国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区、以下グリーンピース)は本日、グリーンピースが調査に協力し、欧州のNGOネットワークEurope Beyond Coalが作成した新報告書『Fool’s Gold 石炭は黄金にあらず 石炭投融資の継続は気候危機を加速させる 日本のメガバンクに関する特別報告書』(日本版)を発表しました。

日本のメガバンク、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、欧州の石炭火力発電関連企業に計約19億ユーロの融資を行っています。本報告書では、このような支援が、クリーンエネルギーへの移行の妨げになるだけでなく、石炭需要の低下の加速とともに、化石燃料の座礁資産を生み出す危険性があると指摘しています。

本報告書では、欧州で最も汚染を引き起こしている石炭関連企業8社と密接な関係のある、欧州の8つの金融機関と、国際金融機関4社について調査を行いました。これらの石炭関連会社は、2019年のEUにおける石炭由来のCO2排出量の半分を占めています。調査によると、IPCCが2018年10月に1.5度特別報告書を発表した翌年も、日本の銀行を含めた金融機関からの継続的な支援を受けていたことが分かりました。

みずほ(10.28億ユーロ)、SMBC(5.65億ユーロ)、MUFG(2.99億ユーロ)は、ドイツのRWE、Uniper、ポーランドのPGE、チェコのCEZ、フィンランドのFortum、イタリアとスペインのEnel / Endesaを含む欧州の主要な汚染事業者に対して、合計約19億ユーロ(約2300億円)相当の融資と引受を行っています。

日本の3メガバンクは 今年5 、6 月にそれぞれサステナビリティ政策を改定しましたが、プロジェクトファイナンスという形での個別の石炭発電プロジェクトへの金融支援の終了を約束したに過ぎません。

  • 日本版報告書の全文はこちら 

https://www.greenpeace.org/static/planet4-japan-stateless/2020/09/5529b2b9-foolsgold_jpfinal3.pdf


報告書の筆者、Europe Beyond Coal シニア・ファイナンス&ユーティリティ・コーディネーター、カーリナ・コッレ

「今回調査を行った金融機関は、パリ協定が締結された際、石炭からの脱却が早急な優先事項であることを認識していました。それにも関わらず、IPCCからより明確な科学的指針が出された後も、数十億ユーロを投じて石炭関連企業を支援しています。このことは、これらの金融機関が意識的に気候変動対策を弱めていることを示しています。

これらの金融機関は、いずれも石炭への投融資を制限すると主張していますが、数字は事実を物語っています。これらの金融機関の方針は、多くの場合、汚染を引き起こすエネルギーへの資金提供を維持しながら、前向きな印象を与えるように慎重に策定されています。欧州の石炭関連企業が、2030年までの石炭の段階的削減計画を立てない場合、投資家や銀行は、すみやかにこうした企業を排除しなければなりません」


グリーンピース・ジャパン 気候変動・エネルギー担当 ダニエル・リード

「今回の調査は、日本の銀行がいかに石炭産業と、大規模な環境汚染を続ける企業を資金面で支援し続けているかを示す最新の資料です。日本の銀行は、顧客企業に素早い脱炭素化を求めておらず、パリ協定の目標達成を困難にしています。

日本が度重なる異常気象に見舞われる中、MUFG、みずほ、SMBCも気候危機対策に責任を負わなければなりません。石炭火力発電事業への直接支援をやめるだけでは不十分です。日本の銀行は、悪化する気候危機を加速させるような石炭の継続利用にこれ以上資金が行き渡らないように、早急に新たな方針を策定しなければなりません」

  1. 報告書は Europe Beyond Coal とそのパートナーの BankTrack, BlackRock’s Big Problem, Ember, Fundacja “Rozwój TAK – Odkrywki NIE”, Friends of the Earth Finland, Friends of the Earth France, Greenpeace, Reclaim Finance, Re:Common, ShareAction, Urgewald and 350 Japan によって作成されました。
  2. 調査対象となったのは、欧州で最も汚染の多い石炭関連企業8社。RWE、PGE、EPH、ČEZ、Enel/Endesa、Fortum/Uniper。