国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区、以下グリーンピース)は、G20大阪サミットで主要な議題となる気候変動対策と使い捨てプラスチック問題について、日本を取り巻く現状と諸課題、NGOとしての提言をそれぞれ取りまとめました(注)。

16日、長野県軽井沢町でのG20エネルギー・環境相会合で採択された共同声明では、気候変動対策としてCO2の回収や再利用の技術開発や、海洋プラスチックごみ削減のための国際的枠組み構築などが合意されました。しかし、日本政府は気候変動対策でリーダーシップを発揮するとしていますが、国際的に広がる脱石炭の取り組みで遅れが目立っています。さらに、世界第2位の廃プラスチック輸出国でありながら、使い捨てプラスチックの禁止や削減は遅々として進んでいません。

こうした現状を踏まえ、グリーンピースではこれらの問題について、次のように分析、評価します。28、29日のG20大阪サミットでは、日本政府が議長国としての責任を果たし、より実効性のある議論がなされることを切に望みます。

写真:G20大阪サミットを前に気候変動対策を訴えるFridays for futureの様子(6月21日、大阪市北区)

①石炭火力発電への投資続ける日本 気候変動対策で政府の言行一致に疑問

(エネルギー担当 ハンナ・ハッコ)

米国やEUでは近年、石炭火力発電の使用量が大幅に減少していますが、日本はいまだに国内の石炭火力発電によるエネルギー生産を増やし、海外、特に東南アジアへの石炭事業の輸出や資金提供まで行っています。これは気候変動対策でリーダーシップを発揮するという政府の方針とは相反するものです。

G20エネルギー・環境相会合の声明は、残念ながら、水素利用の拡大や二酸化炭素の回収・貯留技術(CCS)などの開発途上で不確実性の高い手法に焦点を当てるという将来の技術革新頼みの日本の消極的な政策を反映したものでした。進行中の気候危機による極端な天候やその他の影響が、すでに日本や他の国々の人々に苦しみをもたらしている状況では受け入れられないものです。世界が必要としているのは、すでに実用化されている省エネと自然エネルギー技術によって、経済の脱炭素化を加速させるというG20各国の首脳からの明確なメッセージです。日本政府にはG20議長国として、こうした成果を達成する特別な責任があります。

 

②プラごみリサイクル機能せず 使い捨てに頼らない社会へ意識の転換を

(プラスチック問題担当 大舘弘昌)

日本は廃プラ輸出量で世界第2位です。2017年末に中国が廃プラスチックの輸入を禁止すると、新たに東南アジア各国が引き受け先となりましたが、これらの国々でも環境や健康被害の観点から非難が高まり、廃プラは国際的に行き場を失いつつあります。日本国内では、プラスチックごみの大半は焼却または埋め立てられており、実際のリサイクル率は全体の2割程度です。

G20エネルギー・環境相会合では、海洋プラごみ削減に向けた国際的枠組みが合意されましたが、具体的な目標や罰則は盛り込まれませんでした。日本政府は、リサイクルなど「川下」での取り組みに重点を置いており、国レベルの使い捨てプラ規制をしていません。世界が使い捨てプラスチックの禁止という、より「川上」での取り組みに向けて動き出す中、2020年のレジ袋有料化で世界を牽引することはできません。プラスチックごみ削減のため、大量生産、大量消費社会からの早急な転換が必要です。

写真:海中に漂うプラスチック包装(フィリピン、2019年5月)

 

注)記者発表資料

1. 気候変動対策における日本の役割 G20で有言実行を示せるか?

2.プラスチックに関する日本の現状と取り組み