国際環境NGOグリーンピース(本部オランダ・アムステルダム)は、2019年5月6日、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)が、人間の影響による大量の種の喪失を警告する報告書を発表したことを受け、世界の森林・海洋の保護を大幅に前進させ、深刻な環境負荷をもたらしている農業および食料の生産と消費に大きな変化を起こす緊急の行動を訴え、以下の声明を発表しました。

 

本報告書は、100万種の生物が絶滅の危険にさらされ、人類史上かつてない危機にあると警告しています。また、生物多様性保全戦略計画(愛知目標)で指摘されている2020年の自然保護目標のほとんどが達成されておらず、そのため国連の持続可能な開発目標(SDGs)の半分に相当する項目で困難をきたしていると指摘しています。

 

グリーンピース・ドイツ 森林と気候変動担当 クリストフ・ティース(Christoph Thies)博士

「この衝撃的な現実を直視しなければなりません。各国政府は、企業の利益と欲望よりも、人々の生命や地球環境を優先し、報告書が求めるとおり緊急性を持って行動すべきです。各国の指導者は、来年中国で開催される生物多様性条約第15回締約国会議で、先住民族と地域社会の参加と同意を得て、生物多様性を保護するための強力な目標と実施計画を採択しなければなりません。不当な利得をむさぼる企業等の活動が引き起こす自然の恩恵の過剰な利用や気候変動の悪化により、自然は危機にさらされ、私たち人間自身の生存をも脅かしています。

 

本報告書はあらゆる行動を促しています。これらの警告の多くは最新のものであり、もしこれをおろそかにすれば、その損害が取り返しがつかなくなる前の最後の警告となるかもしれません。生物多様性の保全と回復は、気候変動問題の解決策として非常に大きな役割を果たすことができます。今こそ、私たちを支える自然を守ることによって気候変動と闘うときです」

 

森林、泥炭地、沿岸の海洋生態系を保護または回復しなければなりません。生物多様性の保全と、CO2排出量の劇的な削減、および自然の炭素貯蔵量の増加を組み合わせることで、地球温暖化を1.5度未満に抑えることに大きく貢献することができます。その重要な取り組みを迅速に行うことでのみ、私たちは瀬戸際から抜け出せる可能性があります」

 

IPBESの報告によると、海洋の66%が複数の人為的な圧力を受けており、海洋生物は「深刻な影響」を受けています。報告書はさらに、海洋生物の質的および量的な豊かさが低下しており、食料を提供し、気候変動を抑制する海洋の力が制限されていると警告しています。

 

グリーンピース「神秘の海を未来へ」活動担当者  ルイザ・キャッソン(Louisa Casson)

「私たちの海は地球上のすべての生命を支えています。それにもかかわらず、ほとんどの国際協力は海洋生物や貴重な共有の海という環境を最大限搾取する方法にばかり焦点を当ててきました。短期的利益のために海の資源を略奪するのではなく、各国政府は公平性と持続可能性を、海洋をめぐる取り組みの中心に据えるべきです。

 

本報告書は、共有の財産である海洋保護のためには既存の仕組みが機能していないことを示しています。現在、地球上の海洋のほんの1%しか保護されておらず、公海での保護区の創設を可能にする法的手段は全くありません。

 

2030年までに世界の海洋の少なくとも30%を保護するために世界的な海洋条約が必要です。これは、人々の暮らしを守り、何百万人もの人々の食料保障を確実にし、気候変動に対して私たちの最大の味方となりうる健康的な海を取り戻すために、各国政府が協力して取り組む絶好の機会です」

 

IPBESの報告書は、土地利用の変化、生物の過剰採取、気候変動、消費レベルなど、自然界の変化の主な要因が、これまでにない水準にまで加速していると警告しています。

 

グリーンピース・インターナショナル  食と農業担当 エリック・ダリエ(Eric Darier)

「私たちは、生物多様性、気候変動、そして人間の健康への悪影響が報告されている肉や乳製品の消費を減らし、より植物ベースの食生活へ変更していく緊急行動の呼びかけを歓迎します

 

工業的畜産用の飼料に必要な農地の増加は、森林伐採ひいては動植物の生息地の破壊を引き起こす主な要因になっていると同時に、気候変動の悪化にも関係しています。食肉の消費と生産を2050年までに世界全体で50%削減することを目指して、政策決定者は食肉と乳製品の消費への取り組みを政策決定者の優先事項とすべきです」