国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区)は、12月25日に厚生労働省が、ネオニコチノイド系農薬の一種である殺虫剤スルホキサフロル(注1)の食品中の残留基準値を設定(注2)し、農林水産省が同剤を、日本でも使用可能な農薬として新規登録したことを受け、下記の声明を発表しました。
グリーンピース・ジャパン 食と農業担当 関根彩子

「私たち消費者や養蜂家、科学者を含む市民は、1000件以上のパブリックコメント(注3)や約8,000筆の署名(注4)をとおし、厚労省に対して危険な農薬はいらないと何度も訴えてきました。今回の決定は、その市民の度重なる声や科学的意見を無視するもので、容認しがたい結果です。

スルホキサフロルは、ミツバチに毒性が強いことからアメリカでも使用が制限されている農薬であり、発達段階にある子どもにも悪影響を及ぼす可能性があります。厚労省は、無視できないリスクがあるにも関わらず広範囲にわたる残留基準を決め、また、農林水産省は、ミツバチへの毒性に関する情報を充分開示しないまま登録を決めています。政府は市民への説明責任、そして、健康や環境を守る責任を果たしていません。

土壌や水を汚染し、農業従事者や消費者の安全を脅かす化学合成農薬に頼り続ける農業は、いまや時代遅れです。世界では、ネオニコチノイド系農薬の規制が進み、自然と調和し人々の健康を第一においた有機農業や自然農法などの生態系農業が広がっています。政府は、危険な農薬の使用拡大をやめ、生態系の力を生かす農業を支援するべきです」

注1)殺虫剤スルホキサフロルは、ミツバチへの毒性が強いことから製造元のダウ・アグロサイエンス社のあるアメリカでは養蜂家らが裁判を起こし、一時認可が取り消された農薬。なお、物質の構造から別系統の分類する見方もあるが、浸透性、ミツバチへの毒性、虫への作用機序からネオニコチノイド系農薬に含めて考えることが妥当である。