組んでいきます。

グリーンピース・ジャパン 気候変動・エネルギー担当、鈴木かずえ

「今回の政府の決定は、現在も事故の影響で苦しむ福島の人々に追い打ちをかけるものです。意図的に海を放射性廃棄物で汚染するという判断は、容認できません。政府は放射線のリスクを軽視し、原発敷地内や周辺地域に、十分な貯蔵能力があるという国の小委員会での議論を無視しています(注5)。政府は、利用可能な最善の技術を駆使して長期的に汚染水を貯蔵、処理し、放射線障害を最小限に抑えるのではなく、太平洋への投棄という最も安上がりな選択肢(注6)を選びました。意図的に太平洋の汚染を決断したことは、国連海洋法上の義務をないがしろにするものであり、強い反発を招くことになるでしょう。

菅内閣の決定は、地元の福島県民や日本の近隣住民の大規模な反対や懸念を無視した環境破壊行為です。しかし、海洋放出が決定されたとはいえ、実際に放出が始まるまでには少なくとも2年はかかるとみられます。グリーンピースは、漁業関係者を含む福島県民とともに、海洋放出を止めるための取り組みを続けていきます」

グリーンピース・インターナショナル(本部)事務局長、ジェニファー・モーガン

「地球、特に世界の海が多くの課題や脅威に直面している21世紀において、日本政府と東京電力が核廃棄物である放射能汚染水の太平洋への意図的な投棄を正当化できると考えていることは、言語道断です。この決定は、国連海洋法条約における日本の法的義務をないがしろにするものです。今後も強く反対を続けていきます(注7)」


以上


(注1)東京電力ホールディングス「ALPS処理水 告示濃度比総和別貯留量の更新について」

(注2)グリーンピース・ジャパン意識調査

(注3)国連特別報告者による声明(2020年6月)

(注4)グリーンピース報告書『福島第一原子力発電所の廃炉計画に対する検証と提案 ~プランAからプランB、そしてプランCへ~』

(注5)グリーンピース報告書『東電福島原発汚染水の危機2020』

(注6)経済産業省『トリチウム水タスクフォース報告書』(注7)国連特別報告者による声明(2021年3月)