国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区、以下グリーンピース)は、本日23日、国連人権理事会の作業部会で加盟国が、東京電力福島第一原発事故被害者の人権状況を是正するよう、日本政府に勧告したことを受け、この勧告を受け入れることを求めた署名3,090筆(第一次集約分)を外務省に提出しました。提出には福島からの避難を余儀なくされている女性、園田さんも同席しました。

この勧告(注1)は、人権理事会が4年半に一度、全ての国連加盟国の人権状況を審査する普遍的定期的審査(UPR)会合の結果を受けて、昨年11月に出されました。また、本署名は、グリーンピースがインターネットや署名用紙で呼びかけているものです(注2)。

本日は、外務省のほかに、環境省、文部科学省、復興庁の担当者も同席しました。署名を受け取った外務省人権人道課主席事務官田村優輝氏は「本日承ったお話は関係部署にしっかりと伝達します」と語りました。

グリーンピースとともに、昨年10月、UPRの事前セッションで被害者の現状を訴えた園田さんは、「事故の被害者、特に多くの母親や子どもたちが、非常に困難な暮らしを強いられています。子どもをまもるために、事故後、多くの母親がデモに参加したり、訴訟を起こしたり、多方面から声をあげていますが、どんなに声をあげても日本政府には届かない。昨年の春、自主避難者への最後の命綱である住宅支援が打ち切られて、状況はどんどん悪化しています。今回、複数の国が被害者の暮らしに思いを寄せ、日本政府に是正勧告を出してくれたことは一筋の希望です。日本政府は勧告を受け入れて、弱者をまもる国であってほしい」と語りました。

グリーンピース・ジャパン エネルギー担当の鈴木かずえは「昨年10月のUPR事前セッションでは、国際法、また国内の法律でも一般人の被ばく限度が年間1ミリシーベルトとされている一方、東電福島原発事故については、年間20ミリシーベルト基準で避難指示が解除され、また住宅支援や賠償の打ち切りといった経済的な圧力により帰還が進められていることに、各国政府代表者や国連の人権担当者は、大きな驚きと懸念を示しました。国際社会の視点を、復興庁や経済産業省など直接被害者への対応を担う省庁に伝えることも外務省の役割と信じています。世界中の人々が、政府の事故被害者への対応に注目し、被害当事者の多くの方もこの署名に賛同しています。出された勧告を日本政府が受け入れるように、ぜひ外務省に尽力してほしい」と訴えました。

署名は引き続き、2月下旬まで実施します。日本政府は、これらの勧告について第37回人権理事会(2月26日~3月23日)までに回答することになっています。その後、最終的な勧告が採択されます。

(注1)国連加盟国4カ国による勧告は以下の4つ。(グリーンピースによる仮訳)

オーストリア: 福島の高汚染地域からの自発的避難者への、住宅、経済および他の生活支援措置、特に事故当時子どもであったものへの定期的な健康モニタリングを含み、支援を継続すること。

ポルトガル: 帰還に関する意思決定プロセスに、男女ともに包括的かつ平等な参画を確保するために、福島第一原子力災害の影響を受けたすべての人に、「国内避難民に関する指導原則(IDPガイドライン)*」を適用すること。

ドイツ :身体的および精神的健康を最大限に守るよう、福島地域に住む人、特に妊婦および子どもの権利を尊重すること。具体的に、放射線の許容線量を1ミリシーベルト/年の限度に戻すこと、避難者と居住者に対する継続的な支援を提供すること。

メキシコ :福島原子力事故の被災者や、核兵器使用の生存者世代のための保健サービスへのアクセスを保証すること。

【参考】勧告の外務省仮訳:UPR第3回日本政府審査・結果文書(暫定版)(仮訳)

(注2)国連人権理事会の勧告を受け入れて原発事故被害者の暮らしをまもってください(2017年12月8日開始)