国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区)は、本日4月11日、2030年までに世界の海の3分の1以上を保護区にする方法を示すレポート『30×30:海洋保護の未来図』(注1)を発表し、各国政府に海洋保護区への賛同を促すキャンペーン『神秘に満ちた海を未来へ』(注2)を世界同時に開始しました。グリーンピースの船は、約1年をかけて北極から南極に向かい、海が直面する脅威を明らかにする探査の旅に出発します。

 

■ レポートの要旨:気候変動と野生生物保護の鍵を握る「公海の3分の1以上の保護」

どこの国にも属さない公海は、地球の表面の43%を占める広大な空間で、豊かで多様な生命にあふれています。公海に生息する海洋生物は、水面で炭素を吸収し、海底深くに貯蔵する役割を担っています。この働きがなければ、私たちの大気中の二酸化炭素濃度は今より50%も高くなり、世界はもはや生存できないほどの高温に見舞われます。

本レポートは、英国のヨーク大学オックスフォード大学、グリーンピースによる1年に及ぶ共同調査で、人間活動の直接的な影響を受けない地球規模の海洋保護区ネットワークとはどのような姿なのか、何百通りものシナリオを作成しました。調査結果は、ネットワークの構築は十分に実現可能で、必要なのは政治的意思であると指摘します。

図:公海の30%を保護するシナリオの例  保護区:緑  公海:白 国・地域の管轄水域:灰色  陸地:濃い灰色

 

■ 国連の場で国際的な海洋保護条約を作る歴史的なチャンス

国連では現在、歴史的となる国際的な海洋保護条約(注3)の2020年までの合意に向けた議論が行われています。同条約が合意されれば、人間活動の直接的な影響から公海を守る海洋保護区ネットワークの実現が可能になり、野生生物と生息地の回復とその繁栄を支えます。

 

レポートを執筆したヨーク大学の研究者カラム・ロバーツ氏は、「海鳥、ウミガメ、サメや海洋哺乳類の異常な減少が示すように、公海の管理システムは崩壊しており、各国政府は直ちに国連の場でこれを正常化すべきです。本レポートは、野生生物を絶滅から守り、変化の速い世界での生存を助ける海洋保護区ネットワークを、国際水域に構築する方法を明らかにしています」と述べました。

 

■ 北極から南極へ:地球をめぐる船の旅

グリーンピースの船が北極から南極まで、約1年をかける探査の旅(注4)では、レポートで保護の必要性が特定された海域の多くをめぐります。科学者のチームと協力し、公海に対する気候変動や過剰漁業、プラスチック汚染、深海底掘削や石油採掘の影響を調査します。

 

グリーンピース・ジャパンの関根彩子は、「私たちが当たり前に目にする豊かな海は、水の惑星である地球からの贈りものです。動植物や人々に恵みを与え、二酸化炭素を吸収することで気候の安定を助けてくれる海を守れるかどうかは、私たちの意思にかかっています。今を生きる私たちの世代で、誰のものでもない海を保護区として守り、神秘に満ちた海を未来に贈りませんか」と呼びかけました。

 

注1)レポート『30×30: 海洋保護の未来図』(2019年4月発表・日本語)

注2)キャンペーン『神秘に満ちた海を未来へ』

注3)各国の管轄権外の公海の生物多様性についてはこれまで法的な保全の枠組みがなく、2017年の国連総会で、法的拘束力のある協定文書をできるだけ早く策定することが決議された。そのために4回の政府間会議を開くこととされ、これまでに2回実施。次回は8月19日〜、第4回は2020年前半の予定。第4回文書が合意に達することが強く期待されている。

国家管轄権外区域における海洋生物多様性(BBNJ)のウェブサイト(英語)

注4)北極から南極へ:地球をめぐる船の旅 航路(英語)