国連の福島勧告、政府は「同意しただけ」にせず、施策への即時反映をーー原発事故被害者とグリーンピースが国連人権理事会で演説

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区、以下グリーンピース)と、東京電力福島第一原発事故の被害者である森松明希子さんは、本日19日(スイス時間)、スイス・ジュネーブで開催されている国連人権理事会で日本政府が福島原発事故関連の勧告(注1)に正式同意したその場で、「同意しただけ」にせず、ただちに施策に反映させることを求める演説を行いました。

グリーンピースの仲介で演説した、福島県郡山市から大阪府への母子避難を続けている森松さんは、福島原発事故直後に、情報を知らされず、無用な被ばくを重ねたこと、汚染された水を飲むしかない状況で赤ん坊に母乳を与えた経験を語り、放射能から逃れ、健康を享受することは「基本的原則」と訴え、日本の憲法は、「全世界の国民が、等しく恐怖と欠乏から免れ平和のうちに生存する権利」と書かれているが、日本政府は市民をまもるための施策は、ほとんど実施してこず、放射線量の高い地域への帰還政策にばかり力を注いでいると批判しました。そして、国連加盟国に向け「今後も、福島県を含む東日本の、特に放射線に感受性の高い子どもたちを、さらなる被ばくからまもることに力をかしてください」と呼びかけました(注2)。

グリーンピース・ジャパンのエネルギー担当の鈴木かずえも演説し、グリーンピースの調査で避難指示解除後も公衆被ばく限度、年間1ミリシーベルトを何倍も超える汚染が確認されたこと、区域外避難者の住宅支援が打ち切られ、立ち退き訴訟まで起こっていること、福島県の子どもたちの甲状腺がん検査の縮小が多くの保護者の反対の中、検討されている実情を語りました。また、このような原発事故被害者をないがしろにする政策は、原発再稼動の推進政策と直結したものであると日本政府を批判し、勧告を受け入れたいま、政策を改めるよう政府に求めました(注3)。

グリーンピースは、原発事故被害者のみなさんとともに勧告の施策への反映を、今後も働きかけていきます。国連の普遍的定期的審査(UPR)勧告に法的な拘束力はありませんが、同意した日本政府は、勧告の内容をフォローアップし、国連人権理事会に進捗報告をします。

【背景】
昨年11月に開かれた国連加盟国の人権状況を審査する国連人権理事会の普遍的定期的審査(UPR)の作業部会で、217の対日勧告が出されていました。その中でオーストリア、ドイツ、ポルトガル、メキシコは、福島原発事故対応に関して、それぞれ区域外避難者を含む被害者への継続的な支援と健康モニタリング、許容放射線量を年間1ミリシーベルトに戻すこと、帰還に関する意思決定プロセスへの住民参画のための「国内避難民に関する指導原則」の適用、医療サービスへのアクセスの保証を勧告、日本政府は3月5日までにこれらについて同意を公表(注4)していました。

注1) ファクトシート(オーストリア、ドイツ、ポルトガル、メキシコからのUPR福島勧告と日本政府による返答、およびグリーンピースのコメント)

注2) 森松明希子さんの演説原稿日本語訳

注3) 鈴木かずえの演説原稿日本語訳

注4)UPR第3回日本政府審査・勧告に対する我が国対応(英文)(PDF)