© Christian Åslund/Greenpeace

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区、以下グリーンピース)は、東京電力福島第一原発の放射能汚染水(処理水)の処理をめぐり、本日、福島市内で開かれた「関係者の御意見を伺う場」について、出席した地元関係者から海洋や大気中への排出に対する反対や懸念が相次いで表明されたことについて、以下の声明を発表しました。

経済産業省の「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(ALPS小委員会)」は今年2月、処理水の海洋放出または水蒸気放出を答申。これを受け、政府は今回の会合を開催しました。

グリーンピース・ジャパン エネルギー問題担当、鈴木かずえ

「本日の会合では、一般の住民の意見表明の機会は設けられませんでした。今後の予定も明らかでなく、透明性を欠いています。近く予定されているパブリックコメントでは、インターネットでの周知と提出が中心となります。より広い層から、さまざまな形で意見を聞くべきです。本日、福島県森林組合連合会会長、福島県漁業協同組合連合会会長らから相次いだ汚染水の排出への反対の声を、政府は真摯に受け止め、改めて環境への負荷が最も低い陸上保管の可能性や技術開発について議論をすべきです。

2018年に開かれた公聴会では海洋放出への反対が大多数を占め、『陸上保管案』について小委員会で検討することになりました。小委員会では、委員らがタンクの増設のスペース確保や敷地外での保管が可能であると確認したにもかかわらず、最終的に空や海への放出の提言が行われました。また、グリーンピースが昨年10月に実施した意識調査では、福島県の多くの人々は環境中への排出、特に海洋放出に反対しています(注)。

タンク内にはトリチウムだけでなく、ストロンチウムなど危険な放射性物質が基準以上に含まれています。基準値以下に薄めて放出しても、放出される総量は変わらず、大量の放射能を環境中に拡散させることになります。人と環境を守るために、放出は許されません。

一方、今回、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、不要不急の外出の自粛など様々な努力を積み重ねる必要がある中、福島市で『ご意見を伺う場』が開催されたことは、大変遺憾です。医療崩壊への危機感が高まるこの状況下で、急いで開催すべき理由はありません」

(注)グリーンピース「東電福島第一原発の汚染水に関する意識調査結果」(2019年10月)
(参考)グリーンピースは2019年12月24日、汚染水処理対策委員会宛に、汚染水を意図的に放出せず、並行してトリチウム分離技術の開発・適用を求める署名4万1521筆を提出しました。